「つうさんの家」
父親が商売をしくじり店を手放し 江戸を離れ両親は縁者のいる大坂を頼る
おたえは両親が付き合いある人間ー山の中で一人暮らす老女つうさんに預けられることに
自給自足の慎ましい暮らし
それまで贅沢な暮らしに慣れていたおたえ
暮らすうちにおたえは変わっていく
やがて迎えが来て おたえは大坂へ
縁談も決まる
そして そして つうさんと自分の関係 つうさんの過去を知る
後から知る事情は切ないー
「おいらのツケ」
隣人というだけで三吉を受け入れ育ててくれた夫婦
おかげで大工として働いてこられた
血は繋がらずともずうっとこのままいられると思っていたけれど
変わらないものはない
自分の居場所
安心して居られる場所は 変わる 変わっていく
それでも三吉は 受け入れてくれる場所があっただけ幸せなのだ
「あんがと」
貧乏な尼寺 血の繋がりはないけれど 親と縁の薄い者たちは家族のように寄り添って暮らす
あちこち修理はしたいけれど まったく 全然 お金が足りない
父親が捨てていった娘を預かり世話を焼く尼たち
その娘を引き取ると言う夫婦が現れる
娘を捨てた父親の姉
引き取られた娘は幸せになるだろう
言葉が遅いように思えた娘が尼たちに言う「あんがと」
そして寺にも少しだけ 幸運が・・・・・
「彼岸花」
武家に嫁いだ妹おたか 大八車を引いてきては実家からものを持ち帰る
金をせがむこともある
武士の夫は妻を「どん百姓」と罵り暴力までふるっていたのだ
姉のおえいは家を継ぐ長女ゆえ 想う相手には嫁げなかった
母とも折り合いが良くない
おたかが急死した 病気だったのだ
畦道に咲く彼岸花 その赤の色が おたかの流した血の涙のようにも思えてー
おえいには
「野紺菊」
子供ができず養子の幸吉 亡くなった夫の母おすま 夫の姉夫婦
血のつながりはない人間とおりよは暮らしている
年老いてぼけて 色々なことがわからなくなり 困った行動もとるようになるおすま
夫の姉のおさわとおりよは最後までおすまの世話をする
おすまの死後 少し気の抜けたような 力の入らないような気分になるおさわとおりよ
義理の姉妹は どちらも悪い人間ではなくて
「振り向かないで」子供の頃からの親友おけい夫と男と女の中になってしまったおくら
このままではいけないと いつか思い始め 別れを考える
女が引けば 納得しない男
その話をつけてくれた男
気付かれてないと思ったけれど おけいは気付いてしまっていた
たった一人の友を喪った
おくらは 振り向かず生きていこうと思う
解説は書評家の東えりかさん