登山口に入ると、さっそく足元には、この前書いたばかりのコナスビが結構たくさん並んでいた。
ほかにも、マムシグサやフタリシズカなどが姿を見せてくれた。
前方に八木神社が見えてきたが、ここまでは実はほとんど登っていない。
ほぼ平らな道であった。
ここから、急に上りになった。
外部からは断崖絶壁のように見える八木ヶ鼻。
そこの頂上に行くためには、くねくねと曲がりくねった道だった。
時期的に、エゴノキの花が散って落ちているのをたくさん見た。
つづら折りの坂道に、コシノカンアオイやアマドコロなどを見つけながら登った。
こう書くと、いかにもスイスイと登っていったようだが、そうではなかった。
何せ夫婦で山登りするのは、去年5月に簡単に登った大峰山以来。
それ以前だと、4年前の青田南葉山リベンジ登山以来であった。
それゆえ、息切れするのも早かった。
特に妻は、娘と毎日、30回のスクワットは欠かさないとはいえ、私と違って走る習慣はないから、足腰が鍛えられていない。
休み休み登ったが、40分かかってようやく分岐点に到達した。
その所で妻は、少し休みがほしいと言って尻をついた。
数分間休んで、八木ヶ鼻の頂上目指して歩き始めた私たちに、最初のごほうびが待っていた。
頂上の手前に、一輪、ヒメサユリが咲いていたのだ。
反対側を向いていたけど、じっくり見たいので、手に取った。
会いたいと思っていたヒメサユリに、会えた喜びが広がった。
そして、八木ヶ鼻の頂上に到達。
出発から、約50分かかっていた。
守門岳、粟ヶ岳など近くのさらに高い山々が、とても近くに見えた。
少しだけ妻も回復したようで、再び分岐点から、今度は本来の目的とする袴腰山を目指して進み始めた。
しかし、また上りが続くようになると、再び妻は腰を下ろした。
水を飲んで、しばらく休んで立ち上がると、進むことを選んで歩き始めた。
この辺りには、ヤマツツジの赤い花やウラジロヨウラクの花などがきれいに咲いていた。
そして、2つ目のヒメサユリの花が、「がんばれ」と応援してくれているように咲いていた。
12時、「追分の松」なる地点到達。
「追分」(おいわけ)は、道が二つに分かれる場所をさす言葉である。
ここから袴腰山は、前方上方に見えるのに、道はなんと急激な下り。
この後、何度も急激な上り下りを行くことになる。
そういう登山道なのだ。
10分後、次のポイント、「高城の見える丘」に着く。
ただ、どっちに高城が見えるのか、分からない。
眼下の風景は、水が張られて田植えが終わった水田が広がっていた。
さらに進むと、ヒメサユリが初めて4本一緒に咲いている場所があったり、ピンクではなく白い花びらのものがあったりした。
こうしたヒメサユリに出会うたびに、がんばって進んでいることを励ましてもらっている感じがした。
こんなロープが結ばれている上り道に、これから先いくつも出合うことにもなった。
12時35分、「三角山」地点に。
腹も減ったので、この先の日陰で昼食。
メニューは、道の駅「漢学の里 しただ」で買ってきたあんぱん、いちごジャムパン、中にあんの入った「おこわだんご」。
疲れている時に、甘いものはうまかった。
元気を出して、袴腰山を目指し、再出発。
「ぶなの杜」「馬の背」を経て「見返りの丘」へ。
ここは、粟が岳方面からの登山道「ぶなのみち」の合流点になっている。
見返ると、確かにそれなりに歩いてきたな、と思う。
その先は、ロープが取り付けられている上りが多かった。
その上りの中にあっても、時々微笑むようなヒメサユリやヤマツツジに会うと勇気づけられる気がする。
そのせいか、妻も当初のようにへたり込んで坐ることはなく、休み休みではあったが、確実に前に進むことができた。
そして、真っ白なツクバネウツギを見かける。
普通花びらの中には、茶色い模様があるものだが、これは模様がなく白いだけだ。
急な上りを一歩一歩進み、待望の頂上に到達したのは、13時25分。
登山口から2時間半近くを要したが、袴腰山の山頂にたどり着いたのだった。