ふくい、Tokyo、ヒロシマ、百島物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

南洋編 19 ~大島大尉~

2010年07月20日 | 人生航海
その後、数ヶ月過ぎた頃、宿舎に帰ると、下士官の志度軍曹からの頼み事があった。

私には、済まないがと云い、「部隊本部の大島大尉殿が特別な病に掛かったが、入院する事を嫌い、気の利いた若い軍属で付き添いが出来る者を選ぶように」と指示があり、私がどうかと頼みに来たとの事であった。

病名は、腸チフスである事を打ち明けられて、「入院して隔離されるのは気の毒だから、助けると思って承知してくれ」と頼まれたのである。

内心、病名を聞かされて、少しは嫌な気持ちであったが、軍隊の事なので、命令と思い、しかも、スラバヤ時代からお世話にもなり知った将校でもあり、大島大尉の為に承諾したのである。

承知した上は、気持ち良く引き受けたいものである。

大島大尉は、病人らしくなく、小さな家に隔離されていた。

軍医の指示に従って、炊事用品や日用品等もすべて整えられていた。

大尉ともなれば、待遇も違い、かなりの自由行動も効いていた。

普通は、将校には当番兵が付いたのだが、その時は、伝染病の為に兵隊を看護当番には付けられなかったらしい。

結局は、軍属である私に頼む以外になかったのであろう。