伊東だと、富士山が見えるかもしれない。
しばらく生で見ていない富士山を見たいなあ、と思った。
伊豆・伊東の観光ガイドというページを見たら、
「ビギナー必見!絶景を愛でるモデルコース 時間目安1泊2日」
という紹介があった。

「所要時間:約8時間、移動手段:車(タクシーに置き換えも可)・バス」
とそこに書いてあった。
おお、1泊2日ならちょうどいいじゃないか。
しかも、伊東はビギナーなんだし。
これによると、
①なぎさ公園 ②汐吹海岸 ③川奈ステンドグラス美術館 ④城ヶ崎海岸 ⑤ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデン ⑥大室山
と書いてあった。
車というなら、レンタカーを借りて行けばいいのだ。
そのほか詳しい情報を見て1つ1つを確かめた。
大室山では、富士山もよく見えるというから、ここには行きたい。
元関東人だった妻は、伊東なら「ハトヤホテル」と「伊豆シャボテン公園」は、CMでよく聞いていたのだという。
だから、「ハトヤ」はいいとして、「伊豆シャボテン動物公園」に一度は行ってみたいという。
そこで、ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデンではなく、伊豆シャボテン動物公園を訪れる計画にした。
キュンキップもって、いざ出発。
新潟はよく晴れていた。
当初は、新潟駅発9時14分の東京行きに乗ろうと考えていた。
この新幹線だと東京に行くまで大宮市か止まらないから、早くて便利。
だが、行ってみると、座席は中学校の修学旅行客などで立っている客も目についた。
1列車見送りで、9時30分発の新幹線の自由席で座っていくことにした。

東京駅には11時28分着。

そこから、12時発の特急踊り子号に乗って、伊東駅へ。

ところが、東京からくもりにかわり、やがて小田原を過ぎた辺りから雨になってきた。

暖かい伊豆に行って、富士山を見たいという思いだったのに、雨では見えず「不視山」となってしまった。
13時44分、伊東駅着。
やっぱり雨、残念。

折りたたみ傘をさして車を借りるために、予約してあったレンタカー会社の営業所に歩いていった。
契約事項やかける保険を確認して、軽乗用車を借りたが、「名古屋ナンバー」の車だったので、ちょっと驚いた。
静岡ナンバーなら分かるが、名古屋だもの。
新潟人にしてみると、名古屋は遠いイメージだった。
借りた車は、いつも運転している車と同じイメージでブレーキを踏むと、急ブレーキのようになり、同乗の妻と娘を不安にさせた。
最初に、なぎさ公園の予定だったが、雨が強いので通りすぎて、汐吹海岸へと向かった。
駐車場に着いてみると、雨のせいか、誰もいなかった。

ここには、汐吹岩という名所がある。
打ち寄せる波によって、断崖絶壁の洞穴から潮が吹き上がる現象を見ることができる。
コンクリートで固められた狭い急坂を滑らないように降りていく。
その降り口には、ツバキの花がいくつも落ちていた。
降りていくと、ドドーンという音が轟き、さっそく細かく真っ白な潮がまるで岸壁から拭かれたように散るのが見えた。

あれが汐吹岩か、面白い。
見やすいように設置された、海に少し突き出た場所で、次の潮吹きのタイミングを待った。

何度か波は寄せるが潮吹きになるのには、強さとタイミングがあるようだ。

待っている間に寄せてきた波がくだけて、少しこちらの体にかかってしまったりもした。

雨のため傘をさしながら、写真を撮るのがちょっと難しかった。
沖に見えるは、手石島。

雨が強くなってきたので、何枚か写真を撮って、引き上げた。
急坂を今度は登ると、落ちているツバキの花がこちらを向いているようで、きれいに見えた。

海岸沿いの道を、次の目的地、川奈ステンドグラス美術館へ向かう。
海岸沿いというが、実はくねくねと曲がりくねっていて、アップダウンが激しい道。
道幅も広くないので、向こうからやってくる車のために停車して待ってあげることもよくあった。

川奈ステンドグラス美術館は、単純な美術館ではなく、レストラン&カフェや結婚式場も併設されている。

ステンドグラスに関する作品は300を数え、窓だけではなくランプなどもあり、日本では珍しい存在の美術館であった。

そして、30分ごとにアンティークオルゴールの演奏やアンティークパイプオルガンの演奏を、いずれも15分弱で聴かせてくれた。
オルゴールは、独特の無数の穴が開いた大きな金属製のディスクが回転して、クラシックのメロディー音を奏でていた。
音が出る訳や仕組みについても解説してくれ、穏やかな音色に包まれてホッとする時間となった。

オルゴールもパイプオルガンの演奏も、結婚式場となる礼拝場や教会で行われたが、若い女性たちやカップルには、いい感じの場所だった。

パイプオルガンでは、「カノン」や「結婚行進曲」など聞き覚えのある曲を楽しませてもらった。

晴れていたら、館内はもっと輝いてステンドグラスも美しく見えたのだろうけれど、天気が悪いので暗いのが残念だった。
もっとも、それゆえに荘厳さが増しているような感じもあった。
時間は、午後4時に近くなった。
今日はあと1つ、城ヶ崎海岸に行くことにしていた。
雨も降っているし、暗くなってきていたので、先を急いだ。
駐車場に着くと、強い雨だったが、せっかく来たのだからと、名所の門脇吊り橋に行った。

吊り橋に降りる階段は、雨水が流れとなって靴を濡らした。
そこにいた大学生らしい一団にあいさつの言葉をかけつつ、つり橋を渡った。

たしかに、この吊り橋から下の海までは高さがあり、落ちたら助からないだろうなと思った。
橋の途中からは、柱状節理の断崖絶壁を望むことができた。

強い波が打ち寄せていたのは迫力だった。
これは、2日目に行く予定の大室山の噴火で流出した溶岩が海中に流れ込み、急激に冷やされてできたものなのだそうだ。
それを、打ち寄せる波が削って、きれいな模様になっているのだという。
じっと見ていたいが、問題は強い雨。
早々に対岸に渡って行くと、そこには門脇崎灯台が立っていたが、見上げると雨が当たる。

初日は、ここまで。
宿泊するホテルに向かうことにしよう。
レンタカーの車内に乗り込むと、3人の足元はびしょびしょ。
雨の降り方も強いので、アップダウンの激しい半島の道路では、時折川の流れに逆らって走っているように見えるほど水が出ていた。
旅に出て、なんでこんなにひどい雨に当たるのか。
日頃の行いが悪いせいか、私と娘の「雨男・雨女」の面目躍如か…。
悪天候下のレンタカー運転、無事に宿に着いた時には、ほっとしたのだった。