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チェ理事に言われるまでもなく、ジニョクは異動の話をスヒョンにするつもりはありませんでした。
「人は良い記憶があれば生きる支えになります。もしも僕たちに厳しい試練が訪れたら、キューバから今までの良い記憶で耐えましょう。」
とだけ言いました。
突然の話に、スヒョンは少々いぶかしく思いましたが、ジニョクが努めていつもと変わらない調子で明るく振舞ったので、特に変には思わなかったようです。
勿論、ジニョクは悩みました。仕事を辞めることも考えたのかもしれません。
でも、それは両親の期待を裏切り失望させ、悲しませる結果となるのは目に見えています。
それに、スヒョンが苦しむと思いました。
束草とソウルの距離を調べ、近い、近い、大丈夫・・・と自分を奮い立たせました。
ジニョクは、任された年末年始のイベントの企画を必死にまとめ上げようとしました。
初めての仕事です。やり遂げたかったのでしょう。
ある日、スヒョン父は妻から重要な用事があると呼び出されました。
会合があると言ったのですが、娘をキム会長に潰されても良いのかと言われると、無視することもできません。仕方なく指定された料亭に出かけて行ったのですが。
待っていたのはウソク母と他党の党首。
党の統合を進めようとウソク母はしきりにスヒョン父をせっついてきたのですが、スヒョン父に主張を曲げて統合は出来ないと断られていましてね。
強引に外堀を埋めてしまおうとしたのでしょう。
でも、スヒョン父も言いなりになる人じゃありません。企業と政治が結びつくのをヨシとしない人なのです。
おそらく、娘のスヒョンに政略結婚させたことの罪悪感を持ち続けているのでしょう。
ウソク母たちを見た途端、部屋にも入らず、踵を返そうとしました。
ねっとりとウソク母が引き留めようとしたのですが、気持ちは変わりませんでした。
そのまま帰ったのです。
ところが、店の前にはマスコミが構えてましたよ。きっとこれもウソク母の仕業でしょう。
マスコミに統合を匂わせて強引に持っていこうとしたんでしょうね。
夜、ジョギングをしていたジニョク。
この異動がセギョングループのキム会長の指図だと言う事は、チェ理事の言葉でわかっています。
そして、慰謝料代わりのホテルがスヒョンのすべてだということも分かっています。
スヒョンはこれまで議員の娘であり、セギョングループの元嫁という存在でしかありませんでした。彼女自身の存在は曖昧だったと言えます。
でも今、ジニョクと知り合ったため、やっとスヒョンが自分自身の存在をはっきりと認識できるようになったと感じているのです。
別れるなんて、出来ません。ジニョクの想いも確信になったのですから。
会いたいと思いました。
でも、携帯にスヒョンの写真は一枚もありません。
スヒョンの家までこのまま走って行こうと思いました。
必死に走って息も絶え絶えという状況になったとき、ようやく到着。
そしたら、そこにスヒョンが偶然現れたのです。コーヒーを買いに出てたみたい。
初めてスヒョンが家に招きました。
スヒョンは、ミジン以外に誰かを家に招待したことがありませんでした。
どうやってもてなせば良いのか、分かりません。
ジニョクは、部屋にキューバで買ってあげたサンダルが飾ってあるのを見て、嬉しくなりました。
自分と同じだと思ったでしょう。
彼も部屋にスヒョンの靴を飾ってますからね。
スヒョンの顔を見て、話をして、ジニョクは冷え切った体が一気に暖かくなりました。
そして二人で初めて写真を撮ったのです。
少しずつ少しずつ二人の距離が縮まっています。
スヒョンの表情が明るく豊かになって来ました。
ウソクが恋人と別れました。
いったいどういう関係だったのでしょう。
相手の女性は覚悟していたように見えます。
最後のプレゼントを渡そうとしたら女性は返しました。
見るたびに今日の日を思い出しそうだから・・・と。一応、別れだからと。
ジニョクは両親に転勤のことを話しました。
父に最初に話し、寂しがる母を一緒に慰めてほしいと頼んだのです。
それにしても、ジニョクはどうしてこんなに良くできた息子なんでしょう。この両親だからかもしれません。
突然、ジニョクの異動辞令が発表されました。
キム部長は勿論、広報部全員が驚きました。スヒョンとのことが原因だと誰もが思いました。
スヒョンが出張に出たその日でしたから。鬼のいぬまに・・・ですか。
今朝聞いたとジニョクは言いましたが、キム部長は信じませんでした。
分かっていたからこそ、イベント準備を必死にしていたのかと分かったからです。
へインは事情をすぐに理解しました。
で、キム部長の携帯を借りて、スヒョンにこの事を報告したのです。
スヒョンはまだ車の中でした。
すぐに引き返しました。
ジニョクの言葉の理由が今、分かりました。
“良い記憶は支えになる”という言葉。そして二人の写真を撮りたがったこと・・・。
スヒョンが出張から引き返して来たのを見たパク代理とウンジンは、それがジニョクのためだと察しました。
凄いと思いました。
で、ジニョクに言ったのです。
ジニョクは驚き、慌てました。
スヒョンの行動が予想できるし、それが彼女の首を絞める事に繋がることも、容易に察せられました。
代表室に向かいました。
「チェ理事を呼んで。早く。」
スヒョンはミジンに命じました。