【菅政権】:実は「次の政権」の成功を確信している「シンプルな理由」があった ■10月総選挙でも、スガは勝てる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【菅政権】:実は「次の政権」の成功を確信している「シンプルな理由」があった ■10月総選挙でも、スガは勝てる
◆今回のスケジュール
ここ一週間あたりで、マスコミから出始めているのが、9月解散、10月総選挙だ。
本コラムでは、2週間前の6月7日に、「9月28日公示、10月10日投開票」といっている。9月6日に臨時国会召集、そこで大型補正予算を提出、それを可決した後に、解散」というスケジュールもささやかれている。
長年の国家公務員としての感である。今年10月3日は仏滅、10月10日は先勝、10月17日は友引というカレンダーも念頭に置いている。戦後26回の総選挙の投開票日において、大安7回、赤口4回、先勝4回、友引5回、先負4回、仏滅2回だ。
作為性がなければ、どれも4~5回だろうが、大安が多く、仏滅が少ないのは、大安を好み、仏滅を避けているからだろう。政治家に限らず験担ぎをする人は少なくない。
補正予算は7~10日間の審議を要するが、早く行けば、9月22日公示もありえる。9月22日も28日もともに大安なので、可能性がある。もっとも、戦後26回の総選挙の公示日において、大安3回、赤口2回、先勝6回、友引7回、先負4回、仏滅4回だ。大安優先とも言えないので、公示日についてそれほどこだわりはないかもしれない。
6月7日に筆者が出したのは、6月9日の党首討論でハプニング解散がないと睨んだ結果だ。多くの衆院議員がこのスケジュールで走り出すと、それは自己実現的になるだろう。
筆者は、本コラムで「青木の法則」に何度も言及し、総選挙の予測などにも使ってきた。菅政権の今の状況を青木率(=内閣支持率+自民党支持率)でみると、6月で70を越えており、すぐに危機的になるような水準ではない。
野党の国会追及は残念ながら不発だった。昨年の予防接種法では慎重にせよといいながら、今年に入るとワクチン接種が遅いなどと支離滅裂だった。ワクチン接種のスピードが上がり、感染状況が改善方向の中で、五輪の中止を声高に叫んでいたが、先日のG7でも東京オリパラへ各国から賛意がでてくると、腰砕けになっている。
菅政権は派手さはないが、ワクチン接種では着実に成果を上げている。
今年3月末には、米国でのワクチン接種が順調だったので、日本へは6月末までの大量の供給が出来そうだったのは客観的にわかる。実際、日本政府はファイザー社と水面下で交渉したのだろう。その仕上げは、4月15-18日の菅首相の訪米だ。ファイザー社との確約を菅首相自らが行った。
◆テレビのコメンテーターは…
後は、国内の打ち手の問題だった。それは、5月10日の本コラムでも紹介したが、4月26日に出された「超法規的措置」だ( https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82991 )。
昨年5月の補正予算でワクチン接種に1300億円をつけたが、そのときの積算根拠で1万箇所のマイナス70度の冷凍庫があったが、海外の供給の確保、国内の打ち手の確保で、1日100万人接種が可能になったと思った。
ところが、テレビのコメンテーターは情けないモノで、1日100万人というのは、7月末までのワクチン接種量から「逆算」して出された数字というデタラメな解説ばかりで呆れたものだ。
今日6月21日から、職域での集団接種も始まる。企業ベースで、接種券なしも従業員や取引先もワクチン接種が可能になる。これで、1日100万人ペースを越えるのは確実だ。
海外からの調達量が結果として多かったので、台湾やベトナムなどへの再輸出でワクチン外交もできるようになった。台湾へは、6月4日という天安門事件があった日に出せたのは対中国との関係で粋だった。
筆者は、5月31日付け本コラムで一定のワクチン接種を前提として、日本の新規感染者予測を行った。幸いにも、日本のワクチン接種スピードは、筆者の想定を超えて、欧米並みのスピードになっている。
そこで、筆者の予測を改めて見直しても、筆者の予測はほぼあたりだ。
ここで、かつて感染症の数理モデル研究者であった筆者から、最近の政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会についてコメントしておきたい。
◆優先することとは?
分科会の尾身茂会長ら専門家の有志は18日、提言を出している。その中身は、「無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低いので、望ましい」とか、言わずもがなだ。
分科会は、エビデンスのなしでいろいろなこと言いすぎた印象だ。初期段階で、数理モデルで何もしない場合の感染での死亡者予測を行ったが、そのやり方は不味かった。
筆者であれば、予測を当てることを優先する。パラメータを広く取り一定幅で説明し予測を当てて、政府内で信頼を得る必要があったが、それに失敗したと思う。
政治の中で、専門家に求められているのは、将来の予測ができることだ。未知の現象で先が読めない中、専門家に頼るのは先を読むことなので、予測を外したり結果を後講釈するだけなら専門家は不要といわれてしまう。
しかも、途中から政府内で話さないで、政府外の雑誌などで話すようになったらしいが、それでは有益な情報がますます利用されない悪循環になってしまったのだろう。
さて、ワクチン接種とともに、感染者数も落ち着くと思われる。少なくとも、感染者数の減少はなくても、重症者、死者数は減少するので、医療逼迫という最悪にはならないだろう。
ここで、菅政権の内閣支持率が新型コロナの新規感染者数にきれいに連動していることを指摘しておきたい。
◆予測してみると…
新規感染者数と菅政権内閣支持率は、相関係数▲0.85と高い(逆)相関がある。つまり、新規感染者数を減らすと内閣支持率が高まり、増えると内閣支持率が低くなるわけだ。
さて、ここで、9月末のコロナの感染状況を予測してみよう。五輪開催時の7月末ごろには今と同程度が今より感染が少ないのは、既に予想したとおりである。しかし、その2ヶ月後の9月末となると、予測は難しい。夏なので、大きな波が来る可能性は少ないものの、ないとは言い切れない。
しかし、ワクチン接種状況はかなり予測できる。6月7日の本コラムで、ワクチン接種の予測を2通り出したが、今のペースはそれらを上回っている。9月末になると、総ワクチン接種回数(人口100人あたり)は、今の英米並、仏独伊を越えていると思われる。
となると、仮に次の波がみてもかき消される可能性が高いだろう。となると、内閣支 持率は高まっているかもしれない。
これは、菅政権にとって総選挙のかなりいい材料だ。
それでは、死角はないかといえば、やはりオリパラで、感染者が続出するケースだ。そうなると、オリパラが成功とは言えなくなってしまう。海外からの選手や関係者、マスコミ関係者について、万全の水際措置をとって、天命にまかすのだろう。


元稿:講談社 現代ビジネス 主要ニュース 政治 【政局・担当:高橋洋一】 2021年06月21日 06:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。