OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

混濁した爽快さ!

2006-06-25 18:32:15 | Weblog

やれやれ、明日からまた仕事か……。なんか煮え切らない休日でした。

そこで爽快さを求めて、この1枚を――

Harlem Blues / Phineas Newborn Jr. (Contemporary)

ジャズ界には天才、神様と呼ばれる人が案外大勢いますが、「真の」というミュージシャンは少ないはずです。

その隔たりは、やはり紙一重! この部分が有るか、否かだと思います

本日の主役、フィニアス・ニューボーンという黒人ピアニストは、当にそういう人で、まず超絶テクニックの持ち主であり、強靭なリズム感と破天荒なアドリブ展開には、異次元の恐ろしさが秘められています。

ですから共演者は、よほど気心が知れているか、あるいは同等の実力者でなければ務まりませんし、フィニアス・ニューボーンその人に協調していこうという姿勢があったのか? という疑問がいつも付きまとう演奏ばかりが名演になっています。

もちろん、時期によっては精神に異常! その事実は言わずもがなです。

このアルバムはそんな天才の極端な部分がたっぷりと味わえる作品で、録音は1969年2月12&13日、メンバーはフィニアス・ニューボーン(p)、レイ・ブラウン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という超強力トリオになっています。

そして実を言うと、このセッションからはアルバム1枚だけがリアルタイムで発売されていたのですが、この作品は1975年に日本先行で突如発売された、所謂「おくら盤」です。

しかし内容は全く強烈で、自我が強いメンバー故に破綻するギリギリの鬩ぎ合い、ドッカ~ンと炸裂して急速に消滅していく異次元エネルギーに満ちた演奏が、ぎっしり収められています――

A-1 Harlem Blues
 ファニアス・ニューボーンのオリジナルということになっていますが、元ネタは民間伝承のゴスペル曲という楽しい演奏です。
 しかしファニアス・ニューボーンのピアノは両手ユニゾン弾き、炸裂ブロックコード、グイグイ突進する豪快なピアノ・タッチが怖ろしいばかり!
 ですからエルビン・ジョーンズはビシビシ対抗していきますが、レイ・ブラウンは演奏が破綻しないように手綱を引き締めているようです。強烈!

A-2 Sweet And Lovely
 有名スタンダードをブルース・フィーリングたっぶりに料理していくファニアス・ニューボーンが、あまりにも鮮やかです。
 サポートの2人もネバリの対応、特にレイ・ブラウンが大技・小技で流石です。
 そして、こういう雰囲気だと、どうしてもオスカー・ピータソンと比較されるわけですが、ファニアス・ニューボーンにはトリオとしての纏まりをつける意志が稀薄ではないでしょうか? あくまでも唯我独尊、そこにエルビン・ジョーンズが鋭いツッコミを入れることで、演奏が固まっていくようです。
 う~ん、それにしてもファニアス・ニューボーンの強烈なタッチには、何度聴いても圧倒されます。

A-3 Little Girl Blue
 これも有名スタンダードを気軽にスイングさせようとした意図が見え隠れしていますが、このメンバーですから、ただでは済みません。
 まずエルビン・ジョーンズが少しでもスキが出来ると暴れますし、レイ・ブラウンも執拗に自己主張するのです。
 しかし、それでちょうど良いというか、ファニアス・ニューボーンも両手バラバラ弾き、ユニゾン弾き、爆裂コード弾きを織り交ぜながら山場を作っていくのでした。

B-1 Ray's Idea
 モダンジャズ創成期から演奏されているレイ・ブラウンのオリジナルが、ここでは重量感&スピード感満点に再構築されています。
 ファニアス・ニューボーンは、もちろん十八番の両手ユニゾン弾きを初っ端から全開させていますし、エルビン・ジョーンズはステックで鬼の叩きまくり! レイ・ブラウンは土台作りに腐心するのですが、ソロ・パートではエルビン・ジョーンズと結託して反抗心を見せています。
 そしてクライマックスはエルビン・ジョーンズとファニアス・ニューボーンの潰し合い的なソロ交換! 怖ろしくも痛快な演奏で、ついついボリュームを上げてしまうのでした。

B-2 Stella By Starlight
 これも幾多の名演が残されている人気スタンダードですが、ここでのファニアス・ニューボーンの解釈は、両手をフル稼働させた超絶技巧の無伴奏ソロで魅惑のテーマを変奏し、リズム隊を呼び込んでからは十八番の両手ユニゾン弾きを、これでもかと炸裂させるのです。
 しかしエルビン・ジョーンズも負けていません。途中からはヤケクソ気味のシンバルと暴動寸前のツッコミで大暴れです。
 あぁ、こんなピアノ・トリオがあるでしょうか!?
 同様に超絶技巧のオスカー・ピーターソン・トリオのような、ある種の予定調和を否定した演奏に、そこでレギュラーだったレイ・ブラウンが参加しているところが、ジャズの味わい深いところ♪ 名演です!

B-3 Tenderly
 これまた人気スタンダード曲が素材ですが、ここではレイ・ブラウンのベースが主役♪ 冒頭からマイペースで自己主張しています。
 そして後半になってようやく、ファニアス・ニューボーンが余裕のテーマ変奏で参入し、忽ち超絶技巧大会です。もちろん、その背後にはエルビン・ジョーンズのネバリのブラシが!
 短い演奏ですが、最後には怖ろしいピアノ地獄が待ち構えています。

B-4 Cookin' At The Continental
 そして最後は、ホレス・シルバーが作ったハードバップの名曲をバリバリに演奏するトリオの凄みが堪能出来ます。
 とにかくファニアス・ニューボーンの猛烈なエネルギーには、流石のエルビン・ジョーンズもタジタジですし、レイ・ブラウンは演奏を纏めるのに必死です。
 まったく何処へ飛んで行くかわからない痛快さがありますねっ! これがジャズの面白さのひとつだと思います。

ということで、これはお蔵入りするのも頷ける演奏ばかりです。それは和めないということで、ジャズ喫茶の大きなスピーカーでガンガン鳴らしてこそ、真価が出るという演奏ではないでしょうか?

もちろん、どんな環境で聴いてもファニアス・ニューボーン以下、トリオの演奏は凄いのですが……。

機会があれば、ぜひともジャズ喫茶とか、大きな音量が出せるところで聴いて下さいませ。正直、かなりグシャグシャな混濁した演奏ですが、ガッツ~ンと爽快です♪

コメント (2)
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