私のマージャン放浪記(その6)
そんな時、たまたま帰る必要が無くなり、アパートで休日を過ごすことになった。
久し振りに朝寝をしていると、玄関のチャイムが鳴る。
私が休日でアパートにいる事を知っている悪友が、朝から麻雀の誘いに来たのだ。
午前中だけは駄目だと断り、自動車を借用して近くの名所巡りに妻を連れ出した。
午後は約束の麻雀になった。
夕方帰宅すると、妻が泣きながら出迎えた。
朝から、麻雀の気持ちばかりで、折角出かけても、気持ちはそっちにばかり行っていたと責める。
「そんな事は無い。今だって早く帰って来たし、第一同じ時間を使っても、負ける奴もいる。
今日も勝ってきたのだ」、と言うと「麻雀の勝ち負けの話ではない」と泣き続ける。
私も少しずつ変わった。変わらざるを得なかった。
家庭の事情を理由に転勤を願い出て、それが認められたのだ。
送別会で雀友に有り難い選別の言葉を貰った。
「あんたは本当に強かったな。実は、俺ともう一人は、積み込みもしていた。それをしないで勝つのだから」
そして、その春から自宅通勤になり、娘も生まれた。
いつの間にか、右手の指に出来た通称、雀ダコもいつの間にか消えた。
(続く)