ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

娘よ(18)

2013-10-18 23:22:28 | 生き方
いつものように夕方6時半過ぎに病室に着くと、そこにはいつものように妻が付き添っていたが、その目は赤くなっていた。
さては―…。
という思いの通りだった。
娘の口には、酸素吸入のマスク。
ベッドの横には、心電図を示すモニター。
娘の両腕には、抑制ベルトが…。
それらを見れば、すぐにわかる。
久々のけいれんが、娘を襲ったのだ―。

30分ほど前に、娘の、今日2度目のけいれんが、妻の目の前で起こったのだと言う。
小さなカップのバニラアイスを食べようとしたが、今日は小さなスプーンを使いにくく感じ、大きなスプーンを使って食べようとしたら、「手が動かない。」「口も変。」と言ったという。
慌てて妻が寝せて、ナースコールを押すと、娘は、白目がむいていた。
看護師の皆さんが、大勢病室に入ってきて、妻は室外に退去するように命じられたのだ、とのこと。

実は、今日は日中、午後2時ごろ、けいれんが起きていたとのこと。
久々に今日の担当となった、ある看護師さんは、娘と午前中に話をしたら、すごく顔つきもいいし、話の内容もしっかりしていたので、「よくなりましたね。」と私たち家族と話をするのを楽しみにしていたのだそうだ。
だが、昼頃から頭がぐらんぐらんする、と主張していたのだが、ついに2時過ぎ、娘は具合が悪くて自らナースコールを押したらしい。
自分で押せたのはよかった。
看護師さんが病室に行ったら、もう娘は反応がなかったらしい。

…私の目の前で、娘は、目を開けた。
動かないで、と言うのだが、上体を起こそうとしたり、手を動かし続けたりしようとしている。
その動きを止めようと、手を握ってあげたら、熱のあることがよくわかった。
娘は、頭が痛い、と額の中心辺りをたたいて言う。
生あくびを繰り返す。
「眠いのなら、ゆっくり目をつぶって眠っていいんだよ。」
「じゃあ、10分間寝る。」
そう言った娘は、それから1時間たっても目を覚まさなかった。

状態がよくなると、こうして頭痛を訴えたりして、また悪くなる。
この繰り返しだ。
なんとかならないものか。

私は、面会時間を過ぎたので、8時15分過ぎに妻よりひと足早く家に帰った。
月が煌々と明るい夜であった。
しかし、外気温は、12℃。
自転車を走らせると冷たい空気が、身を切った。
6月はホタルが、今月は満月に近い月が、私に光を見せてくれた。

私より30分以上遅れて、9時近くになってから、妻が帰ってきた。
帰ろうとして、娘の額に手を当てたら、目を覚ましたのだとか。
また、10年近く前の専門学校時代の寮だと勘違いした言葉を聞かせたようだ。
やはり、意識が乱れているようだ。
トイレの用を足させ、痛み止めの薬を飲ませ、「薬も飲んだし、トイレも大丈夫だから、ゆっくり寝なさい。」と妻が言うと、娘は、
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
の言葉を繰り返したとのことだった。
謝る必要はない。
お前が一番大変で、十分がんばっているのだから。
娘の、親に迷惑をかけているという気持ちが伝わる。
そのけなげさに、胸の奥でじんとするものがある。

せっかくよくなってきていたのにな…。
一番つらいのは、わからなくなってしまうお前だよ。
だけど、また明日から、前を向いて生きていこうな。

コメント (2)
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