【大阪高裁】:旧優生保護法下の強制不妊手術、国に初の賠償命令
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大阪高裁】:旧優生保護法下の強制不妊手術、国に初の賠償命令
旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強いられたのは憲法違反として、聴覚障害のある大阪府の70~80代夫婦と、近畿在住で知的障害のある70代女性が国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(太田晃詳裁判長)は22日、請求を認め、賠償を命じた。
旧優生保護法下の強制不妊手術を巡る訴訟の判決で、「請求認容」と書かれた紙を掲げる原告側弁護士ら(共同)
全国9地裁・支部に起こされた訴訟で初の賠償命令。原告側が「戦後最大の人権侵害」と主張する被害の救済の在り方が改めて問われそうだ。
一審大阪地裁判決は旧法を違憲と判断していた。控訴審では旧法の違憲性に争いはなく、手術を受けた時から提訴までに損害賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」を適用するかどうかが焦点だった。
原告の夫婦は妻が74年に、70代女性は65年ごろに手術を強いられたとして提訴。2020年11月の大阪地裁判決は手術時を起算点として除斥期間を適用し、請求権は消滅したと認定した。
一方で旧法の立法目的を「極めて非人道的、差別的だ」と指摘。「子を産み育てる意思決定の自由を侵害した」として、幸福追求権(憲法13条)や法の下の平等(同14条)に違反すると認めた。
原告側は、手術時に違法性を理解して救済を求める訴訟を起こすのは困難だったとして、手術時を起算点とするべきではなく、除斥期間を適用しないよう反論していた。(共同)
◆【解説】優生保護法の特徴(三成美保)
優生保護法の前身は、国民優生法である。優生保護法は、1996年に母体保護法に改正された。母体保護法は、優生保護法から「優生条項」を削除した内容となっている。
○「第1章 総則」は、1948~1996年まで一貫して変更はない。遺伝性の精神疾患等を排除しようとする「優生思想」がきわめて顕著にでた法律である。
○「癩疾患」(現在は「ハンセン病」という)は、戦前は法的根拠なく断種されていたため、戦後は法的根拠をもうけるとして、優生保護法に条文が設けられたものである。当時、すでにハンセン病には特効薬が開発されており、感染力も非常に低いことから、隔離や断種を行う必要はなかった。
○「人工妊娠中絶」の要件は、変化した。1949年に「経済的理由」が追加され、1952年に審査制度が廃止され、中絶は事実上妊婦一人の希望があれば行うことができるようになった。しかし、「配偶者の同意」を要件としている点、一定要件に適合しなければ中絶ができないと定めているため、「女性の自己決定権」を認めた法律とは言えない。
○1996年に母体保護法に改正されたが、優生保護法から優生条項を削除するにとどまり、「女性の自己決定権」を認めた法にはならなかった。1990年代には、多くの国で「女性の自己決定権」を認める法(妊娠3ヶ月以内については、いっさいの条件なしに女性の申し出に基づいて中絶を可能とする法)に改正されていた。日本国憲法13条が保障する「(女性の)自己決定権」の実現は、21世紀に持ち越されたと言えよう。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・裁判・旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強いられたのは憲法違反として訴訟】 2022年02月22日 15:54:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。