ふくい、Tokyo、ヒロシマ、百島物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

南洋編 20 ~看護当番生活~

2010年07月21日 | 人生航海
翌日には、隔離された一軒家に居る大島大尉を担当軍医と志度軍曹と一緒に訪ねた。

特に、軍医からは、病気の事を詳しく説明されて、看護に関しても色々な指導や指示を受けることになった。

そして、「食事に関しては特に気をつけて、掃除、洗濯等細かな事にも気を配り、手洗いも必ず励行するように」

「看護は、何事も清潔第一に心がけて、下着は勿論、寝具類も出来るだけ洗濯して、外来者との接触は避ける事」

「時々、看護婦も来させるから分からぬ事は聞けばよい」と言われた。

買い物は、いつでも自由に出来て、不便ではなかった。

食事も軍医の指導通りにしつつも、主食は主にお粥、果物類も好んで食べられた。

出来る限り、今欲しいものを訊きながら、炊事をしていた。

それ以後の病状は、それ程に変わらず心配はなかったが、軍医は「このまま菌が無くなれば」と一人でよく呟いていた。

このようにして、南の島のラバウルにおいて、私は、大島大尉と一緒に暮らす事になったのである。

その間に、随分と、大島大尉から、いろんな知識を教えられた。

学校に行くよりも短期間で、色々と学ぶ事が出来て、私の生涯に大きなプラスになったのは言うまでもない。

今振り返ると、私は、とても運勢の強い人間だったのであろう。

はじめのうちは、正直言って、余り・・気が進まなく嫌な思いもした。

慣れるに従い、大島大尉の看護をしていると、この大島大尉の為に出来る限り尽くそうと思うようになっていたのである。

また、皆が、嫌がる看病の役をよく引き受けたものだと・・周りの皆が、私の行為を褒めていたと聞いて、私も悪い気もせず、嬉しかったのである。