ふくい、Tokyo、ヒロシマ、百島物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

南洋編 14 ~ニューブリテン島へ~

2010年07月10日 | 人生航海
その頃には、南太平洋近辺で、敵の潜水艦の出没が頻繁になっていた。

航行中は特に注意するようにと言われていたが、日本の船舶が、度々敵の魚雷を受けるようになっていたのである。

その為、特に見張りを厳重にして航行を続ける事になっていたが、当時は、まだ日本海軍は健在であり、制海権は、いまだに我が方にあるものと信じていた。

そう思い込み、恐れるに足らんと思いながらも、若しドカーンと魚雷が命中したら、一巻の終わりと思うと気が気でなく、怖かったのは事実だった。

そんな事を考えていると、何故か急に故郷の事が目に浮かんでくるのである。

そんな思いの中で、航海は続き、心配なく潜水艦からの攻撃は一度もなかった。

ニューギニア島沖を通過して何日か過ぎて、目的地のニューブリテン島のラバウル港の近くになると、何故か又心配になった。

それは、空襲が毎日のようにある事を聞いて知っていたからかも知れない。

そして、いよいよラバウルの港に入港すると思うと、又新たな気持ちにもなり、何故かそれまでと違った気になった思いがした。

そう思い気分を取り戻して、まもなくラバウルへの入港時の際に見た港の近辺の光景は、素晴らしかった。

今になっても忘れずに、その光景をよく覚えている。

港内は広かったけど、入り口は狭く、その両側には活火山が見えていた。

然も、一方の山では、当時噴煙が立ち昇って、その麓には、露天掘りの温泉があったのだ。

そこを通り抜けて港内に入ると、素晴らしい天然の良港だった。

だが、市街地は、日本軍か敵軍の攻撃によるものか、又は火山噴火で破壊されたものなのかは、分からない侭だったが、激しい傷々しい戦闘のあとを物語っていた。

港内には、大型船舶数隻が、沈んだままに放置されてあり、その上、岸壁も壊れたままであり、船舶の荷役は、困難だった。