さてさて、日本中が早起きした今日、淡い夢を見せてくれたブラジルに最敬礼です。中田ヒデの涙も美しく、宮本の何も出来ない悲壮な表情、川口の鬼神のセーブも届かず……。
全く日本人向けの悲壮な一幕だったのでしょうか……。
これからの若手育成にブラスになるのでしょうか……。
ということで、本日は若手の修練を記録したアルバムを――
■The Young Lions (Vee Jay)
ジャズは皆でワイワイガヤガヤと作り上げることが出来る音楽です。その象徴が、所謂ジャム・セッションという寄り合いの腕比べ♪ これは演目のテーマは素材に過ぎず、参加メンバーのアドリブの競い合いがメインです。
したがって、その場には気心の知れた者同士の連帯、あるいは全く知らない者が入っていることの緊張感、その両方の鬩ぎ合いが、聴いているファンにとっては魅力になります。
さて、このアルバムは、当時のジャズ界で売出中の若手を集めたジャム・セッション盤で、録音は1960年4月25日のニューヨーク、メンバーはジャズ・メッセンジャーズのレギュラーからリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ティモンズ(p) の3人、キャノンボール・アダレイのバンドからルイ・ヘイズ(ds) 、ベニー・ゴルソンのジャズテットからアルバート・ヒース(ds) 、そして製作レコード会社の地元シカゴではスタアのフランク・ストロジャー(as) とボブ・クランショウ(b) が集められています。
ちなみに人選はプロデューサーのシド・マッコイによるものですが、当時の人気バンドから有望株を選りすぐった時点で、このセッションは興味深いものになっています。それにしてもドラマーが2人いるのは何故? 一応、演奏曲毎にどちらが叩いているか、推察しておきますが――
A-1 Seeds Of sin
ウェイン・ショーターが作った迫力のファンキー・モード曲です。3管によるグイノリのテーマ吹奏から、いきなりウェイン・ショーターが掟破りフレーズを連発すれば、リー・モーガンは溌剌と対抗して、このあたりは、ほとんどジャズ・メッセンジャーズそのものです♪
そして続くフランク・ストロジャーは泣きのアルトと見せかけて、かなり無機質なアドリブに終始しています。ちなみにこの人は白人で、ウネリよりもツッコミで勝負するタイプです。
演奏はこの後、ボビー・ティモンズが押さえたファンキー味を披露するのですが、気になるドラマーは、オカズの力強さからルイ・ヘイズでは?
A-2 Scourn'
これまたウェイン・ショーター作曲、スピード感に満ちたモード演奏になっています。
アドリブ先発はチャーリー・パーカー(as) 直系のフレーズを出しまくるフランク・ストロジャーですが、続くリー・モーガンの輝きには敵いません。
そこでウェイン・ショーターは、十八番の変態ノリというか、ウラから責めるようなギクシャクしたフレーズを連発し、全く新鮮な展開を聴かせてくれるのです。
しかし最後はボビー・ティモンズの保守本流のピアノという、安心感も用意されているのでした。
ちなみにここでのドラマーも、烈しいオカズの入れ方から、ルイ・ヘイズでしょう。
A-3 Fat Lady
ボビー・ティモンズが作った楽しくも新鮮なハードバップ曲です。
とは言っても、アドリブ先発のウェイン・ショーターは全く唯我独尊のフレーズを吹きまくって場を混乱させるのです。しかし続くリー・モーガンがファンキーなキメを連発し、演奏を軌道修正♪ ですからフランク・ストロジャーも安心して冒険する展開を聴かせてくれます。
さらにボビー・ティモンズのピアノからドラムスとホーン陣の対決が興奮度、大! ここでのドラムスは繊細なシンバルからアルバート・ヒースと断じますが……。
B-1 Peaches And Cream
ドラムスとベースの安定したノリでペースが設定され、ミョウチキリンなテーマが始まります。もちろん作曲はウェイン・ショーターで、本当に不思議な高揚感に満ちた、魅惑のテーマと言っていいでしょう。
もちろんアドリブ先発のウェイン・ショーターのフレーズは一筋縄ではありません。聴いているうちに異次元に飛ばされそうなフォースがあるのです。
それはリー・モーガンにも感染し、何時もと違う無機質なノリは逆に新鮮♪ ただしフランク・ストロジャーは迷い道です……。
そして最後はドラムスの一人舞台が用意されていますが、誰でしょう? おそらくアルバート・ヒースか? 小型のフィリー・ジョーという雰囲気です。
こうして吹奏されるラストテーマの迫力は、全く意想外の迫力がありますよ♪
B-2 Blues
オーラスはリー・モーガン作曲のブルースで大ファンキー大会♪
いきなりボビー・ティモンズがゴスペル風味を撒き散らせば、続けて吹奏されるテーマが真っ黒という仕掛けです。
そしてまたまたボビー・ティモンズが十八番の展開を披露、そのバックで躍動するボブ・クランショウのベースもツボをしっかりと押えています。
さらに続くフランク・ストロジャーも必死で黒さに挑戦しますが、やや苦戦か……。しかし次に登場するリー・モーガンのミュートで全ては帳消しです。あぁ、なんて凄いんでしょう、このツッコミとタメ♪ マイルス・デイビス(tp) とは完全に異なるミュート・トランペットの世界が現出しています。
するとウェイン・ショーターは全く意味不明のフレーズを入れ込んで、ミステリアスに対抗していきます。このあたりが当時としては新しかったんでしょうねぇ、否、現代でも新鮮です! アドリブのフレーズが不思議系でありながら、琴線にグサリとくる美メロというか印象的なメロディが出るんですねぇ♪
そしてリズム隊の素晴らしさにもワクワクさせられます。特にボブ・クランショウは本領発揮のネバリ節♪ ちなみにドラムスは、ここもアルバート・ヒースでしょう。
ということで、これは楽しいも充実したジャズが聴けるアルバムです。ハードバップに一途な人には大団円の「Blues」が絶対のオススメですし、モード中毒者にはウェイン・ショーター作曲の妙味が楽しめます。
全体としての纏まりも良く、それでいて奔放な雰囲気も横溢しているのは、若き血潮の滾りとでも申しましょうか、なかなかツウ好みの作品かもしれません。そのあたりを鑑みて、ジャズ喫茶でリクエストするには最適だと思います♪