山根銀二訳,有斐閣 (1954).訳者・山根銀二 1906-1982 は音楽評論家.
「訳者序」によれば,1930 年の鉄塔書院版の初訳を「得手勝手な区分づけなどをやり,問題の所在を不明にしたり,なくもがなの説明などをつけて,かえって本の主旨をゆがめてしまったもの」と自己評価した結果がこの改訳である.
この本はマックス・ウェーバー 1863-1920 の死後出版された.初訳刊行は当時の感覚では,原典出版と同時と言ってもいいくらいであろう.
底本は 1924 年の第2版.この有斐閣版にはテオドーァ・クロィアーの緒論と,松田智雄・住谷一彦による「解説 マックス・ウェーバー」所収.解説は住谷が全般・松田が音楽社会学を分担している.
やはり「訳者序」を部分的に引用すると...
この本は「タイトルとはだいぶへだたったところに問題の範囲を置いていて,この本から直接に今日の音楽現象に対する社会学的な解明を求めることは,おそらく失望をまねく以外にないのではなかろうか.私もはじめこの本に期待したものはそれであった.そしてたぶんウェーバーもまた究極にはそれを念願したのであろう.この本が音楽社会学として完成したものだとは著者もかんがえていなかったであろう.それは出発点であり,土台石である.」
本論は四六版で130ページ弱.内容は,音律と音階の科学と地理と歴史みたいなことから始まる.最後の20ページは鍵盤楽器がテーマとして取り上げられる.
福山・天満屋わきの児島書店で800円.ところどころ赤線が引いてあるが,我慢する.
この本はその後 1967 年に,安藤 英治・池宮 英才・角倉 一朗の訳が創文社から出版されたが、やはり絶版らしい.この3人のうちのひとりによる
安東英治「マックス・ウェーバー」講談社学術文庫 (2003)
は音楽社会学を 25 ページにわたってとりあげている.音楽社会学の社会学的側面を強調しているところが,山根序文と対照的.
大学の教養課程で松島静雄先生の社会学の講義を受けた.マックス・ウェーバーの名前はこのとき覚えたが,講義では音楽社会学には触れられなかったと思う.