Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

長いお別れ

2018-03-24 09:09:46 | 読書
中島京子,文春文庫 (2018/3).単行本は 文藝春秋 (2015/5).中央公論文芸賞・日本医療小説大賞のW受賞作.

チャンドラーと同じタイトルだが,小説の中に,長いお別れは米語で認知症のことだというセリフがある.

Amazon の内容紹介*****
帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。*****

有吉佐和子「恍惚の人」を読んだのは1970年代だったと思うが,あれに比べるととても軽い.解説 (川本三郎) が言うように,「映画のカメラで言えば,一気にロングに引く」.娘や孫に話題が移るので,父の病状も死も遠景にぼやけてしまう.最初と最後は本筋と無関係なエピソード.

だから読みやすい.「窓から逃げた...」は一週間くらい読んではやめるを繰り返して放り出したが,こちらは一晩で読んでしまった,
認知症の祖父と孫との会話には笑ってしまった,
3人の娘が茉莉と芙美と菜奈で,読者の認知症度テストみたいな命名.結局最後まで誰が誰やらわからなかった.それでも読むのに困らなかった.

「恍惚の人」では面倒を見るのが嫁だったが,こんどは妻というのは時代を反映しているのだろう.ただし良い娘が3人いたのでなんとかハッピーエンド...とは言わないが,悲惨な終わり方は免れた.
ウチの場合は...考えないことにしよう.

☆☆☆★
コメント
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