OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

楽しくて何故悪い?

2006-06-27 18:20:15 | Weblog

本日はオークション関連で運良くというか、偶然に欲しかったブツが、愕くほど安く入手出来ました。

正直、こういう日は、申し訳なくも浮かれてしまいますね♪

そこで楽しさ満載のアルバムを――

The "In" Crowd / The Ramsey Lewis Trio (Argo)

ジャズに興味を持ったら行くところがジャズ喫茶です。なにしろどの店にも膨大なコレクションがありますから、知らない盤を聴きつつ、気になるレコードをリクエストするという楽しみがあるのです。

しかし、ジャズ喫茶というは案外名盤が鳴らないのですね。そして名盤とか人気盤をリクエストするのが、妙に気が引けるというか、「そんなの、今頃、聴いてんの」という暗黙の非難が店内に漂うのです。

このアルバムはラムゼイ・ルイスの出世作で、非常に楽しく充実した内容なのですが、ジャズ喫茶全盛時には、それほど鳴らしている店があったは思えません。

実際、私自身、有名な人気盤だとは知っていても、タイトル曲以外は全く聴いたことがありませんでした。

しかし、偶然というか、たまたまジャズ喫茶でA面を聴いて驚愕歓喜しましたですねっ♪ この楽しさ、この凄さ、このウキウキ・フィーリング♪ もちろん店を出た私はレコード屋へ一直線でした。

録音は1965年5月13~15日、ボストンの「ボヘミア・キャバーンズ」という店でのライブセッションで、メンバーはラムゼイ・ルイス(p)、エルディ・ヤング(b,cello)、レッド・ホルト(ds) という黄金のトリオです――

A-1 The "In" Crowd
 オリジナルは黒人R&B歌手のドビー・グレイが1965年初頭に放ったヒット曲ですが、今では、このラムゼイ・ルイスのバージョンが有名になっていますね♪
 ところがトリオでの演奏は、このセッション直前にジュークボックスから流れていたのを聴いて急遽、演目に加えた間に合わせという伝説があるようです。
 しかし、それにしてもこの演奏は最高です♪ 曲終わりのブレイクからベースがキメのフレーズをやってくれるあたりで、もう聴き手は盛り上がりきってしまいますし、ラムゼイ・ルイスの深いジャズ魂と黒~い感覚は、これ以上無いほどです。
 リズムは変形ジャズロックですが、ビートを増幅させる手拍子がキモになっていて、これはライブの観客によるものでしょうか? 分かっているノリとしか言えません♪
 そしてラムゼイ・ルイス以下、トリオのメンバーはイナセなグループを聴かせてくれるのですが、この大ヒットを一番不思議に思ったのは主役の3人で、今までも同じことをやってきたのに、何故、この曲だけが大ヒットしたのか? と理解不能だったようです。
 そう、確かにラムゼイ・ルイス・トリオは1956年の結成以来、当に苦節10年、この間に何枚もレコードを出していたのです。もちろんその中には、かなりコマーシャルな作品もあったのですから、完全に???だったんでしょう。
 ただしファンにとっては、そんなことはお構いなし! これ以降、続々と出されるラムゼイ・ルイスの作品はヒットしていくのでした。

A-2 Since I Fell For You
 前曲で盛り上がった観客の拍手の中を、一転してスローな展開でR&Bの名曲が演奏されます。
 オリジナルはバディ・ジョンソンの自作自演ですが、ダイナ・ワシントンの熱唱がジャズファンにはお馴染みでしょう。個人的にも大好きな曲ですので、ラムゼイ・ルイスの解釈が気になりますが、これが最高に素晴らしく、原曲に含まれる泣きが見事に表現されています。
 あぁ、この雰囲気、このグルーヴ! 完全に虜です♪

A-3 Tennessee Waltz
 これもアルバム中では人気のトラックで、お馴染みのメロディがエルディ・ヤングのセロを主役にして、楽しく華麗に演奏されます。
 しかもライブの場を意識してか、エルディ・ヤングが初っ端ではフラメンコ調のお遊びを入れ、観客を和ませてから、いきなり楽しいテーマを奏でるのです。
 もちろんラムゼイ・ルイスとレッド・ホルトも、それは充分に分かっているサポートですから、名演になるのもムベなるかな! 一度聴いたら忘れられない快楽がまっています。さあ、皆様、ご一緒に歌いましょう♪

A-4 You Been Talkin' `Bout Me Baby
 こうして盛り上がったA面の締めくくりが、またまた黒くて楽しい演奏です。リズムはドドンパ寸前ですが、トリオとしてのビートが真っ黒ですから、その場はゴスペル色に染まっていくのでした。
 ちなみにラムゼイ・ルイスは難しいフレーズこそ弾きませんが、そのテクニックは物凄く、歯切れの良いタッチと破壊的なブロックコードは、聴くほどに怖ろしくなります。
 とはいえ、それをあまり気づかせないところが、ラムゼイ・ルイスの凄さ・上手さかもしれません。

B-1 Love Theme From Spartacus
 ビル・エバンスも十八番にしている美メロの名曲を、ここでは定番のスロー物として聴かせてくれます。
 あぁ、この素直なテーマ解釈♪ これがラムゼイ・ルイス・トリオの魅力です。したがってアドリブパートでは、テーマよりも素敵なメロディを出さないと聴き手が納得しないのですが、それは全く心配ご無用!
 トリオは一丸となってゴスペル大会に突入するという、超裏ワザで歌心を発散させるのでした。う~ん、あまりにも素晴らしい演奏です。ただし、途中で一箇所、テープ編集の痕跡が……。 

B-2 Felicidade
 ボサノバの名曲を怖ろしい解釈で聴かせてくれます。
 テーマ部分はもちろん、アップテンポのボサビートになっており、レッド・ホルトのスカッとしたドラムスが爽快ですが、アドリブパートでは徐々にロックビートに変奏されていき、なんと途中では「山寺の~、おしょうさんが~」という、例の歌のリフまで飛び出す始末です。
 そして演奏は強烈なゴスペル的な盛り上がりで、観客は思わず叫び声! さらに一転、静謐なボサノバに戻って、再びゴスペルに帰るという、個人的には大好きな演奏になっています。

B-3 Come Sunday
 最後を飾る大名曲を、ラムゼイ・ルイスはしなやかな歌心で綴っていきます。もちろん超絶技巧派の一面を垣間見せつつ聴き手の気持ちを揺さぶり、思わせぶりに煌いているのです。
 まあ、ちょっと嫌味な演奏に近い気もしますが、大盛り上がりが続いたアルバムの最後には相応しいかもしれません。

ということで、これは快楽的な作品ですから、コルトレーンという神様を奉った当時の暗いジャズ喫茶では敬遠気味というのが、真相でしょう。

でも、楽しいよなぁ、これはっ♪

そしてラムゼイ・ルイス・トリオは、同様に楽しいアルバムを何枚も作っていきますが、後にエルディ・ヤングとレッド・ホルトが独立して新グループを結成したあたりから、ラムゼイ・ルイスはファンキー色を強めた混濁期に入ります。もちろん残念ながら、そのあたりで4ビート至上主義者、特に日本のファンからは愛想をつかされたようです。

それでもフュージョンプームの頃には、リアルタイムの新作アルバムで人気が復活するわけですが、どうなんでしょう? このアルバムが実際にどの程度、日本で認識されているのかは不明です。

結局は評論家の先生方が持ち上げてくれなければ名盤にはなれないという、日本の事情を良く現した作品なんでしょうねぇ……。

私はジャズ者には必要不可欠のアルバムだと思うのですが……。

コメント (4)
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