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サイケおやじの生活と音楽

ある天才の死

2006-06-07 18:36:46 | Weblog

ビリー・プレストンの訃報が……!

享年59歳! 本当に驚愕致しました……。

それにしても日本の報道はなんだっ! 「5人目のビートルズ」だって……。

あぁ、ビートルズは確かに人類史上の天才音楽家ですから、比較対照の常ではありますが……。

ビリー・プレストンは真の実力者、天才でした。十代の頃から頭角を現し、レイ・チャールズのバックバンドで脚光を浴び、オルガンを主体にジャズやR&Bのリーダー盤を出し、アレサ・フランクリン、キング・カーチス等々、ソウル系の大物と共演しつつ、ビートルズやストーンズから請われて録音や巡業のサポートを務めていたことは、有名です。

そしてビリー・プレストンが本当に凄いのは、サポートでありながら、何時しか主役に大きな影響を与えて、その音楽性までも変えてしまうことです。それも嫌味なく!

例えばストーンズは1970年代にスワンプロック~ニューソウル~ファンキー・ロックと音楽性の幅を広げ、ついにストーンズ流儀のロックを完成させたわけですが、その立役者こそ、ビリー・プレストンだったと、私は思います。

当時製作されたアルバムは今や名盤の中の大名盤ばかりですが、そのウネルようなロックの醍醐味を支えていたのは、ビリー・プレストンのキーボードと音楽的才能でした。恐らくストーンズの面々はスタジオやライブの場で様々なアイディアや助言を貰っていたと思われます。

例えば巡業では1973年秋の欧州ツアーから1977年のモカンボ・セッションまで、キーボード担当としてストーンズを支え続け、それはこの間に録音された夥しいプライベートテープから作られた海賊盤で聴くことが出来ます。

そこにはピアノやオルガンで暴れるビリー・プレストン、ストーンズをバックに歌うビリー・プレストンという主役を与えられている場面すらあるのでした。

で、公式盤ならば、やはりこれしかないでしょう――

Love You Live / The Rolling Stones

1975~1977年までのライブから選りすぐった名演で構成されたライブ盤ですが、幾分荒っぽい方向に流れていくストーンズを根底で支え、尚且つ、目だってしまったビリー・プレストンが、ここに居ます。

例えば「ホンキー・トンク・ウィメン」でのファンキー生ピアノ、「ひとりぼっちの世界」におけるゴスペル・ロックなピアノとボーカル、「ホット・スタップ」では真に楽しいファンキーなピアノとコーラス♪

また「スター・スター」での正統派R&Rビアノや「ダイスをころがせ」でのウキウキするようなオルガン! 「無常の世界」では崇高な精神世界を思わせるシンセ&オルガンの響きに加えて、これぞ魂のゴスペル・ピアノを全開させています♪

もちろんそれらの曲では、ストーンズの面々が主役を張っているのは間違いの無い事実ですが、全てはビリー・プレストンの手の中で泳いでいる一瞬に繋がる場面が存在しています。

そしてアルバムのハイライトであるモカンボ・セッションのスモールギグでは、ミック・ジャガーのシャウトに鋭い合の手を入れる「マニッシュ・ボーイ」やラテンの楽しさを倍加させるウキウキ・ピアノを聞かせる「クラッキン・アップ」が最高です。

さらに「リトル・レッド・ルースター」では演奏の土台を支える蠢きのオルガン!

こうしてクライマックスのヒット曲大会に突入するストーンズは、心置きなくロックンロールしていくのですが、ここでも王道のR&Rピアノが暴れた「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」や「ブラウン・シュガー」でのビリー・プレストンは、楽しさのテンコ盛りです♪

ということで、本当はビリー・プレストンのリーダー盤をご紹介するのが良かったのですが、湿っぽくなりそうですし、間違いなく音楽史上に名を刻する天才でありながら、脇役としても超一流だった故人の冥福を祈るには、こういうお祭騒ぎ盤が聴きたくなりました。

合掌……。

ビリー・プレストンは何人目のストーンズだったんでしょう……。

コメント (3)
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