OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

忘れえぬ人

2006-06-20 17:32:37 | Weblog

ちょっと前に書きましたが、マスコミの身勝手さには嫌悪感があります。

そういえばジャズマスコミでも、その犠牲者みたいなミュージシャンがいましたねぇ。そこで本日の1枚は――

Hollywood Madness / Richie Cole (Muse)

大ブームだったフュージョンが爛熟し、ジャズが伝統的な4ビートに回帰しようとしていたその狭間に、嘗てひとりの大スタアが出現し、アッと言う間に消えていきました。

それがリッチー・コールという白人アルトサックス奏者です。フィル・ウッズ(as) の弟子として超人的なテクニックを身につけていたそのスタイルの源は、師匠と同じくチャーリー・パーカー(as) 直系のビバップ派でしたが、演奏そのものは全くノーテンキというか、楽しければ何でも有り♪ つまり4ビートに拘りながらも、その実態はコミックバンド的なノリや祭の見世物的な胡散臭さに満ちていました。

もっとも、それは今だから言えることで、当時=1970年代末頃にはジャズマスコミが挙ってリッチー・コールを褒め称え、ジャズの救世主的な扱いをしていたのです。当然、我国のジャズ喫茶でも忽ち人気者になり、恐らくレコードもガンガン売れていたはずです。

何しろ聴いていて痛快な演奏が多いですし、特に4ビートを基調としたところに、フュージョンでジャズから離れていったファンが飛びついたというわけです。

このアルバムは、そんなリッチー・コールの人気絶頂時に作られた豪華絢爛な作品です。録音は1979年4月25日、メンバーはリッチ・コール(as)、ブルース・フォアマン(g)、ディック・ヒンドマン(p)、マーシャル・ホーキンズ(b)、レス・デミリエ(ds)、ミッシェル・スピロ(per) という当時のレギュラーバンドを中心に、マンハンッタン・トランスファー(vo)、トム・ウェイツ(vo)、エディ・ジェファーソン(vo) 等々の豪華ゲストが加わっています――

A-1 Hooray For Hollywood
 冒頭からアップテンポで演じられるハリウッド賛歌は、痛快なビバップ・フレーズで彩られています。ただしリッチー・コールの吹くそれは分かり易く、ビバップの特色であるエキセントリックな部分までも、現代的に翻訳してあるという按配です。
 もちろんリズム隊も的確なビートを送り続けていますし、ピアノのアドリブパートなんか、律儀なサーカス芸♪ ドラムスとリッチ・コールの対決さえも楽しさ優先になっているのでした。
 ちなみにここでのベースはボブ・マヌグッセンが臨時参加しています。

A-2 Hi-fly
 ラテンリズムを使った楽しい演奏で、当時のリッチー・コールのバンドでは十八番としてライブの場ではハイライトになっていた人気演目です。
 実際、聴いていてウキウキして困るほどの快演♪
 ちなみにこの頃から普及し始めた映像ソフトとしてのリッチー・コール作品では、この曲が大きなウリになっており、そこではボビー・エリンケスという野人のようなピアニストが大曲芸演奏を展開していますよ♪
 で、ここでの演奏はそれに優るとも劣らないもので、リーチー・コールの余裕とサポートメンバーの力演が光りますし、終盤にはマンハンッタン・トランスファーのコーラスを従えて、黒人ビバップ歌手のエディ・ジェファーソンが味のあるスキャットを聴かせてくれます。

A-3 Tokyo Rose Sings The Hollywood Blues
 明るい哀愁がある泣きのブルースという不思議な雰囲気ですが、そのキモはやっぱり分かり易さです。したがって、???と思ってはいても、結局、聴いていて気持ち良くなってしまうのですねぇ♪

A-4 Relaxin' At Camarillo
 チャーリー・パーカー(as) が自作自演したビバップの名曲に果敢に挑戦するリッチー・コールという、全く絵に描いたような4ビートの世界です。
 つまり、あまりにもプロデュースが先行しているところに嫌気がさすのですが、実際の演奏は見事という他はありません。エディ・ジェフーソンのビバップ・スキャットも流石のノリですし、バンド全体のコンビネーションもスッキリと纏まっています。
 まあ、そういうところが、またまた作り物の臭いに満ちているわけですが、当時はここまで楽しく、また完璧に王道ジャズの凄さを演じられるバンドが無かったのが実状でしたから、ジャズ喫茶では人気を呼んだというわけです。

B-1 Malibu Breeze
 これもラテンリズムの歌謡曲なテーマが魅力です。このあたりはサンタナ風でもあり、私は何時かこのバンドが「哀愁のヨーロッパ」を演奏したら恐いなぁ、とか思っていました……。
 さて、それにしても楽しい演奏です。辛口のファンからは様々な批判を受けても、リッチー・コールの歌心は本物だと、私は思います。したがって素直に楽しんで良いはずなのですが……。

B-2 I Love Lucy
 お馴染み「ルーシー・ショウ」のテーマで、ハリウッド的ノーテンキの最深部に迫るリッチー・コールは最高です。しかもラテン・リズムを使ったアレンジがゴキゲン♪ 強烈なアップテンポのフレーズを吹きまくって全く破綻しないリッチー・コールは流石に凄い人で、リズム隊との関係も良好です。
 ちなみにこのバンドは白人主体ですから、ハードバップ的な本格王道のノリは無いのですが、それを逆手に取った軽さの中にジャズの楽しさを追求した姿勢が、当時は新しかったのです。

B-3 Waitin' For Waits
 孤高のシンガー・ソングライター=トム・ウェイツに捧げたリッチー・コールのオリジナルです。もちろんその演奏は楽しさがいっぱい♪
 エディ・ジェファーソンがリードする歌唱のパートにはマンハンッタン・トランスファーのコーラスが加わり、さらには大団円でトム・ウェイツ本人までもが乱入するという豪華絢爛なクライマックスが待っています。
 もちろんリッチー・コールのアルトサックスも冴えていて、正直、何度聴いても好きです♪ と、ほとんど愛の告白になってしまいました♪

B-4 Hooray For Hollywood (Reprise)
 A面冒頭の曲をスローで再演して結びにするというトータル性を持たせたあたりに、このアルバムの作り物的な性格が現れています。
 しかも演奏がマンハンッタン・トランスファーのコーラスを主体にしたもので、リッチー・コールは何処に? という状況ですから!
 つまり正統派ジャズを装っていながら、実態はフュージョンと同じ手法で作られた作品というのが結論です。

ということで、非常に楽しいアルバムではありますが、この後、リッチー・コールの人気は急降下! 時代はウィントン・マルサリスの登場によって4ビート復権が急速に進みます。それはやはり、ジャズは黒人が演奏してなんぼ、という真実の世界ではありますが、極言すると、そこに至るまでにリッチー・コールがマスコミによって使い捨てにされたことは否定出来ません。なにしろ新伝承派と称されたマルサリス一派を持ち上げる当時のジャズ・マスコミの勢いは物凄く、リッチー・コールなんて……、という本音とも嘲りとも言える扱いに転換していくのです。

そして今ではリッチー・コールの諸作品がCD化されているか否かもわかりません。しかし新伝承派による4ビート復興の直前に、例え演技がミエミエでも、4ビートでファンを興奮させていたリッチー・コールという白人がいたことは、忘れられない思い出になっているのでした。


脇役も輝いて♪

2006-06-19 17:56:34 | Weblog

昨夜のサッカー日本チームは健闘虚しく……。

まあ、これも勝負のアヤなんでしょうが、やはり悔しいなぁ……。

意外な脇役が活躍して♪ なんて夢を描いていたのですが、現実は厳しかったというわけです。

そこで本日の1枚は――

Trip To The Orient / Ronnie Mathews (East Wind)

ジャズは、ある意味で個人芸ですが、脇役の存在が重要でもあります。

伴奏やサポートの達人がいてこそ、主役が光るというのはプロレスに似ていますが、そういえば暗黙の了解で全体の流れを作っていくところに上手さが滲み出るのが、ジャズでもありますね。

で、そんな脇役達が、ある日、突然に主役になることが出来たのが、1970年代のジャズシーンでした。それはロックやフュージョンに押されて苦しくなっていたジャズの世界で、それでも真っ当な本物のジャズを製作しようとしていたマニア系のレーベルの活動があっての事です。

例えば「ミューズ」「スティープルチェイス」「ザナドゥ」あたりのレーベルは、ベテラン勢に加えて、ハードバップ~モード一筋にやってきた中堅のレコーディングも積極的に行い、例えばシダー・ウォルトン(p) やピリー・ハーパー(ts) は、一躍ジャズ喫茶の大スタアになりました。

本日の主役、ロニー・マシューズもそういう黒人ピアニストで、1960年代にはマックス・ローチ(ds) やジャズ・メッセンジャーズのレギュラーを務めた時期もあり、来日巡業にも加わっていたそうですが、そのスタイルはビバップ~モード中心のマッコイ・タイナー(p) 系という実力者です。

もちろんリーダー盤も1963年に「プレスティッジ」で吹き込んでいましたが、正直言うと、脇役の域を出る人ではなかったと思います。

ですから1970年代に入ってからの境遇は苦しかったと思われるのですが、ジャズから離れていなかったのは流石で、そのロニー・マシューズに久々のリーダー盤吹込みのチャンスを与えたのが、我国のマイナー・レーベル「イースト・ウィンド」でした。おそらく同レーベル初の海外録音・製作による発売作品だと思います。

録音は1975年7月7&9日のニューヨーク、メンバーはロニー・マシューズ(p,elp)、鈴木良雄(b)、ルイ・ヘイズ(ds) という実力者揃いです――

A-1 一番 (1975年7月9日録音)
 アップテンポで最高に景気の良いモード曲です。タイトルの「一番」はロニー・マシューズが初来日時に作曲したことに所以しているそうですが、本人はその時の歓待が非常に嬉しかったと、後に語っています。
 肝心の演奏はモード全開! バリバリ弾きまくるロニー・マシューズにベースとドラムスが見事な助演で応えています。
 あぁ、こういう演奏こそ、1970年代のジャズ喫茶では熱烈に求められていたので、これには忽ちリクエストが殺到したのでした。

A-2 Manha De Carnaval / カーニバルの朝 (1975年7月9日録音)
 お馴染みのボサノバの名曲をロニー・マシューズはエレピで弾いてくれます。そしてこれが非常に心地良い♪ 初めて聴いた時には、その歌心とエレピの爽やかな響きに、目からウロコ状態でした。あぁ、何度聴いても最高です。
 ルイ・ヘイズのシャープでヘヴィなドラムスも気持ち良く、ズバリ名演だと思います。必聴~♪♪♪

A-3 Linda (1975年7月9日録音)
 ロニー・マシューズが完全なソロピアノで演じるスローな曲です。しかし原曲のイメージが、いまひとつピンッとこないので、???
 まあ、短い息継ぎのトラックかもしれません……。

A-4 K's Waltz (1975年7月9日録音)
 そして、これぞ王道ジャズという重苦しいモード曲がスタートします。ドラムスとベースが重くハードに蠢きますが、演奏テンポは緩急自在というか、中盤からは激烈な高速4ビートの中をトリオの3者が奮闘します。

B-1 Jean-Marie (1975年7月7日録音)
 これも典型的なモード曲ですが、ロニー・マシューズは自作の愛らしいテーマメロディを大切にしようとしています。ところがドラムスとベースが烈しいツッコミを入れてくるので、演奏はアフリカ色の強い、まさに当時のジャズ喫茶で好まれていた方向に進んでいくのでした。
 バリバリ・グイグイと音を放出していくピアノに絡む鈴木良雄のベースが印象的です。

B-2 When Sunny Gets Blue (1975年7月7日録音)
 美メロのスタンダート曲で、ロニー・マシューズは素晴らしい歌心で聴かせてくれます。何しろ原曲よりもグッとくるアドリブメロディが出るのですから、もう、たまりません。
 演奏テンポはスロー~ミディアムなんですが、ビートの芯を外さないリズム隊も好演ですし、モード風解釈と原曲変奏のバランスが秀逸で、これも何度も聴きたくなる名演だと思います。

B-3 Summertime (1975年7月7日録音)
 そして大団円はガーシュイン作曲の超有名スタンダードを素材にした大ハードパップ大会! こういうモードに成りかかって成りきれないというか、あえてそこに足を踏み入れるギリギリの演奏こそ、モダンジャズの王道としてファンには最も好まれるところではないでしょうか。
 モードを使いながらも歌心を大切にしているロニー・マシューズには好感が持てます。

ということで、これも今では隠れ名盤です。CD化されているか否かは不明ですが、オリジナルのアナログ盤は録音も良く、如何にも1970年代ジャズという音がします。特に鈴木良雄のベースやルイ・ヘイズのシンバルが爽快ですね♪ つまりここでも脇役が光っているわけです♪

ちなみにロニー・マシューズはこの後、欧州のレーベルにも吹込みを行っていますし、1980年代にはジョニー・グリフィン(ts) のバンドや自己のトリオで地道に活動していきます。つまりこういう人こそ、モダンジャズ保守本流を守り抜いた王道派で、その活動は地味ながら、ジャズファンからは何時までも愛されるのでは……?

また、おそらくこの作品製作側とロニー・マシューズの波長もバッチリあったのでしょう。アルバムタイトルもそれらしくなっています。

その意味で、このアルバムこそ、ジャズ者ならば一度は聴くべし! と本日も独断と偏見で決め付けさせてもらいます。暴言ご容赦。


グルーヴィ旭

2006-06-18 17:49:20 | Weblog

またまたジャスじゃないんですが、個人的にはジャズモードに入っていますし、本日の1枚は、ジャズもロックもゴッタ煮で楽しい復刻CDです――

流血の縄張り / 日活ニューアクション・小林旭の世界 (Hotwax)

01 爆弾男といわれるあいつ (音楽:鏑木創) 
02 広域暴力 流血の縄張 (音楽:鏑木創) 
03 マカオの竜「赤い流れ星」 (唄:小林旭) 
04 暴力団・乗り込み M-14A (音楽:坂田晃一) 
05 広域暴力 流血の縄張 (音楽:鏑木 創) 
06 広域暴力 流血の縄張 (音楽:鏑木 創) 
07 赤道を駈ける男 M-20 (音楽:山本直純) 
08 やくざ渡り鳥 悪党稼業 「放浪のブルース」 (唄:小林旭) 
09 あらくれ (音楽:鏑木 創) 
10 縄張はもらった (音楽:鏑木 創) 
11 暴力団・乗り込み M-2 (音楽:坂田晃一) 
12 放浪のうた「放浪のうた」 (唄:小林旭) 
13 暴力団・乗り込み M-14 (音楽:坂田晃一) 
14 爆弾男といわれるあいつ (音楽:鏑木創) 
15 赤道を駈ける男 M-7 (音楽:山本直純) 
16 マカオの竜 (音楽:伊部晴美) 
17 血斗「落目」INST 口笛ver.(音楽:伊部晴美) 
18 俺にさわると危ないぜ「アルベデルーチ・レオバルーダ・カリーナ」(唄:小林旭) 
19 赤道を駈ける男 M-14 (音楽:山本直純) 
20 赤道を駈ける男 M-18 (音楽:山本直純)

純粋に昭和を楽しもうという趣旨でしょうか、Hotwax が、またまた出してくれました♪

内容はタイトルに偽りなし! 昭和40年代前半から日活がロマンポルノ路線に転換する直前までに製作していた、所謂ニューアクション作品から、小林旭関連の音源を集めたものです。

しかもそのポリシーはジャズ&ロック♪ とくにかく聴いて吃驚のカッコ良いグルーヴと過激なノリ、はたまた和みのラウンジ系ソフトロック、おまけに哀愁の昭和歌謡曲が選りすぐられていますし、もちろんフィルム音源を使用、リマスターも良好です。

中でも特に強烈なのが、18曲目の「アルベデルーチ・レオバルーダ・カリーナ」で、全く意味不明の歌詞を堂々と熱唱する小林旭のバックでは、激烈なエレキが炸裂しまくりです。これが作られたのは昭和41(1961)年というエレキブームの真っ只中にあった日本のロック上昇期ですが、世界的にみても、リアルタイムでこれほど凄いギターロックも無いもんです♪ とにかく必聴です。

また冒頭1曲目はジャングルビート、また2曲目はエレキベースが蠢きまくるグルーヴィなジャズロックですが、それにしても作者の鏑木創は偉い人です。他にも素晴らしいスコアが堪能出来ますよ♪

また3曲目は小林旭の歌で哀愁がたっぷりなんですが、バックは洒落たボサノバ調という伊部晴美の会心作でしょう。

また、当時は若手だった坂田晃一はソウルジャズ風味の楽曲で楽しませてくれます。

そして山本直純は緻密なアレンジと幅広い音楽性で、これまた最高です♪ 特に20曲目は、どんなラウンジ物よりも洗練され、温か味に満ちた傑作ボサロックです。

ということで、とにかく聴いてもらう他は無い企画盤ですが、特筆すべきは実際に演奏しているミュージシャンの実力の物凄さ! ジャズもロックもクラシックもニューソウルも包括し、如何にも日活ニューアクションらしい過激なビート感と洒落た雰囲気を滲ませてしまうところは、最高です。

あと、この復刻CDのジャケットの素晴らしさ♪ デジパック仕様で、初回盤には「流血の縄張」のA2サイズ縮小ポスターのオマケ付き! 解説書に掲載のスチールも充実しています。

あぁ、8曲目、小林旭がギター1本でシミジミ歌う「放浪のブルース」が身に染みますねぇ……。

ええぃ! 第2弾も出してくれぇ~~~~♪


脂ぎった盤

2006-06-17 18:00:44 | Weblog

やっぱり、梅雨ですね、ジメジメ・ムシムシ……。

こういう時は真夏の我慢大会、逆効果のウサ晴らしを狙って、これを――

The Book Cooks / Booker Ervin (Bethlehem)

ブッカー・アーヴィンはズバリ、脂っこいテナーサックス奏者です。

そのスタイルの基本はR&B系の所謂テキサステナーなんですが、モダンジャズ全盛期の1950年代後半から頭角を現したということで、コルトレーンからの影響も隠せません。

しかも吹奏が馬力満点というか、投げっ放しのバックドロップというか、野放図で烈しいツッコミが魅力とはいえ、そこが好き嫌いの別れるところです。

もちろん黒人らしいネバリ、激情の泣きもたっぷりなんで、チャールズ・ミンガス(b) のお気に入りとなったのですが……。

そうして注目されて後のこのアルバムは初リーダー盤ということで、参加メンバーも豪華絢爛♪ ブッカー・アーヴィンのパワフルな魅力を全開させるべく、プロデュースも念入りで、全く対照的なスタイルのズート・シムズという大名人を相方に抜擢するという大勝負に出ています。

録音は1960年6月、メンバーはトミー・タレンタイン(tp)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ズート・シムズ(ts)、トミー・フラナガン(p)、ジョージ・タッカー(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、なかなかのクセモノ揃いです――

A-1 The Blue Book
 ジョージ・タッカーの強靭なベースに導かれて始まる入魂のスローブルースです。このあたりは完全にチャールズ・ミンガスのバンドの様ですし、先発でアドリブを聴かせるトミー・フラナガンまでもが、何時もの洗練されたスタイルを捨てて泥臭いグルーヴを発散させるので、ブッカー・アーヴィンも安心したのか、地を這うような黒~い咆哮! 続くトミー・タレンタインも暗い輝きに満ちたハスキーなブルース衝動に撤しています。
 そしてお待ちかね、ズート・シムズはやっぱり上手い! 滑らかなドライブ感に満ちた余裕の瞬間芸をたっぷりと披露しています。
 また全篇をがっちり支えつつ烈しく蠢動しているジョージ・タッカーのベースも特筆物です。

A-2 Git It
 ゴスペル調の楽しいハードバップとくれば、もうブッカー・アーヴィンには十八番ですが、トミー・タレンタインも大ハッスル♪ お約束のフレーズを連発してシンプルに露払いを務めています。
 そしてズート・シムズは本領発揮のグルーヴィな名人芸を聴かせますが、白人らしいスマートな感覚と秘めた黒さのバランスが秀逸! それはトミー・フラナガンも同様で、洒落た感覚を大切にしつつも黒人ジャズ本来のノリを大切にしていて好感が持てます。
 こうして、いよいよ登場するのがブッカー・アーヴィン♪ コルトレーンのスタイルを借用しつつも、基本であるR&Bのフィーリングを蔑ろにしないスタイルは節操が無いという声も聞こえますが、このクサ~イいノリは唯一無二です。
 またチャールズ・ミンガスのバンドでは盟友のダニー・リッチモンドがシャープなドラムスで煽るまくりなので、油断が出来ない雰囲気なのでした。

A-3 Little Jane
 この気だるいムードがハードバッブ爛熟期の証とでも申しましょうか、とにかく重たい雰囲気がチャールズ・ミンガスの好んだスタイルのコピーのような演奏になっています。
 したがってブッカー・アーヴィンにとっては手馴れたものなんでしょうが、それでも緊張感を失っていないのは流石です。
 ただし個人的には、ここまでがドロドロの3連発になっているので、真夏に炬燵で鍋焼きウドンを食っているかのような、我慢大会モードに入ってしまいます……。ズート・シムズの存在が清涼剤か……?

B-1 The Book Cooks
 ブッカー・アーヴィンが初っ端からアップテンポで烈しい吹奏を展開し、お約束の単純なリフが付いているという、アドリブ命の曲です。
 これはブッカー・アーヴィンにとっては十八番でしょうが、ズート・シムズも負けていません。否、むしろ水を得た魚状態で吹きまくり、もちろん歌心も全開♪
 続くトミー・フラナガンはベースとのデュオからドラムスを従えて、完全に自己のトリオ・セッションのようです。
 そしてクライマックスは2大テナーサックスのバトル大会! もちろん丁々発止の展開ですが、リーダーがどんなに頑張ってもズート・シムズの余裕が目立つと言う、皮肉な結末と感じるのは私だけでしょうか? 本当に何を吹いても上手い人です♪
 あぁ、汗びっしょりでスカッとします!

B-2 Largo
 暗い情念に満ちたブッカー・アーヴィンのオリジナルで、雰囲気はまたまた重苦しい方向に流れていきます。はっきり言うと、私には全く面白くない演奏なので、ここはトミー・フラナガン中心に聴いてみると、おぉ、やっぱり名盤請負人の証明がっ♪ 繊細なコードでの伴奏から深いエモーションに彩られたアドリブソロまで、流石です。

B-3 Poor Butterfly
 このアルバムでは唯一のスタンダード曲を軽やかに演奏するブッカー・アーヴィは、意想外の魅力があります。それは素直な歌心とテナーサックス王道の音色♪
 ただしアドリブパートでは何時もの投げやりフレーズとかヒステックな節回しが出てしまい……。
 しかしズート・シムズとトミー・フラナガンが洒落た歌心をたっぷりと披露してくれるので、ようやく私も安心出来るのでした。
 短い演奏ですが、和みます♪

ということで、グロテスクな部分、ヒステックな部分を含みつつ、やはりこれもジャズの楽しさを詰め込んだアルバムだと思います。

なによりもミスマッチの魅力というか、濃厚なビールと極上ワインの味比べというようなプロデュースに仰天♪ もちろんブッカー・アーヴィンとズート・シムズの対決の場を指しているわけですが、どっちがどっちかは、言わずもがな!

またリズム隊も地味ながら凄いグルーヴを発散しており、実はドラムスとベースだけ聴いていても満足してしまう瞬間が、多々、あるのです。

ジャズって、本当に怖いですね。

肝心のブッカー・アーヴィンは、この後も何枚かのリーダー盤を出していて、それは全てジャズ喫茶の人気盤でもありますが、残念ながら1970年に40歳で亡くなっています。合掌。


隠れ愛聴盤

2006-06-16 16:41:07 | Weblog

若い頃は、物分りの良い大人を妙に軽蔑していた時期がありました。

しかし、この歳になると、やっぱり私は物分りの良い大人でありたいと思います。

でも、これが難しいんですねぇ……。物分りが良いということは、ある意味ではスジを通して生きていくことですから……。

ということで、本日は揺ぎ無い生き方を通している偉人のアルバムを――

Hanky Panky / Hank Jones (East Wind)

ハンク・ジョーンズはビバップ=モダンジャズが創生される以前から、既に第一線で活躍していた黒人ピアニストでしたから、そのムーヴメントの最先端にいる天才チャーリー・パーカー(as) と共演してさえも、全く自己のスタイルを崩すことがありませんでした。

それはビバップ・ピアノの典型となったバド・パウエルのスタイルを超越したスマートなもので、優雅なタッチとジェントルな歌心、そしてどんなビートにも対応出来る素晴らしいリズム感!

つまり孤高の天才のひとりなのですが、不思議にハンク・ジョーンズにはエキセントリックなところがありません。とても自然体で物分りが良い雰囲気が濃厚です。

しかし、芯の強さは天下一品で、ジャズを中心に様々な音楽の流れに身を置きながら、自分のスタイルを貫き通しています。

例えば1960年代にはモダンジャズそのものがフリーに流され、さらにロックに押されてジャズそのものが人気を失っていた頃には、スタジオやテレビの仕事で大忙しだったようですが、1970年代初頭からのビバップ・リバイバルで再びモダンジャズの世界に引っ張り出された時、ハンク・ジョーンズはすんなりと往年のスタイルを再現してみせたのです。

否、と言うよりも、つまりハンク・ジョーンズは自分のスタイルを変えることなく、生き残っていられた実力者だったというわけです。

したがってそれ以降、再びリーダー盤吹き込みの機会があっても、妙に媚びたりする姿勢がありません。それは大ブームを巻き起こした「グレイト・ジャズ・トリオ」という売れセン企画のアルバムやライブの場においてもです。最先端のジャズで活動するバリバリのメンツと共演しても、「ベテランの味」と逃げの評価をされなかったハンク・ジョーンズこそ、揺ぎ無い自信に満ちた名ピアニストだと思います。

このアルバムは、その大ブレイク直前に日本のレコード会社によって企画・録音されたもので、共演者や演目はハンク・ジョーンズが自ら選んだと言われています。

録音は1975年7月14&15日、メンバーはハンク・ジョーンズ(p)、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ds) という実力派ビアノトリオです――

A-1 Nothin' Beats An Evil Woman
 擬似ジャズロック風のブルースですが、妙に屈託の無い明るい表情の演奏です。それはグイノリのドラムスとベースの凄みに、全くの自然体でノッテいるハンク・ジョーンズの気負いの無いピアノスタイルの魅力でしょう。
 とにかく弾き出されるフレーズのひとつひとつが活きていますし、ロン・カーターのベースも徐々に和んでいって、会心のソロに導かれてしまうのでした。

A-2 Warm Blue Stream
 スローな甘いムードが徹底的に追求されますが、それに流されてしまわないところに、このトリオの素晴らしさがあります。
 もちろんハンク・ジョーンズの優雅なタッチと溢れる歌心は見事♪ ロン・カーターもツッパリを捨てて健闘しています。

A-3 Confidence
 正統派ビバップでもハンク・ジョーンズが優雅なスタイルを崩していないことが証明される素晴らしい演奏で、私は大好きです。
 一抹の哀愁を含んだテーマ・メロディの良さ、それを存分に活かして全てを「歌」にしてしまうハンク・ジョーンズのアドリブは、もう即興とは思えません。かなり烈しいリズムとピートを送り出してくるドラムスとベースに対しても、全く動ずることが無く、逆に「歌」の持つ力を教え込んでいくようなハンク・ジョーンズの本当の凄みが、ここに存在しています。
 録音が団子状なので、どんどん音量を上げてしまう楽しい演奏です♪

A-4 Wind Flower
 静謐な出だしからグルーヴィな演奏に転化していく王道モダンジャズの楽しさが満喫出来る演奏です。
 もちろん主役はハンク・ジョーンズの美しいピアノですが、ロン・カーターのベースが執拗に絡んでいくので、グラディ・テイトもブラシで追従しつつもトリオとしての纏まりを大切にしたサポートが絶品です♪

A-5 Minor Contention
 ちょっとバド・パウエル調のビバップ演奏で、ハンク・ジョーンズは正統派としての実力を存分に発揮しています。しかもそれはエキセントリックなものではなく、あくまでも歌心を優先させたハンク・ジョーンズ・スタイルの典型になっており、ベースとドラムスが刺激なツッコミを入れるほどにクールで優雅なフレーズで対抗するという、まさに大人の味が全開した名演だと思います。

B-1 Favors
 後の「グレイト・ジャズ・トリオ」でも演目に入っていた優雅なモダンジャズ曲です。作曲は名アレンジャーのクラウス・オーガーマンということでコード進行も美しく、またモードの味付けも可能という汎用性が、この実力者トリオにはピッタリ♪
 全篇、間然すること無い素晴らしい演奏になっています。緊張感と和みのバランスが絶妙なんですねぇ~♪

B-2 As Long As I Live
 このアルバムでは唯一有名なスタンダード曲をハンク・ジョーンズは余裕でスイングさせていきますが、寧ろ緊張しているのはベースのロン・カーターで、ソロでは何となくガチガチになっている雰囲気が感じられます。
 まあ、それゆえに締りのある演奏になっているわけですが、ちょっと???

B-3 Oh, What A Beautiful Morning
 トリオの3者が絶妙な絡みを聴かせて進行していくあたりに、ちょっとビル・エバンス風の解釈が感じられますが、ハンク・ジョーンズのピアノはシブサの塊というか、何気ないフレーズのひとつひとつに歌心がいっぱい♪
 リズムに対するアプローチも絶妙で、そこはかとないファンキーなノリやゴスペルの味までも含んだ名人芸には、ただただ、敬服です。
 ロン・カーターのベースソロもイブシ銀の味とでも申しましょうか、派手さを抑えているあたりに好感が持てます。

B-4 Hanky Panky
 最後に置かれたタイトル曲はファンキー全開でありながら、ハンク・ジョーンズのピアノはジェントルな響きと歌心を忘れていない素晴らしさです。
 ただしベースとドラムスがハンク・ジョーンズから見れば若気の至りが丸出しで、いささか焦り気味……。まぁ、グラディ・テイトは何を叩かせても上手い人なんですが、こういう憎めないこともやっていたんですねぇ。しかし、それがジャズだと思います。

ということで、ハンク・ジョーンズと言えば、現代では「グレイト・ジャズ・トリオ」の人という位置付けですが、その前には、こういう渋味溢れる隠れ名盤を出していたのです。

確かにこれが「名盤」か否かは十人十色の判断ではありますが、私は密かに愛聴して今日に至っていますし、多くのジャズファンに聴いていただきたいと、願っている盤です。そしてこれを製作したレコード会社&スタップに拍手♪

ただし録音に好き嫌いがあるかもしれません。なにせ音が団子状でベースがブワンブワン、ドラムスはモコモコビシバシ、ピアノは引っ込み思案というバランスですから、ジャズ喫茶の様に、かなり良い再生装置が無いと聴くのに辛いかもしれません。

しかしそれ故に、どんどん音量を上げて浴びるように聴く楽しみもあるわけですが……。日本の住宅事情の厳しさを痛感するアルバムかもしれません。

現在CD復刻されておりますが、そっちは聴いたことがないので、ご容赦下さいませ。


サングラスの天才

2006-06-15 16:17:21 | Weblog

夏に向かって、いろいろとサングラスを物色していたら、急にこれが聴きたくなりました。

それにしてもジャズメンはお洒落な人が多いですね――

A Night At The Village Vanguard / Sonny Rollins (Blue Note)

なんだかんだ言っても、つまるところ、モダンジャズの真実はアドリブの凄み! これに尽きると思います。

いかに聴き手を圧倒し、あるいは和ませることが出来るか!?

それを即興演奏という瞬間芸で表現しなければならないところに、ジャズ演奏者の苦悩と歓喜があるんじゃないか? 等とド素人の私は思うわけですが、そんな事を超越した自然体でアドリブ出来る天才が実在するところに、ジャズの恐ろしさがあるわけです。

本日の主役たるソニー・ロリンズは、当にその天才! 絶好調時にはどんな共演者でも太刀打ち出来ない破天荒な凄みと余裕が表出されますが、このアルバムは、その証の1枚で、しかもアドリブの出来が全てというライブ録音です。

録音は1957年11月3日、ニューヨークの名門クラブ「ヴィレッジ・バンガード」で行われ、メンバーはソニー・ロリンズ(ts) 以下、昼の部がドナルド・ベイリー(b) とピート・ラ・ロッカ(ds)、夜の部がウィルバー・ウェア(b) とエルビン・ジョーンズ(ds) というピアノレスのトリオ編成です――

A-1 Old Devil Moon (夜の部)
 エルビン・ジョーンズの叩き出すラテンリズムも鮮やかですが、それに絡むウィルバー・ウェアの変態ベースが、まず絶品です。
 しかしソニー・ロリンズは全く余裕のマイペースで、緩急自在のノリと痛快な破天荒フレーズの連発! しかも、今、曲の何処を吹いているか、ちゃーんと分かる歌心が絶妙で、これはスタンダード解釈の極北かもしれません。
 こうなると流石のエルビン・ジョーンズも激烈4ビートで対抗せざるをえませんが、その背後で隙間を埋めるように蠢動するウィルバー・ウェアのベースが、また聞き物です。
 実は白状すると、初めてこのアルバムを聴いた瞬間から、私はウィルバー・ウェアの裏街道的なベースの虜になり、ここでもそれ中心に聴いていたのですが……。

A-2 Softly As In A Morning Sunrise (夜の部)
 ここでもいきなりウィルバー・ウェアの変態ベースが炸裂し、ソニー・ロリンズがおずおずと様子を見るかのようにテーマを吹奏するところが、憎めません。もちろん、その背後ではエルビン・ジョーンズのブラシが粘っこく蠢き、さらに「ゲロゲロ」と呻き声まで出してソニー・ロリンズを煽るのですが、流石は天才! 全く動じることなく、マイペースでテーマメロディを変奏していくのでした。
 というわけで、ここではウィルバー・ウェアのベースが何よりも聞き物で、その飛んだり跳ねたり蠢いたりする変幻自在の弾けっぷりには、素直に脱帽です。

A-3 Striver's Row (夜の部)
 お待たせしました♪ ソニー・ロリンズが自ら作曲したオリジナルでアドリブの真髄を披露してくれます。あぁ、このノリ! このドライブ感! さらにジョン・コルトレーンも真っ青な音の詰め込み! こんな演奏が出来ていたソニー・ロリンズですから、後年、ジョン・コルトレーンがシーツ・オブ・サウンドで売り出しても恐くなかったはずですが……。
 それはエルビン・ジョーンズとの対決に圧勝しているところからも明確ですが、天才はこれでも満足出来ないという証なんでしょうか……。

B-1 Sonnymoon For Two (夜の部)
 これも有名なソニー・ロリンズのオリジナル・ブルースなので、徹底して緩急自在なアドリブを展開するバンドの勢いは、誰にも止められません。全体としてはハードバップのブルース演奏から逸脱している瞬間がたっぷりあるのですが、エルビン・ジョーンズのポリリズムが強烈なので、全く気にならず、否、むしろそこが痛快です。
 ウィルバー・ウェアも変態性を隠して王道のバッキングに撤していますが、ソロ交換時には本性を露呈してしまうあたりが、ジャズの面白さでしょう。

B-2 A Night In Tunisia (昼の部)
 この曲だけが昼の部からの演奏で、メンバーはドナルド・ベイリー(b) とピート・ラ・ロッカ(ds) に交代していますが、彼等は当時新進気鋭の若手として注目されていたようです。
 そしてこのピート・ラ・ロッカが、エルビン・ジョーンズとは似て非なるものというか、やや違った味で素晴らしく、私は最初にこのアルバムを聴いた時、エルビン・ジョーンズよりも気に入っていました。
 肝心のソニー・ロリンズは、もちろん激烈です! お馴染みのテーマから爆発的なブレイク! そして怒涛のアドリブには共演者がついて行くのがやっとです。しかしその必死さが、逆に演奏全体から発散される強烈なスリルの源でしょう。
 ソニー・ロリンズも全く遠慮会釈の無い突進ぶりで、とにかく凄い!

B-3 I Can't Get Started (夜の部)
 烈しい演奏が続いたこのアルバムの締めは、有名スタンダードが歌心満点に披露されるという和みの大団円です。
 それにしても、このゆったりとしたテンポの中でビートの芯を失わないバンドの纏まりは最高♪ 3人がバラバラをやっているようで、実は到達点が同じという暗黙の了解が見事です。
 もちろんソニー・ロリンズはアドリブの極致に挑戦し、完全制覇の大偉業を成し遂げているのでした。

ということで、これは名盤の中の大名盤ですが、後年、この時の残り録音が公表されてみると、実は演奏の出来にムラがあったことが明らかになりました。したがって、如何にこのアルバムがベストのテイクだけで構成されていたかが分かります。

あぁ、全盛期のソニー・ロリンズと言えども、常に最高な演奏ばかりでは無かった……、と私のような凡人は安心したわけですが、しかし、それだからと言って、このアルバムの価値は下がることなど無く、永久不滅なアドリブ芸術の頂点を記録していることも、また事実です。テーマメロディという素材を、完全に自分の中に引き寄せてしまうアドリブ能力は、ジャズ史上でも屈指のものでしょう。

これぞモダンジャズ! 聴けば納得、誰しも文句のつけようがないはずです。

ジャケ写は完全に何処ぞの世界の顔役という、ロリンズの押しの強さを表していますね♪


ファンキー・ザビヌル

2006-06-14 18:44:28 | Weblog

今年は寒いとか言われていましたが、だんだん、暑くなってきたようです。

ムシムシときて、朝晩は寒いという、身体に一番悪い雰囲気ですが、そういう溜まりそうな疲れをぶっ飛ばすのが、景気の良いライブ盤ということで――

Cannonball Adderley In Japan (Capitol / 東芝)

「ライブ・イン・ジャパン」という響き、私の世代には特に感慨深いものがあろうかと思います。

何しろ当時、昭和40年代中頃までは外タレの来日公演が本当に希少でしたから、大物が来日すると、必ずと言っていいほど、実況録音が行われ、アルバムが発売されていました。

その中でも特大のヒットとなり、しかも歴史の残る名盤となったのが昭和40年8月に発売された「ペンチャーズ・イン・ジャパン(東芝)」でしたが、このアルバムも同じレコード会社が、柳の下を狙って製作したものかもしれません。

当時の日本の洋楽状況は既にジャズ・ブームが去っており、逆にビートルズが来日したことから日本中ではグループサウンズ=GSブームが急速に広がっていました。しかしその中で、キャノンボール・アダレイは大衆的な演奏・演目で人気を保っていたようです。

もちろんライブの場でも人気演目を多くやっていたのでしょう、このアルバムにはモダンジャズのファンならずとも耳にしたことがあろう曲が、ぎっしり詰まっています。

録音は昭和41(1966)年8月26日のサンケイホール、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(cor)、ジョー・ザビヌル(p)、ヴィクター・ガスキン(b)、ロイ・マッカーディ(ds) という、当時のレギュラー・バンドでした――

A-1 Work Song
 キャノンボールと言えば、まず、これでしょう。ナット・アダレイが作った、ファンキーを代表するような名曲で、日本でも多くのバンドが演じていましたし、ついには日本語の歌詞をつけて歌う尾藤イサオのような人まで出現したという人気曲です。
 ここでの演奏は冒頭からキャノンボールとナット・アダレイの罵りあいのような無伴奏ソロの掛け合いにジョー・ザビヌルのビアノが味をつけ、お馴染みのテーマが厳かに披露されます。もちろんお客さんはその瞬間に大喜び♪ 続けてド派手な演奏に突入すれば、会場は興奮のルツポです。
 ただしキャノンボールのアドリブソロは、いささか野放図なところが目立ちます。しかし当時の雰囲気からして、これで良いんでしょうねぇ……。

A-2 Mercy,Mercy,Mercy
 ジョー・ザビヌルが作った、これぞゴスペルファンキーの塊という名曲で、もちろん当時、世界中で大ヒットしていますが、実はこの時点ではレコード化されていなかったと思われます。
 なにしろ件のヒットバージョンは、この日本公演に先立つ7月に録音されたものですから、ここではバリバリの新曲として公開されたわけです。
 肝心の演奏は、ゆったりしたテンポから力強いビートに煽られてジョー・ザビヌルのピアノがファンキーを熟成させていくという展開です。もちろんこれが気持ちE~♪ バックのリフを演奏するアダレイ兄弟もノッテいますし、ヴィクター・ガスキンのベースも健闘しています。
 ちなみにジョー・ザビヌルはウィーン出身で、後年、ウェザー・リポートを結成して大ブレイクしますが、1950年代末にアメリカにやって来た頃は白人らしからぬ王道ハードバップのスタイルで演奏していました。恐らくキャノンボールのバンドに誘われたのも、そのあたりを評価されてのことだと思います。
 また作曲も上手く、この他にも名曲を数知れず作っています。

A-3 This Here
 1950年代からキャノンボールのバンドでは定番のヒット曲です。
 それはズバリ、ゴスペルファンキーなワルツで、そのリズムとビートの汎用性から、ここではロックビートに近いノリまで聴かせてくれます。
 メンバーのアドリブでは要所に様々な仕掛けがあったり、出来合いのフレーズ、お約束のリフの大盤振る舞いなので、いささか飽きがくる展開ですが、ジョー・ザビヌルがファンキーな中にもビル・エバンスっぽいモードを入れて新鮮な熱演です。

B-1 Money In The Pocket
 これもジョー・ザビヌルが作ったファンキー曲で、この年の初めに同名タイトルのリーダー盤で吹き込んでいますが、キャノンボールのバンドでも頻繁に演奏していた証が、これです。
 曲調は完全なジャズロックで、まずナット・アダレイが大ハッスルの熱演を展開すれば、キャノンボールは兄貴の貫禄で余裕のウネリと入魂の大ブローです。
 そしてお待ちかねのジョー・ザビヌルは若干ブルース魂に欠けているような気も致しますが、作者としての正解はこれっ! ということなんでしょうか……。
 後半はリズム隊の見せ場となって、一端、沈静化させたファンキー・グルーヴを徐々に盛り上げていくという、些かあざとい演出が繰り返されるので、もう、たまりせん♪ この静と動のコントラストが、新しい感覚だったんでしょうねぇ、今聴いてもエキサイトしてきます。

B-2 The Sticks
 これまた痛快なボサロックと言うしか無い、最高の曲です。
 なんか聴いているうちに、鏑木創が作る日活ニューアクションのサントラみたいに感じられるのは、私だけでしょうねぇ……、ははは……。
 う~ん、それにしてもシャープでドロ臭いリズム隊が素晴らしいです♪

B-3 Jive Samba
 そして大団円は、キャノンボールのバンドテーマともいうべき、またまた楽しいファンキーボサノバです。
 しかしテーマの楽しさとは裏腹に、アドリブパートではキャノンボールがエグイ新感覚を披露し、ナット・アダレイも斬新なフレーズで勝負していますが、ここでも凄いのがジョー・ザビヌルのファンキー&ロッキンな生ピアノ! ビル・エバンスがファンキーしたような感覚と言うよりも、これはジョー・ザビヌルだけの個性と、断言しておきます。
 またリズム隊のノリが素晴らしく、特にロイ・マッカーディのドラムスがイナタイ! これがまた、最高なんですねぇ♪

ということで、非常に荒っぽい出来ではありますが、楽しさ満点♪ そしてジョー・ザビヌルが熱演の弾きまくりなんで、ファンは必聴だと思います。

で、このアルバムが当時、どのくらい売れたのかは不明ですが、私の家の近所にあった普通の喫茶店では1970年代初期になっても鳴らしていましたから、それなりにヒットしたのでしょう。

ただし時代はロックへ一直線! ジャズもロックを取り入れなければ生き残れない選択となったわけですが、ここにその正解のひとつが記録されています。

そしてジョー・ザビヌルを聴くなら、まず、これです。


超人的爽快さ

2006-06-13 17:24:31 | Weblog

敗戦で一気に熱が冷めつつあるW杯ではありますが、私はまだまだ諦めていません。

というか、実は気持ちの整理がついていないだけかもしれませんが……。

ブラジルに勝とうなんて、無謀ですかねぇ……。

ということで、本日は超人的なアルバムを――

This Is Tal Farlow (Verve)

どの世界にも「特別な人」っていますよね。良くも悪くも、凄い人っていう存在が。

例えばジャズ・ギターの世界では、タル・ファーロウという白人ギタリストが、そういう人です。

そのスタイルは驚異的な早弾きと豊かな歌心、骨太な音色と豪快でありながら繊細な装飾フレーズ、おまけに烈しいツッコミと余裕のネバリ!

しかも、それが独学で身につけたものだというのですから、仰天です。

さらに全盛期に逆玉の輿で引退したのですから、あぁ……。

このアルバムはその全盛期に吹き込まれた傑作で、録音は1958年2月17&18日、メンバーはタル・ファーロウ(g)、その盟友のエディ・コスタ(p)、ジミー・キャンベル(ds) を中心にベーシストは17日がノビー・トーター、18日はビル・ティカスが参加しています――

A-1 Lean On Me (1958年2月17日録音)
 あまり有名ではないスタンダード曲ですが、それを逆手にとって奔放なモダンジャズに仕立ててあります。まずテーマのオリジナル・メロディに漂う一抹の哀愁を活かしつつ、それを豪快に変奏していくバンド全体の勢いが素晴らしい♪
 アドリブパートでもタル・ファーロウが低弦で蠢きながら、次の瞬間、高音域にファッと滑り込んでいく早弾きのスリルを存分に聴かせれば、エディ・コスタは得意の重低音打楽器奏法を最初っから披露して、暗い予感に満ちた演奏で抜群のコントラストをつけています。
 ちなみにエディ・コスタは1962年にシェリー・マン(ds) のリーダー盤「234 (ImPulse!)」に参加してこの曲を演奏し、得意の打楽器ピアノを炸裂させていますが、やはり十八番だったのかもしれません。
 そして素晴らしいのがジミー・キャンベルのスカッとしたブラシ! シャッシャカ、シャッシャカ、気持ち良い限り♪ アップテンポの曲展開を見事に支えているのでした。


A-2 Wonder Why (1958年2月17日録音)
 これもスタンダードの隠れ名曲というか、タル・ファーロウのギタースタイルにぴったりの曲想が最高です。
 なにしろイントロからテーマの変奏、アドリブパートの歌心と躍動感が素晴らしく、またアレンジも秀逸だと思います。全体としてはミディアム・テンポの演奏ですが、タル・ファーロウは早弾き織り交ぜながら緩急自在♪
 こういう選曲の上手さも一流プレイヤーの必須条件かもしれません。

A-3 Night And Day (1958年2月17日録音)
 そして今度は有名スタンダード曲を選び、縦横無尽のギター捌きを聴かせてくれます。しかもこれは他の大勢のギタリストがレパートリーにしているということで、どうだっ、上手いだろう!? となってしまいそうですが、流石はタル・ファーロウというか、ちっとも嫌味になっていません。
 もちろんタコと渾名されたタル・ファーロウの手の大きさが無ければ、それは苦しい運指が必要とされるフレーズの連続です。つまりギタリストとしての資質を完全開花させた演奏が、これというわけです。

A-4 Stella By Starlight (1958年2月17日録音)
 これも大勢のギタリストが名演を残している有名スタンダード曲ですが、ここでのタル・ファーロウは一際鮮やかです♪ とにかくアップテンポでゴマカシの無いフレーズをバリバリと弾きまくり! もちろん些細なミスタッチも散見されますが、それすらもアドリブの一部にしてしまう勢いがあるのです。
 リズム隊も相当熱い雰囲気で、ジミー・キャンベルはステックで奮戦、エディ・コスタもクライマックスのソロ交換で烈しいツッコミを入れています。

B-1 The More I See You (1958年2月18日録音)
 タル・ファーロウの歌心が全開した素晴らしい演奏です。
 まずテーマの解釈が素晴らしく、アドリブパートでも余裕の展開! と見せかけて、実はギリギリの緊張感も漂うという恐ろしさです。
 実は恥ずかしながら私には、このアドリブのコピーに挑戦という無謀な試みをした過去がありますが、同じ雰囲気を出すピッキングの難しさに打ちひしがれました……。さらに運指にも無理がたっぷり存在しています。

B-2 All The Things You Are (1958年2月18日録音)
 これまた有名スタンダード曲ですが、コード進行にモダンジャズどっぷりの難しさがあって、良いアドリブを展開することが一流の証明のようになっています。
 もちろん、ここでのタル・ファーロウにはそんな心配はご無用で、早いテンポの中で一糸乱れぬソロを展開していきます。あぁ、こんなにギターが弾けたらなぁ……、と思わず天を仰ぐ素人の哀しさを痛感させられるのでした。

B-3 How Long Has This Been Going On (1958年2月18日録音)
 ここでは最初、グッとテンポを落とし、スロー物でのタル・ファーロウの妙技が楽しめますが、直ぐに力強いリズム隊の煽りが始まり、ハードな雰囲気の中で歌心を披露していくタル・ファーロウはニクイ限りです。
 エディ・コスタを中心としたリズム隊は、時としてモダンジャズの王道を踏み外さんばかりの炸裂ぶりですが、クライマックスは高音弦をミュートしたタル・ファーロウのキメ技に導かれ、事なきを得るのでした。う~ん、素晴らしい♪

B-4 Topsy
 これまたギタリストの必須科目ですが、ジャズギターの神様=チャーリー・クリスチャンの名演があるので、演ずるには相当の勇気が試されます。
 ここでのタル・ファーロウは、あえてそこにチャレンジして完全な成果を残そうと奮戦し、見事、期待に応えています。それはネックのあらゆる箇所を這い回る指の動きの凄さ、淀みないピッキングの上手さが渾然一体となった、これもひとつの神業というわけです。
 またエディ・コスタも大健闘、ジミー・キャンベルのドラムスもブラシとバスドラが暴れて、痛快です。

ということで、これはジャズギターの名盤ですが、残念ながら全体が同じようなテンポの曲ばかりで、イマイチ、変化にとぼしいことも事実です。

しかしタル・ファーロウという稀代の名手を鑑賞するには最高の1枚でしょう。タイトルに偽り無し! 爽快さは満点です。


暗い輝き

2006-06-12 17:41:18 | Weblog

昨夜はPCの電源トラブルでアップ出来ませんでした。

なんとか今朝になって復旧したのですが、そのおかげで、再びジャズモードに入ることも出来ました。

そこで――

Leapin' And Lopin' / Sonny Clark (Blue Note)

ハードバップの名ピアニストであるソニー・クラークは、日本だけで突出した人気があると言われています。

なにしろソニー・クラークを見初めて自分のレーベル=ブルーノートで頻繁に録音したプロデューサーのアルフレッド・ライオンですら、ソニー・クラークのリーダー盤が日本だけで良く売れることに首をかしげた、という逸話があるほどです。

ソニー・クラークの魅力とは、一抹の泣きを含んだアドリブ・メロディの妙、けっして派手では無いビアノ・スタイルの中に、そこはかとなく漂う哀切の雰囲気、さらに本当に日本人の琴線にふれる作曲能力♪ おまけに黒人らしい粘りがありながら、嫌味にならないそのタッチ等々、聴くほどに味が染みてくる名手だと思います。

ただし、地味なところは否めません。ウィントン・ケリーのように溌剌・颯爽としたところもないし、オスカー・ピーターソンのようなド派手なテクニックの開陳も無く、バド・パウエルのようなエキセントリックなところは当然無く、ハンク・ジョーンズやアル・ヘイグのような趣味の良さもありません。

たった一言、ファンキーです!

しかし、ちょっとこのあたりは、1回聴いただけではピンッとこないのが本当だと思います。それだけに魅力に目覚めると、完全に虜になるのでした。

このアルバムは早世する前年に作られた最後のリーダー盤で、録音は1961年11月13日、メンバーはトミー・タレンタイン(tp)、チャーリー・ラウズ(ts)、ソニー・クラーク(p)、ブッチ・ウォーレン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) を中心に1曲だけ、アイク・ケベック(ts) のワンホーン・セッションが組み込まれています――

A-1 Somethin' Special
 いきなり仄暗い雰囲気が横溢したテーマが始まり、それだけでソニー・クラークの世界にどっぷりと惹きこまれます。もちろんこれはソニー・クラークのオリジナルですが、こういう作曲の上手さが魅力であることは言わずもがなです。
 アドリブ先発のチャーリー・ラウズもそのあたりは充分に心得ているようで、アクの強いフレーズを織り交ぜながらハードバッブに撤していて見事です。と言うのも、この人は当時、セロニアス・モンクのバンド・レギュラーとして、何時も同じようなフレーズばかり吹いていたので、ここでのちょっと色合の異なったアドリブは新鮮なのでした。やはり実力者の証明?
 そして続くトミー・タレンタインのトランペットが暗い輝きに満ちています。この人も超一流では無く、味の世界で勝負するタイプなので、この曲想はジャストミート♪
 肝心のソニー・クラークはソロパートでは何時もと変わらぬ哀愁のフレーズを連発してくれますが、ホーン陣のソロのバックで聴かせる絶妙なコード弾きと斬り込んでいくようなカウンター気味の伴奏が、ジャズ者にはお気に入りではないでしょうか。

A-2 Deep In A Dream
 ここでは前曲でのホーン陣2人が抜けて、アイク・ケベックが入ったワンホーン編成となり、スタンダードのスロー曲がじっくりと演奏されます。
 まずソニー・クラークが泣きのテーマを素直に泣かせてくれるところが好感度、大♪ 実はこういうところが、モダンジャズではなかなか無いのですね。
 そしていささかオールド・ファッションなアイク・ケベックのムード・テナーが、またまた素直にテーマ・メロディを変奏していくのですから、もう、たまりせん♪ このアルバムが人気盤なのは、この1曲があるからと言っても過言では無いのです♪ う~ん、ソニー・クラークの素直さの秘密は、アイク・ケベックの参加にあったのか……。
 夜のムードにはぜひ、どうぞ。必ずオチます。ってなにが……。

A-3 Melody For C
 如何にもソニー・クラークらしいハードバップの名曲・名演です。なにしろテーマからしてウキウキと、本当にジャズの楽しさに溢れています♪ リズム隊も快適♪
 そしてアドリブパートでは、まずチャーリー・ラウズが中庸度が高いソロを披露すれば、トミー・タレンタインもジンワリと己の味を出しまくりです。
 するとソニー・クラークはそのバックで叩きつけるようなコード弾きを爆発させ、続けて流麗なファンキー・ピアノを聴かせてくれるのです。
 もちろん全体としては派手な演奏ではありません。しかしそこが如何にもソニー・クラークという世界♪ そこはかとない哀愁がたっぷり♪ その場にはテーマだけ聴いて満足したりする私がいます。

B-1 Eric Walks
 ベーシストのブッチ・ウォーレンが作曲したアップテンポのハードバップで、何よりもリズム隊が好調なので、気持ち良くなります。そしてソニー・クラークはバド・パウエルの影響下にあるフレーズで勝負しているのですが……。

B-2 Voodoo
 このアルバムの中で私が一番好きな演奏が、これです。
 暗い雰囲気の中、ベースがムードを設定し、ソニー・クラークのファンキーなピアノを中心にテーマが演奏されるところで、私は悶絶してしまいます。
 アドリブ先発のチャーリー・ラウズも本領発揮のハードなソロを聴かせてくれますが、トミー・タレンタインだって負けていません。
 そしてやはりソニー・クラーク! 全篇、ファンキーの塊のような演奏で、気がつけば、もう、あたりは真っ黒です。このネバリ、ファンキーな音の選び方、曲想の妙♪ 何度聴いても飽きません!

B-3 Midnight Mambo
 オーラスはトミー・タレンタインが作曲したハードバップ・マンボ♪ これが楽しいんだか哀切の情なのか、ちょっと混濁した雰囲気があって、不思議な気分にさせられます。
 しかしアドリブパートはモード調が入った新しい解釈になっていて新鮮というか、それ故にトミー・タレンタインはマイルス・デイビスになったりするのですが、ソニー・クラークは完全にマイペース♪ こういう次なるステップが上手くいっていただけに早世が惜しまれてなりません。

ということで、ソニー・クラークは結局、悪いクスリが止められず、31歳で亡くなっています。その残された演奏からは、確かにソニー・クラークという優れたピアニストの存在が確認出来ますが、本人は自己の才能について、どう思っていたのでしょう……。クスリ代を稼ぐためにジャズを演奏していたとしたら、こんなに哀しいことはありません。

 本国では全く人気が無く、良い仕事にも恵まれなかったソニー・クラークは、日本では人気者という真実を知らずにいたのでしょう。全く人生には答が無い……。そんな想いで聴くこのアルバムは、ますますホロ苦い雰囲気に満たされていくのでした。


転がる!

2006-06-10 17:40:15 | Weblog

最近また、ジャズ・モードに入らなくなってきました。

何年かごとのサイクルで、必ずそういう時期がやってきます。

原因は様々ですが、根源は不明というところ……。なんか聴く気がしないんです。

で、昨日の夜からはストーンズとサンタナばっかり聴いています。

特にストーンズはミック・テイラー在籍時のライブが最高で、実はこの時期のライブ盤は公式発売されていないのですが、実は海賊盤で優れものが存在しているのは言わずもがな――

Bedspring Symphony / The Rolling Stones (TAKRL)

海賊盤に取り付かれると必ず地獄に落ちるのは必定、マニアの宿命です。

で、私をその道に引きずり込んだのが、このアルバムです。

海賊盤とは非合法のレコードのことで、通称ブートと呼ばれていますが、それはコンサートの隠し録りや放送音源等々が主なソースで、もちろん音質はほとんどが劣悪です。

日本で海賊盤が流通するようになったのは昭和45年あたりからで、それから数年の間に新宿西口には専門店が林立するようになりました。しかも当時の海賊盤は2千円前後と安く、バーゲンだと3枚千円とか、投売りまでありました。

ただし音質と共に盤質も悪く、ジャケットも白いボール紙の袋にレコードを無造作に入れ、そこに安っぽい印刷のデザイン・ジャケットの紙を貼りつけ、シールドしただけの体裁でした。

ですから、実際に聴いてみると絶望と困惑のブツばかりというのが実状です。

しかしその中に、極、稀に素晴らしい作品が混じっているのです。そしてそれがあるから、次もまた♪ と期待して浪費の道に突入という悪循環……。

私にとっては、その悪魔が、これというわけです。

内容はストーンズが1973年秋に敢行した欧州ツアーからのライブ音源で、元ネタは放送用録音ですが、実はストーンが公式ライブ盤を製作しようと録音したものも含まれているようです。したがって演奏&録音は最高! サポートメンバーにはビリー・プレストン(key,vo) が参加しています。

A-1 Gimme Shelter
 いきなり何かのラジオ放送があって、グレン・ミラー調の音楽が流れ、タイトル曲のライブ音源に繋がりますが、それは如何にもブートという音質です。ところがナレーションが続くうちに、極上な音質で曲本篇がスタート♪
 どうやら昔はこんな音でしか録音出来なかったけれど、今ではねっ♪ という趣向になっています。
 肝心のストーンズの演奏は、決まり文句の最高! これしかありません。チャーリー・ワッツを中心とした重くてシャープなビートとリズム、流麗なミック・テイラーのギター、そしてミック・ジャガーの勢い満点のボーカル!

A-2 Tumbling Dice
 こんな緩~い曲をダレずに演じるストーンズは、これまた最高! 他のバンドは絶対に到達出来ない境地だと思います。ブラス陣の南部リフとミック・テイラーの対決にはゾクゾクしてきます。

A-3 Brown Sugar
 ストーンズ流儀の爽快なR&R! ちょっと危なっかしいキース・リチャーズのイントロから、後は一気呵成! そのコード弾きにからんでくるミック・テイラーのスライド・ギターが大暴れです。さらに後半ではビリー・プレストンまでもが!

A-4 Heartbreaker (Doo Doo Doo Doo)
 当時の最新盤からの新曲です。最近のストーンズとは違い、この全盛期には積極的に新曲をライブで演奏していたんですよっ! 前半はハードロック、後半はビリー・プレストン中心のファンキー大会という構成になっており、ミック・テイラーのギターはフュージョンしている瞬間までもっ!

A-5 Angie
 ご存知「哀しみのアンジー」です。ここではビリー・プレストンの生ピアノが泣いていますし、ミック・ジャガーのボーカルも芝居気たっぷり♪ ミック・テイラーとキース・リチャーズのギターの絡みも上手くいっています。そして大団円はビリー・プレストンのオルガンがっ! 本当に熟成したアレンジ&演奏です。

B-1 Honky Tonk Woman
 お待ちかね、ストーンズ十八番のノリが楽しめる名曲です。キース・リチャーズが変則チューニングのコード弾き、チャーリー・ワッツの恐いドラムスがキメですが、ミック・ジャガーのボーカルも力が入っています。
 そしてサビからはベース&ホーン、コーラスが一体となって怒涛のノリ! そこへミック・テイラーの流れるようなギターが執拗にからんでいくのです。
 間奏ではキース・リチャーズが毎度お約束のフレーズを弾き、後半は徐々にテンポが上がって痛快至極です。あぁ、最高だぁ~♪

B-2 Midnight Rambler
 当時のストーンズの恐いもの知らずの勢いが凝縮された、驚異的な演奏です。
 いきなりグイノリのリズムで突進していくバンドは、誰も止めることが出来ません。ビル・ワイマン&チャーリー・ワッツはキース・リチャーズのリズム・ギターに合わせているのでしょうか、どっかしらツンノメッタような不思議なグループが編み出されていくのです。
 そしてこのライブではビリー・プレンストンも大暴れ、オルガン&シンセで濃い味付けをしています。
 それにしてもこのテンポの設定とか変幻自在なノリは誰がリードしているのでしょうか? やっぱりキース・リチャーズでしょうか? 流石のミック・テイラーも悪戦苦闘していますが、徐々に余裕を取り戻し、あまり上手くないリズム・ギターを聞かせ、得意なブルース・ロックに引張っていくところが憎めません。
 う~ん、どうやらチャーリー・ワッツがカギを握る男か? とにかくバンド全体で観客を自在にノセてしまう、物凄い演奏です。

B-3 All Down The Line
 前曲の興奮をさらに加速させる怒涛のR&Rです。これを聞いてノレない人はストーンズを理解する能力が欠如していると、私は決め付けます。
 なにしろミック・ジャガーの荒っぽい歌、ビシバシのリズム隊、前半はスライド、後半は流麗なリードで大暴れするミック・テイラーの白熱ギター、轟音のようなホーン隊! 途中で演奏が暴走して破綻しそうになり、ミック・ジャガーが焦ったりするところまでもが素敵です。何度聞いても痛快です!

B-4 Street Fighting Man
 そして最後は暴動誘発曲がついに登場!
 この頃のキース・リチャーズは、まだちゃんとギターを弾いていたという証明でもあります。ミック・テイラーの物凄いギターソロにちゃんと合わせてサイドギターの役目を果たしていますからねっ♪ 最後はハードプログレになって大団円です。

ということで、これはストーンズのどんな公式ライブ盤よりも素晴らしい逸品です。しかもこれが出た少し後には、同一音源を使った拡大盤の「Nasty Music」というアナログ2枚組アルバムが登場し、海賊盤業界は一気に景気づくのです。

もちろんファンは、たまりません。同時期に来日公演が中止になっていた反動も加わって、こんな素晴らしいライブを聴かされては、ますます海賊盤地獄に落ちていくのでした……。

現在では、もちろん海賊盤ですがCD化もされております。あまりにも危ない道ではありますが、何か海賊盤を、とお考えならば、これか「Nasty Music」から聴いてみて下さい。1970年代ストーンズの物凄さが体験出来ますよ♪