夢見るババアの雑談室

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「よたばなし」ー34-

2022-02-04 20:17:54 | 自作の小説

不思議な眠りを続けていた深空野真夜(みそらの しんや)

彼を起こしたのは 夢だった

 

顔を盗んでいく魔物

盗まれて倒れ息絶える者達

夢達が真夜の意識を叩く 叩き続ける

悪夢といえるのか 繰り返し 空(から)の真夜を襲う

夢は夢か

それとも現実ーうつつのことか

 

妙に責任感が強い真夜 その心の奥底に意識に誰かが救いを求めているのか

夢が集まってくる

顔盗み・・・・・

にやりと笑うのっぺらぼうの

 

「お前の顔が気に入ったんだよ」

 

「そろそろ この顔にも飽きてきたんだ」

 

ーこれは誰の夢の中なのだろうー

奪われる顔 

消えた顔は腐敗し 身元不明の死体になる

 

記念写真に写る関係ない人間の顔

それは少し前に行方知れずになった人間の顔

心霊写真ではない

けれど いつの間にか集合写真に写り込んでいる関係ない人間の顔

 

「だって姿を残してみたいじゃないか この顔でいる自分を」

 

もしや顔を盗んでいるモノが見る夢か

 

「いい加減 顔を盗んでいることにも飽きた

盗まないでいるのもつまらない」

「飽きない顔が欲しいんだよ」

 

「何 いただく時には この顔欲しいーと思うのだがね」

「もっと他のこともしたくなってね」

「ところが何ができるのかわからない」

 

ー顔泥棒らしきモノ

人でないなら妖怪か

起きれば この夢は遠ざかる

僕に何ができるだろう

夢見ている実体を捕まえられるだろうか

捕まえてどうする

そもそも捕まえられるのか

僕には何かできるのかー

 

夢の中の思考

考えることは意識が戻っているということ

からっぽだった真夜 それに戻ってきた夢

誰かの夢でも

 

夢見ているなら夢鬼は入ることができる

真夜の夢を夢鬼も捕まえた

ーそれで お前はどうしたいー

夢鬼の声が聞こえる

 

顔盗むって随分はためいわくなことだもの できればやめさせたいー

 

顔を盗むモノは 自分の夢の中に自分以外が紛れ込んでいることに気付く

「おやお前は随分いい男じゃないか 当世風のイケメンという奴だな

これまでそういう顔は持ったことがない」

 

真夜に向かって手を伸ばしてくる

 

その手は裂かれた 夢鬼の長い爪から蒼い炎が伸びる

燃えて消える己の手を眺め 顔盗みはふんわり笑った

「ああ そうか 俺は存在し続けることに疲れていたんだ

飽きたんだ」

 

それは満足そうに消えていく

 

真夜へ振り返ると 夢鬼は「おかえり」

そう言った

 

 

 

 

 

 

 

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