急な体調不良にたたずむ私の目の前を、私と同じ「アイシテルニイガタ」と書かれたアルビユニの若い男性が抜いて行った。
いつもなら、「アルビ、ガンバ!」と声をかけるのだが、今はその余裕がなかった。

幸い、20秒ほど、大きく息を吸ったり吐いたりをしていたら、少し楽になってきた。
再びジョギングを始めると、なんとか走ることができるようになってきた。
無理せずこのまま行こう。

また少し雨も感じていたが、農家の風情が多い家やビニルハウスの前に立って応援する地元の方々がいた。
ありがたいなあ、と思う。
こんな悪天候の日に、手を振ったり声をかけたりして、ランナーを応援してくれている。
こんなに遅いランナーに対しても。
うれしいなあ、と思いながら走っていった。
立ち止まったせいもあって、ラップタイムは、⑫6分24秒と、30秒以上落ちた。
12㎞地点を過ぎて、曽野木中学校近くの県道2号線(新潟―寺泊線)に出た。
ここで左折して、天野の町並みを信濃川大橋手前まで行って折り返す。
その距離は、往復約3kmだが、この区間だけが完全に両側に町並みが続く地域になる。

往復なので、折り返し地点を回ってきたランナーたちとすれ違いながら走ることになる。
来た!いた!!
12.5km近くで、向こう側から走ってきたのは、朝久々に会ったわが息子。
今は、向こうも所帯を構えているので、日頃なかなか会わない。
こうして、すれ違いざまにハイタッチができるのはうれしい。
そして、それからあまり時間がたたないうちに、正面から走って来たアルビユニの男性に、「アルビ、ガンバです!」と声をかけた。
「アルビ、ガ…」まで声を出している途中で、その方が、ブログ仲間の通称八百政さんだと気づいた。
互いに笑顔になって、「がんばりましょう」とハイタッチ。
同じ60代後半になっていながら、彼は冬の間トレッドミルで鍛えているから、まったく走らない「なんちゃってランナー」の私とは違う。
私よりも2km先を行っているということが分かった。
まあ、体調の問題があるから、私は私、無理せずゴールを目指すのだ。


13㎞を過ぎて500mほど行くと、信濃川大橋にかかる上り坂なのだが、その途中に折り返し点が設定されてあった。

今年も銘酒「越乃寒梅」をかたどったそのポイントを回り、再び天野の町並みを行く。

雨風の中、何人かに「アルビ、ガンバです」の声をかける機会を得ながら、行った。
14.8㎞には、第3給水所があったが、その手前で、またちょっと気持ち悪くなって歩いた。

給水所過ぎまで20mほどゆっくり歩いていくと、そのすぐ先にイチゴ「越後姫」をランナーに1個ずつ手渡ししてくれるおばちゃんたちがいた。

ランナーが取ったかどうかチェックしながら、1ランナーに1個ずつ配っていた。
8年前にいわきサンシャインマラソンに出たときも大きなイチゴが提供されていたけど、あの時はつまみ放題だったなあ…と思い出しつつ、貴重な1個を一口でいただいた。
曽野木中学校の前で15kmポイント。
この街並みの中は、⑬6分07秒 ⑭6分10秒 ⑮6分53秒
追い風と向かい風・体調不良がよく分かるラップタイムだった。
さて、ここから先は、しばらく周囲は田んぼばかりで、家がない。
そのためここの強風がひどかった。
斜め前方からの強い風がずうっと吹いていた。
結構たくさんのランナーがこの強風にギブアップして歩いていた。
体調がおかしくなったとはいえ、風に負けるのは嫌だった。
雨ニモマケズ、風ニモマケズだ。
ちょうど目の前に体の余り大きくない男性ランナーと小さい女性ランナーが連なるように走っていたので、少しでも風を防げるようにと思いながら彼らのほぼ横から斜め後ろを走っていった。
およそ1500mくらいになるだろう、この厳しい風の条件下で走ったのだった。
この二人には、雨風に負けないランナー仲間、というような仲間意識が芽生えた私だった。

⑯6分36秒 やはりタイムは落ちていた。
⑰6分19秒
直角に道を折れ、スタジアム方面に向かって2km近くの距離を走る道になった。
待ってました。
この向きの風は、もろに追い風。
10km地点前後でマスターした「追い風走り」を再び発揮するときがきた。
行くぞ。
体を起こして、腕をあまり振らずに背中で風を受け止め、その風の強さを生かして足を動かす。
さっきまで2度息苦しくなったが、今は走れる。
レースの後半となり、疲れているランナー、歩いているランナーが多かったが、その脇をスイスイと追い抜いていった。

最高に気持ちよい直線路だった。
⑱5分43秒 と、このレース後半で、本日最速のラップタイムを刻むことができたのだった。

その直線路を終えて、スタジアムに近づき、あと2km強まで来たというのに、ここでまた苦しくなってしまった。
あと少しじゃないか、と思うのだが、難儀な感覚がなかなか抜けない。
ラストスパートどころか、完全にブレーキがかかった感じ。
ゆっくり走ってもきつくて、残り1km地点では止まって息を吸う、吐くを繰り返した。

やっとゆっくり走れるようになったが、かなりきつくて、多くのランナーが1㎞を切ってラストスパートにかかっていたのに、私はスタジアムに入る直前までスロージョギングをしたりゆっくり歩いたりするしかなかった。
思うように走れず、スタジアム前の広場から、Nスタンドの外を回って入場口につながる何百メートルかが、非常に長く感じられた。
ようやくスタジアムに帰ってきた。

残り100mをゆっくり走っている途中、スタジアム内のビジョンでは表彰式が始まった。
自分のゴール姿は見られなくなってしまった。残念。

でも、とにかくゴール。

フィニッシュして、タオルをかけてもらった。

歩いていたら、後ろから年輩の女性ランナーから、急に声をかけられた。
「風が強かったので、あなたの後ろについて走りました。ありがとうございました。」
そうか。この大きい体が、他のランナーの役に立ったか。
「わざわざ、ありがとうございます。」
そう礼を言って聞いてみると、五泉から来たのだそうだ。
「ごせん紅葉マラソン、いい大会ですよね、仮装もあって。」
「ええ。私も仮装して走るんですよ。」だって。
さすが、地元を盛り上げているのですね。
しばらく行くと、見覚えのある男女のランナーが歩いていた。
あの、15kmから2km近く強風を受けたときに、その横や背後を走らせてもらった2人だった。
今度は、私がお礼を言う番。
「風を防ぐのに、後ろにつかせてもらい助かりました。ありがとうございました。」
ランナー同士でこういう会話ができるのはいいなあと思う。
言ったり言われたりで、共存共栄、走る仲間の輪が広がる感じがしたよ。
去年は、このあと着替えずに濡れた体で振る舞い餅の列などに並んだ。

マスクもせず寒さに震えていたせいもあって、あとで熱が出て新型ウイルス感染症を初発症し、苦しむことになったのだった。
その反省から、今回は預けていた荷物を受け取ったら、すぐに着替えて、その後から餅の列に並んだのだった。

やがて、先に完走していた息子と合流。
朝来たときには倒れていた大きな大会パネルの前で、記念に写真を撮ってもらった。

家で、ランネットから自分の記録を出してみたら、去年より4分以上よい記録だった。

特に、5kmごとのラップタイムが終始安定していていいと思った。
5kmまで:32分04秒 10kmまで:31分02秒 15㎞まで:31分32秒 20kmまで31分43秒
それだけに、最後の1kmに体調が崩れ、8分近くかかってしまい、ちゃんと走れなかったのが残念でもあった。
今後の大会参加にもちょっと影を落とすような、レース中の体調不良の憂き目にもあった。
でも、レース自体は楽しかった!
追い風に乗ったり、仲間意識を感じたり。
悪天候に負けず、レースを楽しんで完走できたのだから、今回はよしとしよう。
本大会に参加した皆さん、大会関係者の皆さん、お疲れさまでした。
そして、今年は雨風強いし寒いから少ないだろうと思っていたのに、農村部のおじいちゃん、おばあちゃんはじめいろいろな人が応援してくれていたことにも感謝します。
声援を送ってくれるのは、とても勇気づけられました。
ありがとうございました‼