【決別 金権政治】:被買収者35人「起訴相当」 現職議員は静観の構え
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:被買収者35人「起訴相当」 現職議員は静観の構え
2019年参院選広島選挙区の大規模買収事件を巡って28日に公表された東京第6検察審査会(検審)の議決で、河井克行元法相たちから現金を受け取りながら公選法違反(被買収)の罪で不起訴処分だった100人のうち、35人が「起訴相当」となった。広島県内の地方政治家40人では県議や市町議たち30人が該当し、「不起訴不当」の6人を含めた計36人が検察の再捜査を受ける事態となる。現時点で辞職の意向を示す現職はおらず、検察の判断を待つ構え。ただ、起訴が現実味を帯び、「失職」と「法廷闘争」の間で揺れ始めた。
■河井夫妻事件、検察審査会が公開した議決全文(原本コピー)
■【一覧】「起訴相当」議決の政治家
▽起訴に現実味、動揺も 一部は法廷闘争示唆
午前11時前。数十人に起訴相当との一報が流れると、県議会棟は騒然となった。報道各社が続々と集まり、会合から出てきた「起訴相当」の県議2人にカメラやマイクを向けた。
広島県議会棟で報道各社の取材に答える奥原県議
「重いよ」。地方議員で最多の200万円を受け取った奥原信也県議(呉市)は表情を曇らせた。「ある程度予想していた」と明かし、進退判断は「まだ」と語った。砂原克規県議(広島市西区)は「これで終わりじゃないから」と、言葉少なに議会棟を去った。
「起訴相当」は30人で、前市長2人(1人は受領時に県議)▽県議10人▽広島市議13人▽呉市議、尾道市議、元廿日市市議、元江田島市議、安芸太田町議各1人。起訴されて罰金刑以上が確定すれば公民権停止となり、現職は失職する。
■反発や悔恨…
高山博州県議(尾道市)は「司法の判断で略式命令などで失職となっても、受け止める」、矢立孝彦・安芸太田町議は「起訴されても受け入れるしかない」と話す。一方、谷口修・広島市議(安佐南区)は「起訴は受け入れられない。裁判で争うことも考えている」と法廷闘争の可能性を示唆。木山徳和・広島市議(中区)は「もし起訴されたら同僚議員と足並みをそろえる」との姿勢だ。
現金を受け取った首長3人はいずれも辞職し、うち2人が「起訴相当」となった。受領額150万円を検審で「高額」と指摘された天満祥典・前三原市長は「市長を辞めて社会的責任を取った。起訴相当とは思わなかった」。県議時代に2回計60万円を受け取った児玉浩・前安芸高田市長は「悔やんでも悔やみきれない」と神妙だった。
検審は6人について、大規模買収事件後に受領事実を認めて議員辞職した点などを「責任ある行動を取った」としつつ、「不起訴不当」で検察に再捜査を求めた。「起訴相当」と同様に、起訴の可能性を残す。
■「済んだこと」
繁政秀子・元府中町議は「辞めて、お金も返して責任を取り、済んだことと思っていた。(起訴された場合の対応は)全然考えていない」と戸惑う。小坂真治・前安芸太田町長は「検察に起訴されても受け入れるしかない。大規模買収事件については、もう終わってほしい気持ちの方が強い」と明かした。
現金を受領直後に河井氏側へ返した行為を検審から「適切」と判断された4人は「不起訴相当」だった。山下智之県議(廿日市市)は「線引きが難しく、議員はまとめて不起訴不当と思っていたので、不起訴相当に驚いた。ようやく前を向いて議員活動をできる」とほっとした様子だった。
沖井純県議(江田島市)は「自分の中では一つの区切り」、窪田泰久県議(南区)は「支援者への説明を時間をかけてする」、仁井田和之・元廿日市市議は「もう区切りがついたことだ」とそれぞれ語った。
◇広島知事「判断重い」 県・市議会議長、再調査は否定
大規模買収事件を巡る検察審査会の議決では、現金を受け取った広島県議10人と広島市議13人が「起訴相当」となった。県、市のトップたちは28日、議決を重く受け止めつつ、東京地検の再捜査を見守る姿勢を示した。
23人は起訴されて罰金刑以上が確定すれば、公民権停止で失職する。県議会、市議会で多くの欠員が発生し、時期や定数によって補選となる可能性がある。
湯崎英彦知事は県庁で「検審の判断は重い。検察の処分の推移を見守る」と述べた。県政界への影響では「信頼が得られるよう、全員で努力していかなければいけない」と語った。
県議会の中本隆志議長は県議会棟で、今後の対応について「再捜査の判断を見極める」と繰り返した。条例に基づき、公正を疑われるような金品の授受を調べる政治倫理審査会を再び開く考えはないとした。
松井一実市長は市役所で「現金を受け取った人たちの事情を個別に分析した結果だろう」と受け止めた。市議会の佐々木寿吉議長は市議会棟で「市民から再発防止を求められており、議会としても起きないようにする必要がある」とした上で、13人から再び事情を聴く考えは否定した。(河野揚、久保田剛、新山創)
■決別 金権政治
2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)
元稿:中國新聞社 主要ニュース コラム・連載・特集 【決別 金権政治】 2022年01月28日 23:18:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。