ーよみのかわー
恋の話・・・・・ですか
あら ずっと独り身のこぉんなお婆ちゃんに酔狂なことを聞かれること
ほほ・・・
でも いいわ
かわいいお嬢ちゃん
決してね 想うお方がいなかったからではないの
自分から好きだの惚れたの お慕い致しておりますーなんてね
言えるタチじゃあ無かっただけ
ええ そう わたしの娘時代なんて幕末のごたごたの少ォし前・・・
落ち着かない空気が流れておりました頃でしたっけね
小さな藩でしたけれど ついつい憧れずにはいられない
そんな素敵なお兄様がたがおりました
いつも三人で並んで歩いておられて その仲良さげな様子が またときめく
幼馴染の女友達とね 誰がいいーなんてきゃあきゃあ
陰では言っておりました
背の高い十郎左様
いつも笑顔の隼人様
無口な伊之助様
ええ わたしが心を寄せていたのは十郎左様
でも届かぬ想いとも分かっておりました
十郎左様の御父上様は代々家老職のーそんなお家柄
お育ちが良いせいか おっとりして それでいて道場では一番腕が立ってー
でも威張らない
この三人は身分を越えての
それが ある時 三人ともが大喧嘩
あろうことか 十郎左様は家まで出ておしまいになられた
でも十郎左様のお家では後継ぎがいないと困る
そこで十郎左様の妹御が 伊之助さんを婿に取られたのです
後で聞いた話では
妹御のお気持ちと伊之助さんの想い想い合うーそれを知った十郎左様が
自分の場所を友に譲った
友の有能さを知る十郎左様が・・・・・
御自分が家老になるよりはと
それともう一つ 藩が割れるような企みある動き
これに気付いた三人の誰もが藩の行く先を思った動きに出た
誰もが三人はばらばらになってしまった
むしろいがみあっているーなんて
そうして
コトは起きたのです
いえ 起きかかっていたと言うべきか
城を襲うなんて物騒な集まりの場へ丸腰で乗り込んで
弁舌と覚悟と度胸でコトを治めたのは 十郎左様でした
十郎左様の後を殺気立って追いかけていったお方は行方不明となり
暫くして十郎左様は姿を消してしまわれました
出家なさったのだと
随分 後から知りました
ええ
昔の女の恋の話なんぞ
こんなものですよ
わたしは ただかなわぬ相手を想い続け
他の男には嫁ぎたくなくて
それで ただ独りでいただけです
それで幸せだったんです
住職として十郎左様が落ち着かれたお寺近くに茶屋を出して
ずうっと姿を見て
撞く鐘の音を聞いて
たまに あの方が寄って お茶など飲んで下さる
もうそれだけで
つまんないものでしょう
お若い方々からしたら
恋の話・・・・・ですか
あら ずっと独り身のこぉんなお婆ちゃんに酔狂なことを聞かれること
ほほ・・・
でも いいわ
かわいいお嬢ちゃん
決してね 想うお方がいなかったからではないの
自分から好きだの惚れたの お慕い致しておりますーなんてね
言えるタチじゃあ無かっただけ
ええ そう わたしの娘時代なんて幕末のごたごたの少ォし前・・・
落ち着かない空気が流れておりました頃でしたっけね
小さな藩でしたけれど ついつい憧れずにはいられない
そんな素敵なお兄様がたがおりました
いつも三人で並んで歩いておられて その仲良さげな様子が またときめく
幼馴染の女友達とね 誰がいいーなんてきゃあきゃあ
陰では言っておりました
背の高い十郎左様
いつも笑顔の隼人様
無口な伊之助様
ええ わたしが心を寄せていたのは十郎左様
でも届かぬ想いとも分かっておりました
十郎左様の御父上様は代々家老職のーそんなお家柄
お育ちが良いせいか おっとりして それでいて道場では一番腕が立ってー
でも威張らない
この三人は身分を越えての
それが ある時 三人ともが大喧嘩
あろうことか 十郎左様は家まで出ておしまいになられた
でも十郎左様のお家では後継ぎがいないと困る
そこで十郎左様の妹御が 伊之助さんを婿に取られたのです
後で聞いた話では
妹御のお気持ちと伊之助さんの想い想い合うーそれを知った十郎左様が
自分の場所を友に譲った
友の有能さを知る十郎左様が・・・・・
御自分が家老になるよりはと
それともう一つ 藩が割れるような企みある動き
これに気付いた三人の誰もが藩の行く先を思った動きに出た
誰もが三人はばらばらになってしまった
むしろいがみあっているーなんて
そうして
コトは起きたのです
いえ 起きかかっていたと言うべきか
城を襲うなんて物騒な集まりの場へ丸腰で乗り込んで
弁舌と覚悟と度胸でコトを治めたのは 十郎左様でした
十郎左様の後を殺気立って追いかけていったお方は行方不明となり
暫くして十郎左様は姿を消してしまわれました
出家なさったのだと
随分 後から知りました
ええ
昔の女の恋の話なんぞ
こんなものですよ
わたしは ただかなわぬ相手を想い続け
他の男には嫁ぎたくなくて
それで ただ独りでいただけです
それで幸せだったんです
住職として十郎左様が落ち着かれたお寺近くに茶屋を出して
ずうっと姿を見て
撞く鐘の音を聞いて
たまに あの方が寄って お茶など飲んで下さる
もうそれだけで
つまんないものでしょう
お若い方々からしたら