戦乱の世 織田 豊臣 徳川の時代を生き抜いて 三代将軍家光とも親交あり 伏見奉行もつとめて功績あった茶人 小堀遠州
茶の道の師の千利休や古田織部は時の権力者の怒りをかい 大往生はかなわなかった
だが遠州は寿命尽きるまで生き抜いた
彼が関わったことある人間の想い出を振り返る形で物語は進む短編連作集
白炭ー千利休
肩衝ー石田三成
投頭巾ー徳川秀忠 徳川家康 古田織部
此世ー後水尾天皇とのかかわり
雨雲ー高齢の母親のまだ若き日 想い残る相手についていこうとしたけれど
夢ー沢庵和尚
泪ー細川忠興
埋火ー藤堂高虎とある女人
桜ちるの文ー伊達政宗
忘筌ーそして遠州の死
人生を切り取るように描かれる場面場面
ただの小説ではない 歴史の
そう教養の本としても
時代劇があまりつくられなくなっている
戦国武将の名前も 幕末の志士 忠臣蔵に出てくる人物の名前も
名だたる侠客の名前も全部テレビドラマや映画で覚えた子供の頃
もうそれらは学校の授業で習う前に頭に入っていた
しかし私の子供達には 私が当たり前の常識として知っていたその知識が無い
一緒にクイズ番組など観ていると
ああこういうことを知らないんだ
そう驚く
歴史の教科書で何々をしたー記号のように覚えるのではなく 生きていた人間として知ってほしい
などと思う
繰り返し読みたい深い物語
解説は 東えりかさん
ところで「桜散るの文」では伊達政宗に関して遣欧使節のことが書かれている
宝塚歌劇団宙組の舞台に「エスパニアのサムライ」があり 登場人物にソテロがいる
この舞台で宝塚歌劇団を卒業された実羚淳さんがソテロ役を演じておられた
宝塚歌劇団の中でも抜群の超絶美スタイル 足の長さと小顔と いわゆる優し気なイケメン
そんな実羚淳さんの最後の役として心に残っている
ソテロはキリスト教が禁制となった日本に戻り 薩摩に潜伏したが捕らえられて寛永元年(1624年)大村で殉教したーと作中にある
ー日本に戻らなければよかったのにーと思ってしまった
島原の乱は扱った作品を花組も舞台にかけているが この「桜散るの文」にも書かれている
ーこのとき幕府軍は手こずらせた一揆勢を皆殺しにした
その報せを聞いて遠州は幕府軍の残虐さに体が震えた
(何ということだ 泰平の茶など夢幻であったのか)
遠州は無念の思いに包まれたー
他にも徳川家光と伊達政宗に通じるー重なる思いとして
母に疎まれて 弟殺しーについて触れられている
聖書からのカインの弟のアベル殺し
これに関連つけての言葉もある
書かれた言葉を読めば なるほどとなる作家の物語の組み立ての妙もたのしめる
実在の人物への深い知識にも 読みながら感心するばかりだ