路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【政界地獄耳】:野党の限界は「友情と信頼」なのか/01.25

2022-02-01 10:17:00 | 【政党・自民・立憲・維新の会・公明・国民民主・共産・社民・れいわ・地域政党他】

【政界地獄耳】:野党の限界は「友情と信頼」なのか/01.25

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳】:野党の限界は「友情と信頼」なのか/01.25 

 ★21日、BSの番組で自民党選対委員長・遠藤利明、立憲民主党代表代行・逢坂誠二、国民民主党代表代行・前原誠司が出演した討論番組で逢坂は立憲と国民は元々一緒だった。今もそんなに違いはない兄弟政党といい、前原は今、同党代表・玉木雄一郎が進める都知事・小池百合子が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」と国民民主の合流計画に対して「合流は重い。引っ付くかどうかの議論だけが取り上げられるのは良くない」と慎重な姿勢を見せた。この合流は希望の党の経緯を見れば当然の流れのように受け止められる。

 ★前原は元来選挙区が京都ということもあり日本維新の会との合流を念頭に置いており、維新の代表・松井一郎も「改革をするならしっかり連携したい」としていただけに松井が都ファとの連携の動きを批判したことについて「そのような反応になるのも仕方がない」と擁護の姿勢を見せた。一方、遠藤は「既に野党も8割ぐらいは法律に賛成している。ただ若干違う時、今違うのか、将来も含めて違うのか、例えば賃上げの問題を扱う時、連合の皆さんと一緒にやろうという場合がある」と柔軟な姿勢を見せた。

 ★元々は宏池会として一緒だった岸田派、麻生派、谷垣グループによる大宏池会構想について遠藤は「大きければいいものではない。元々多様な意見もある。確かに源流は一緒だったのだから、私は資本参加のない友情と信頼に基づいたホールディングス化と言っている。これを1つにまとめるとかえってぎくしゃくするのではないか」と解説した。この話を逢坂、前原はどう聞いたのだろうか。目的や目標のために友情と信頼のホールディングス化のできない野党の限界を見せつけられた瞬間だった。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2022年01月25日  07:21:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:買収で起訴相当 市民の常識突き付けた

2022-02-01 07:49:55 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説①】:買収で起訴相当 市民の常識突き付けた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:買収で起訴相当 市民の常識突き付けた 

 検察審査会は河井克行元法相による参院選広島選挙区での買収事件を巡り、検察が不起訴にした県議らを「起訴相当」と議決、公表した。検察の判断に市民の「常識」を突き付けたと言える。
 
 二〇一九年の参院選広島選挙区で飛び交った金銭は総額約二千八百七十万円にものぼる。受け取った自治体の首長や議員、陣営スタッフらは計百人。東京地検は「受領者はいずれも受動的だった。一定の者を選別して起訴するのは困難だ」と全員を不起訴とした。
 
 だが、これは理解できない理屈だった。公職選挙法では現金を受け取った側も罪に問うと規定しており、過去の事例でも処罰の対象としている。むしろ一律不起訴の方が異例の判断である。
 
 民主主義の基盤である選挙での不正は、受領側でも悪質性は低いと決め付けることはできない。二百万円や百五十万円という多額のカネを受け取った公職者もいる。司法取引の対象事件ではないから不起訴前提の捜査もありえないはずである。
 
 検察審査会は、百人のうち三十五人を「起訴相当」、四十六人を「不起訴不当」、十九人を「不起訴相当」と議決した。「公職者が率先して順守しなければならない法律で、県議らの行為は悪質で責任は重大」との考えからだ。
 
 法律や常識に照らし、当然の帰結だと考える。起訴相当としたのは十万円以上を受領しながら辞職しなかった者らだ。これらを見逃せば「重大な違法行為を見失わせる恐れがある」とする検審判断に賛同する。至極まっとうだ。
 
 四十人の首長・議員のうちカネを返還せず、辞職もしなかった者は二十八人。公選法では罰金刑以上が確定すれば、公民権が停止して失職する定めだ。だが、不起訴なら失職を免れるわけで、やはり著しく不公平であろう。
 
 問題は、買収が一九年春から夏にかけてで買収罪の時効である三年が迫ることだ。検察は迅速に再捜査する必要がある。「検察の正義」と対立する「市民の正義」が掲げられた。検察がまたも市民の期待を裏切る判断をするなら、検察批判の火が付くことになろう。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年02月01日  07:49:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:クーデター1年 ミャンマー看過するな

2022-02-01 07:49:50 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】
【社説②】:クーデター1年 ミャンマー看過するな
 
 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:クーデター1年 ミャンマー看過するな
 
 ミャンマー国軍が、選挙で選ばれた民主政権を倒したクーデターから一日で、一年。国軍によってこれまでに民主派勢力の国民ら約千五百人が殺害されたという。しかし、米国・欧州と、中国・ロシアの対立を軸に、国連も東南アジア諸国連合(ASEAN)も国軍の無謀をただす有効な手だてを講じられないままで、理不尽な暴政の長期化も懸念されている。
 
 ASEANは、ミャンマー国軍トップも交えた昨年四月の首脳会議で▽暴力の即時停止▽(拘束中のアウンサンスーチー氏ら)すべての関係者との面会−など、五項目で合意した。しかし、履行されないため、十月の首脳会議には国軍トップを招かなかった。その後も、長年の原則「内政不干渉」を棚上げし、各種会議で「ミャンマーの排除」を打ち出していた。
 
 しかし、今年一月からASEANの議長国(輪番制)になったカンボジアのフン・セン首相は、親国軍とされる中国に近く、ASEAN会議への「ミャンマー復帰」が持論だ。議長就任直後に、独断でミャンマーを訪問し、国軍トップと面会した。これにインドネシアやマレーシアなどが反発し、仲介能力が機能不全に陥っている。
 
 クーデター後、この問題に関して日本の影が薄いのも気がかりだ。第二次大戦中に占領した経緯や戦後補償、政府開発援助(ODA)などを通じて関係が深く、「国軍と独自のパイプがある」として米欧の経済制裁路線とも一線を画してきた。しかし、国軍を動かした形跡もなく、影響力の乏しさを露呈しただけだ。
 
 昨年十一月には、政権を追われた民主派勢力による挙国一致政府が「承認」を求める書簡を送ってきたが、政府は対応を明らかにしておらず、独自の仲介戦略も見えてこない。むしろ、日本の防衛大学校が国軍の留学生を受け入れるなど融和的な態度さえうかがえる。
 
 ミャンマー情勢は、国軍への強硬姿勢を取る米欧と、国軍に近い中国とロシア、すなわち、民主主義と権威主義のせめぎ合いの中で、膠着(こうちゃく)状態に陥っているともいえる。
 
 国連安保理が足並みをそろえた対応ができていないのは、ウクライナ情勢や北朝鮮のミサイル問題と同様だ。民主主義世界にとっては、決して看過できる問題でも、ミャンマー一国の問題でもない。連帯して、対応を練り上げたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年02月01日  07:48:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:岡山県に転勤を命じられた会社員の夫(池部良)が妻(淡島千景…

2022-02-01 07:49:45 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【筆洗】:岡山県に転勤を命じられた会社員の夫(池部良)が妻(淡島千景…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:岡山県に転勤を命じられた会社員の夫(池部良)が妻(淡島千景…

 岡山県に転勤を命じられた会社員の夫(池部良)が妻(淡島千景)と相談する。「山ン中だぜ」「いいじゃないの。東京でクサクサしているよかよっぽどいいわ」。小津安二郎監督の映画「早春」(一九五六年)にそんな場面がある

 ▼夫に浮気相手(岸恵子)ができ、夫婦関係はのっぴきならない状態になっている。最終的に夫婦は岡山へ行くのだが、ラストシーンで夫が通り過ぎる列車をながめながらつぶやくセリフが印象に残る。「あれに乗ると、明日の朝は東京に着くんだなあ」。東京への未練がまだ残っている

 ▼「早春」の時代に比べれば今の人は東京を離れることにさほどの未練もためらいもないのだろう。総務省が発表した二〇二一年の人口移動報告によると東京二十三区の転出者数は転入者数を上回ったそうだ

 ▼比較できる一四年以降で初めての転出超過という。コロナ禍の影響が大きいらしい。東京の過密さを嫌い、自然豊かな地方へ目を向けるのはよく分かる

 ▼テレワークの普及によって東京に住まなくとも今の仕事を続けられるとなれば「東京よさようなら」を選択する人も増えるのだろう

 ▼行き過ぎた東京一極集中の緩和や地方再生は歓迎すべき方向とはいえ、この流れは本物か。転出先を見れば神奈川、埼玉、千葉が中心である。東京二十三区を離れても「東京圏」には未練がなお断ち切れないのかもしれぬ。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2022年02月01日  07:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:原発回帰を考える 割に合わない電源だ

2022-02-01 07:49:35 | 【電力需要・供給、停電・エネルギー政策・原発再稼働・核ゴミの中間最終貯蔵施設他

【社説①】:原発回帰を考える 割に合わない電源だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:原発回帰を考える 割に合わない電源だ 

 欧州や日本で原発回帰の動きが目立つ。欧州連合(EU)は「脱炭素」の視点から、新年早々、原子力を「クリーンなエネルギー」に含めるとの方針を示したが、福島の事故や核のごみの危険性などを、過小評価してはならない。
 
 EUは、温暖化対策に貢献できると認めた持続可能な経済活動のリスト「EUタクソノミー」を設けている。「タクソノミー」とは「分類」という意味で、「グリーンリスト」とも呼ばれている。
 
 脱炭素と経済成長の両立を目指す「欧州グリーンディール」を掲げるEU。産業構造の大転換には二〇三〇年までに、およそ一兆ユーロ(百二十兆円)の資金が必要になるという。
 
 温暖化対策を重視するESG(環境・社会・統治)投資が世界的に広がる中で、基準を明確にして、資金を呼び込みやすくする狙いがタクソノミーにはある。その投資リストの中に、発電時には温室効果ガスを排出しない“クリーン”なエネルギーとして、原子力を追加しようというのである。
 
 あくまでEUの行政機関である欧州委員会の判断であり、加盟国や欧州議会に承認されるかどうかは不透明だ。
 
 福島第一原発の事故を受け、今年末までに原発全廃を決めたドイツのほか、スペインやオーストリアは反発を強めている。一方、電力の七割を原発に依存し、昨年十一月に「脱炭素のために原発の建設を再開する」とマクロン大統領が宣言したフランスを先頭に、新規導入を目指すポーランドやチェコからの要望が強かった。 

 ◆「隠れみの」という批判

 仮に議会などの承認を得てグリーンリストに載ったとしても、思惑通りに投資が集まるかどうかは定かでない。原発は発電時にこそ温室効果ガスを出さないが、それさえ出なければいいのかと言えば、そうではない。運転を続ければ、危険な放射性廃棄物を増やし続けることになる。脱炭素を原発復権の「隠れみの」に使う、いわゆる「グリーンウォッシュ」だという批判も強い。福島の事故のあと、安全対策費がかさみ、建設費が高騰したのもネックになるだろう。
 
 フランス北西部のフラマンビルで〇七年に建設が始まった最新鋭の「欧州加圧水型炉(EPR)」は、工事のトラブルが相次いで、一二年の稼働予定がいまだに完成していない。建設費は当初の四倍以上に膨らんだ。
 
 国際再生可能エネルギー機関によると、一昨年の世界の再エネ導入量は、前年比五割近く伸びている。風力や太陽光に比べ、原子力は有望な投資先とは言い難い。
 
 日本は、どうか。昨年十月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画は、パリ協定が求める「五〇年温室効果ガス排出実質ゼロ」を見据え、三〇年度時点の電源構成に占める再エネの割合を、四割近くに引き上げるとするものの、原子力も約二割、維持していくという方向だ。建設中を含む現有三十六基の原発を九割方稼働させた上、運転寿命を大幅に延長しなければ不可能な、つまりは新増設ありきの計画なのである。
 
 岸田文雄首相は十七日の施政方針演説で「五〇年実質ゼロ」を実現するためのメニューの中に「革新原子力」の活用を挙げた。出力三十万キロワット以下の「小型モジュール炉(SMR)」のことである。
 
 一般の軽水炉と比べて冷却が容易な構造になっており、安全性が高いとされている。しかし一度に大量の電気を送り出すことができるのが原発のメリットだ。小型化すれば発電コストは割高になる。
 
 経済産業省の試算によると、三〇年時点の原発による発電コストは一キロワット時あたり一一・七円以上と、事業用太陽光の八・二〜一一・八円を上回る見通しだ。原発の電気は既に、安くない。 

 ◆再エネ資源の豊かな国

 「再エネは天候に左右されて不安定」と言われるが、電力融通のための送電網の強化が図られ、蓄電池の性能が格段に向上する中で「弱点」は克服されつつある。
 一方、原発が絶対に安定的な電源かと言えば、そうでもない。
 
 例えば福井県によると、同県内で稼働する原発八基の二〇年度の総発電量は、設備トラブルによる長期停止などのため、前年度比43%の減だった。
 
 ノルウェーのエネルギー開発大手が、日本海で出力計四百万キロワットの洋上風力発電計画を進める時代。このように再エネの潜在力が豊かな日本で、原発にこだわる理由はない。世界でも日本でも、原発回帰は割に合わない。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月31日  07:40:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:子どもが好きで、電車の中で赤ちゃんを見かけると、笑いかけ、…

2022-02-01 07:49:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【筆洗】:子どもが好きで、電車の中で赤ちゃんを見かけると、笑いかけ、…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:子どもが好きで、電車の中で赤ちゃんを見かけると、笑いかけ、…

 子どもが好きで、電車の中で赤ちゃんを見かけると、笑いかけ、あやさないでいられなかったそうだ。四月、新一年生の姿がテレビに映るのを見れば涙が出そうになる

 ▼同じぐらいに本が好きだった。「子どもと本。ふたつのことばを並べて書いただけでじんわりと幸せな気持ちになります」(『子どもと本』)と書いていた。児童文学者で東京子ども図書館名誉理事長の松岡享子さんが亡くなった。八十六歳

 ▼「くまのパディントン」シリーズや「うさこちゃん」シリーズの翻訳はもちろん、まこちゃんのおふろに空想のペンギンやクジラがやって来る「おふろだいすき」(福音館書店)を思い出す方もいるか

 ▼子どもと本。二つの好きなものをつなぐ役割を喜んで引き受けていたのだろう。一九六七年、自宅の六畳間を改造して家庭文庫「松の実文庫」を開いた。狭い部屋に大勢の子どもが本を求めて集まった。「日向(ひなた)の匂い」。家にこもる子どもの匂いをいとおしそうにそう書いた

 ▼その後の東京子ども図書館での読み聞かせや全国の児童図書館の発展に向けた取り組み。松岡さんのおかげで、どれだけ多くの子どもが本好きになったかを想像する

 ▼読み聞かせの「耳からの読書」は、将来の「目からの読書」を育てる。そして、読み聞かせは親と子の心をもつなぐ。そう教えてくれた方の旅立ちである。「日向の匂い」を残して。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2022年01月31日  07:08:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:週のはじめに考える イマジンとオミクロン

2022-02-01 07:49:20 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①】:週のはじめに考える イマジンとオミクロン

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:週のはじめに考える イマジンとオミクロン 

 年始には多くの人が神社仏閣に詣で、さまざま願を掛けたと思いますが、この少し前のジョークも願いごとにまつわるものです。
 
 菅義偉首相が政権運営に頭を悩ませていると、神が現れた。「政権をとったのに元気がないな。君の願いをかなえてあげよう」「では、新型コロナを終息させてください」「それは無理だ。別の願いにしてくれ」「では、次の総選挙で圧勝させてください」「…コロナの方をやってみよう」(名越健郎著『ジョークで読む世界ウラ事情』)
 
 現実の菅政権は総選挙まで持ちませんでしたが、その終焉(しゅうえん)が引換券になったように、昨秋から新規感染者が急減したので、本当に神が「コロナの方をやって」くれたのかと思ったほどでした。

 ◆想像したくないこと

 閑話休題−。神に、どこまで願っていいものか、というのは悩ましいところです。身の回りの平穏だけでなく、いっそ「世界が平和でありますように」といきたいのですが、さすがに欲張りすぎか、と思ったり。神がどう思(おぼ)し召すかはともかく、人間の世界では、ただのきれいごとだと一蹴される気がします。例えば、友人に「初詣で何を願ったか」と聞かれて「世界平和」と答えたら、十中八九、ジョークだと思われるでしょう。
 
 そういう意味では、あのジョン・レノンの『イマジン』は、きれいごと満載の曲かもしれません。「世界平和」のほか「人類みな兄弟」「世界は一つ」みたいなメッセージだらけ。中で<想像してみよう>と呼び掛けていることの一つが、<国がない>、そして、そのために<殺したり死んだりする理由がない世界です。
 
 今、それと正反対のことが、また勃発しかけています。ウクライナ対ロシア、それぞれの友邦が絡んでの緊張状態。想像したくないのですが、万が一、戦端が開かれれば、人々が国と国の軋轢(あつれき)を理由に「殺したり死んだりする」ことになるのは間違いありません。世界が変異株という難敵に四苦八苦している時も時。この上、戦争など愚かしいにもほどがあります。
 
 思えば、このオミクロンという変異株が初確認されたのは、まだ二カ月前、南アフリカでのこと。猛烈な勢いで感染者が増え、欧州諸国は慌てて南アからの入国を止めましたが、奏功せず。米国へも広がり、やがて日本などアジアの国にまで。既にピークを越えた国もあるようですが、わが国は今、その猛威のただ中にあります。
 
 それ以前、先進国では、ワクチン接種などにより感染はある程度抑えられていました。新規感染者が急減し、一時は二桁までいった日本がいい例でしょう。しかし、新変異株の流入で瞬く間に元の木阿弥(もくあみ)、どころか、デルタ株をはるかに超える感染者増加ペースに医療体制がついていけていません。

 ◆「世界は一つ」でなくては

 オミクロンはあらためて、いかに「世界は一つ」かを示したと言えるでしょう。どれほど各国が水際対策を徹底したといっても、完璧な「鎖国」は無理。小さな隙間から、必ず侵入してくる。結局、時とともに世界はオミクロンに染まっていったのです。しかし、変異株は同時に「世界は一つ」ではない現実もあぶり出しています。
 
 ワクチン供給量をはじめ、対コロナの医療体制に関しては先進国と途上国、富裕な国と貧しい国の間に大きな格差があるからです。
 
 そうした防御の弱い地域では感染者が急増する。そして、感染爆発が起きたりすれば新たな変異株が生まれやすくなる、ということは世界保健機関(WHO)も警告しているところです。デルタ株もワクチンなどの防御が不十分で感染爆発が起きたインドで初めて確認された変異株でした。
 
 つまり、いくら富裕な先進国だけで感染が抑制されても、世界のどこかに、変異株の「揺りかご」となる弱い部分が残っているうちは、また新たな脅威にさらされる危険性が残るということです。しかも、感染力は高いが重症化はしにくいとされるオミクロンとは違い、感染力も毒性も強い変異株が生まれない保証はありません。

 ◆変異株のメッセージ

 結局は、貧富の格差を埋めて、真の「世界は一つ」を実現していくほかないのです。もし、きれいごとだと思うなら、『イマジン』でなく、オミクロンのメッセージと読み替えてはどうでしょう。
 
 さあ、想像してみよう。貧困や格差が解消されることで、富裕な側も「得」する世界を−。
 
 こう書くと、何とも打算的でいやらしい。それでも、願いや理想を、いつもきれいごととして神棚に上げ、一切近づこうとしないよりはましでしょう。何とも業腹なのですが、オミクロンに教わった気もしています。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月30日  07:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【筆洗】:<母という字を書いてごらんなさい/やさしいように見えてむず…

2022-02-01 07:49:15 | 【事件・未解決事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件他】

【筆洗】:<母という字を書いてごらんなさい/やさしいように見えてむず…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:<母という字を書いてごらんなさい/やさしいように見えてむず…

 <母という字を書いてごらんなさい/やさしいように見えてむずかしい字です/恰好(かっこう)のとれない字です>。サトウハチローの詩「母という字を書いてごらんなさい」(詩集「おかあさん」)を思い出している

 ▼「母」という字はなるほど難しい。<やせすぎたり 太りすぎたり ゆがんだり/泣きくずれたり……笑ってしまったり/お母さんにはないしょですが ほんとうです>。ほんのわずかなバランスや傾きの違いで同じ「母」の字の表情が大きく変わってくる

 ▼その「母」という字は「笑ってしまったり」ではなく、「泣きくずれたり」の方ではないのか。埼玉県ふじみ野市の民家に男が医師を人質に立てこもった事件である

 ▼医師は男に散弾銃で撃たれ、亡くなっている。男の母親がこの医師の患者で、事件前日に亡くなっている。母親の診療をめぐる男と医師のトラブルが事件の背景にあるとみられている

 ▼男は寝たきりの母親と二人暮らしだったという。母思いでもあったのだろう。大切な母親の死に曲がった了見が取りついてしまったのか

 ▼敵討ちかなにかのつもりかしらぬが、逆恨みから母親を担当していた医師を撃ち、世間を騒がせたとなれば母という字は決して喜ぶまい。息子の犯行に泣き叫んでいるだろう。男はそんなことさえ分からなかったか。地域の在宅医療を支えてきた、医師の命を奪った銃弾が悲しい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2022年01月30日  07:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:NHK字幕問題 経緯の検証を徹底的に

2022-02-01 07:48:55 | 【新聞社・報道・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌・世論調査】

【社説①】:NHK字幕問題 経緯の検証を徹底的に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:NHK字幕問題 経緯の検証を徹底的に 

 NHKが昨年十二月に放送した「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、事実と異なる字幕が付けられた。五輪反対デモが「金銭で動員されている」と誤解を与えかねない内容で徹底検証が欠かせない。
 
 問題となったのは、番組に出演した映画監督の島田角栄氏が男性を取材している場面。そこに「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕が付けられた。
 
 衝撃的な内容で議論を呼んだが、後にNHKが調べたところ、男性は「五輪と関係ないデモに参加し、金銭を受け取った」「五輪反対のデモに参加する意向がある」と話しただけだった。
 
 制作したNHK大阪放送局は「担当者の思い込み」と釈明し、前田晃伸会長も十三日に「不確かな事実を字幕にすることは、あってはならない」と謝罪した。
 
 NHK側は、十九日の経緯説明の中で「放送前に島田氏に確認した」と述べたが、今度は島田氏から「確認はなかった」と抗議があり、NHKは再度訂正する事態になった。お粗末すぎる。
 
 そもそも「金銭を伴う動員」というなら、しっかりした裏付けが必要だ。過去に別の番組で起きたやらせ疑惑を受けて作られたチェックシートは生かされなかったという。基本を怠った責任は重い。
 
 また、デモは市民の表現行為で自由社会では当然、尊重されるべきだ。なのに字幕では金銭を絡めて、デモに対する偏見を助長してもいる。この点も見逃せない。
 
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、番組制作過程などについて、NHKに対して文書で報告を求めるという。当然である。NHKも専務理事を責任者とする調査チームを設置するが、第三者を加えた経緯の徹底検証が必要ではないか。
 
 だが、根はもっと深い可能性があろう。昨年四月、NHKは聖火リレーのネット中継で沿道からの「五輪反対」の声を消したことがある。共同通信の翌五月の世論調査で「五輪中止」を求める声が約60%に上っていた。NHKの姿勢には国民の反対意見を隠す意図さえ感じられ、批判も起きた。
 
 組織を挙げての「五輪推進」の空気が、今回の問題につながっていないか。チェック不足と矮小(わいしょう)化せず、事実と異なる字幕を付けるに至った経緯に迫ってほしい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月29日  08:09:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ぎろんの森】:深いことを、やさしく

2022-02-01 07:48:45 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【ぎろんの森】:深いことを、やさしく

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森】:深いことを、やさしく 

 本紙は毎週日曜日に「週のはじめに考える」と題する社説を掲載しています。日々の社説とは異なる「ですます」調の長い社説です。
 
 前回二十三日付は「『過去』を支配させるな」でした。ナチス・ドイツが大虐殺を行ったポーランドのアウシュビッツ収容所の生還者の証言を題材に、歴史を改ざんする動きに警鐘を鳴らす内容です。
 
 見出しの「過去を支配させるな」は、作家ジョージ・オーウェルが「1984」に記した警句<過去を支配する者は、未来を支配する><現在を支配する者は、過去を支配する>にちなみます。
 
 読者の皆さんから早速「感銘した。特にオーウェルの言葉が印象深かった」「悪事を見つめて反省につなげようというオーウェルのことが分かりやすく書かれていた」などの反響がありました。
 
 「週のはじめに考える」の掲載を始めたのは、今から四十年以上前の一九七九(昭和五十四)年七月十五日、日曜日です=写真。当時の紙面は「読者とともに時事問題の本質を考えるものとし」「日常個々の事象から一歩離れ、時事を流れとしてとらえて、問題の背景、底流をさぐりたい」と説明しています。
 
 週に一度、日曜日に少し立ち止まって深く考え、本質に迫る。「ですます」調にしたのも、堅苦しくなりがちな内容を、一人でも多くの読者に読んでもらおうという、先人の工夫のひとつでしょう。
 
 作家の井上ひさしさんは生前「ぼくが好きなのは、東京新聞の日曜日の社説です。あまり軽薄にその時代時代の言葉を追い駆(か)ける必要はありませんけれども、やさしく書くということが一番大事だと思うのです。やさしく深いことがどれだけ書けるかということです」と話しています。
 
 深いことをやさしく書くということは、言うはやすく行うは難しで、私たちは日々、頭を悩ませています。さて、あすの「週のはじめに考える」はどんな内容に? 朝刊をぜひお読みください。 (と)

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろん森】  2022年01月29日  08:09:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:国会不召集判決 憲法の死文化を恐れる

2022-02-01 07:48:35 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①】:国会不召集判決 憲法の死文化を恐れる

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:国会不召集判決 憲法の死文化を恐れる 

 憲法に従い臨時国会の召集を求めたのに政府が無視したのは違憲だ−。元野党議員が起こした裁判で、広島高裁岡山支部は訴えを退けた。明白な政府の違憲行為を見逃しては、憲法が死文化する。
 
 憲法五三条は臨時国会について「(衆参)いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と定める。
 
 もし、内閣がこの規定を無視したらどうなるのだろう。実は今の憲法制定当時も、この問題が帝国議会で取り上げられた。憲法担当大臣の金森徳次郎は「政治道徳の模範となる人々だから、制裁規定を置く必要はないのでは」という趣旨の答弁をした。
 
 憲法に基づく臨時国会の召集要求が無視される事態はありえないと…。そもそも義務規定であるから、政治的利害や政府の裁量が働きうる問題でもないはずだ。
 
 だが、二〇一七年、野党が臨時国会の召集を要求したのに、当時の安倍晋三政権は九十八日間も応じなかった。森友・加計学園の問題を巡り、野党が真相解明を求めていた時期でもある。やっと政府が臨時国会召集を決めたものの、冒頭で解散してしまった。
 
 岡山支部判決は「内閣は合理的期間内に召集する法的義務があり、違憲と評価する余地がある」とした一審を支持。その上で「内閣は個々の議員に対しては召集決定義務や賠償義務を負わない」との理由で原告の求めを退けた。
 
 だが、この判断には大いに異議を唱えたい。憲法制定時のやりとりからも国会不召集は明白な政府の違憲行為だとわかるし、今回のような高裁判決が連続すれば、逆に「臨時国会を開かなくても憲法違反にならない」という新たな規範が生じるからである。
 
 これでは条文の死文化になるし、立憲主義も危うくなる。小さな窓からモノを見て、大きな政府の違憲行為を見逃しては、司法の責任放棄にも等しい。
 
 
 国民は議員を選ぶ。議員は国民の代表として、国会=写真=で質問をし、行政監視をする−。当たり前の民主主義の光景が基盤から壊れつつある現状を憂慮する。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月28日  07:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:「黒い雨」新指針 原爆被害者分断するな

2022-02-01 07:48:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説②】:「黒い雨」新指針 原爆被害者分断するな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:「黒い雨」新指針 原爆被害者分断するな 

 国が示した被爆者認定の新指針に基づく予算案が、国会で審議されている。新指針は認定の枠を広げたものの、がんなど十一疾病の発症を要件として残し、昨夏の広島高裁判決より後退している。長崎にも適用されない。同じ原爆被害者でありながら、救済のあり方で分断が生じないか。引き続き、新指針の問題点もしっかり議論してほしい。
 
 高裁判決は、広島への原爆投下時に、援護区域外にいた原告八十四人全員を被爆者と認めた。「病気にかかったかを問わず、黒い雨に遭っていれば被爆者だ」という内容で、国は上告を断念し、原告勝訴が確定した。
 
 現行の指針は、国が線引きした援護区域の外の人は被爆者と認定してこなかった。しかし、新指針では、判決を受けて八十四人と同様に、線引きにこだわらず、区域外にいても「黒い雨に遭ったことが否定できない場合」を含めた。
 
 これで、認定が大幅に広がった。国は、最大で一万一千人を救済できる七十八億円の予算案を組んだ。半面、十一疾病の発症については「(認定要件から外した判決は)これまでの被爆者援護制度の考え方と相いれない」として、新指針でも維持した。
 
 広島県と広島市は、疾病条項が新指針で撤廃されなかったことに「判決が否定したのに」と反発した。だが、「四月からの制度運用が難しくなる」(湯崎英彦知事)、「賛成しないが、反対しない」(松井一実市長)と苦渋をにじませながら受け入れた。
 
 司法の判断を反映させない国の手法には到底納得できないが、高齢化が進む被爆者の援護は早期に始めねばならない、という現実に、やむなく妥協したということだろう。とはいえ、原告団や被爆者団体から「地理的線引きに代わる新たな線引きだ」などと激しい批判がわき起こった。判決で喜び、新指針で泣いた人々は少なくないとみられる。
 
 「黒い雨」に遭ったことを争点とする訴訟がない長崎でも、被爆者認定の拡大を求める訴訟は係争中。すでに原告敗訴が確定した訴訟もある。長崎県と長崎市の調査で、黒い雨などを浴びたという証言が二千以上あるという。この数字は重い。長崎は新指針の対象外だが、広島出身の岸田文雄首相は「被爆地の分断だ」と訴える長崎の声を真摯(しんし)に聞かねばならない。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月28日  07:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:タイヤ脱落事故 増し締め、点検怠るな

2022-02-01 07:48:16 | 【不慮の事故・自動車事故・予期せず、意図せず、発生する惨事、火災他】

【社説①】:タイヤ脱落事故 増し締め、点検怠るな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:タイヤ脱落事故 増し締め、点検怠るな 

 過去の反省を生かし、防げる事故ではなかったか。走行中の大型ダンプからタイヤが外れ、人や車を直撃し負傷させる事故が今月、群馬県の国道と岐阜県の中央自動車道で起きた。群馬の事故では勢いよく転がる二本のタイヤが住民により撮影された。
 
 タイヤの脱落は、二〇〇二年に母子三人を死傷させた三菱自動車製トレーラーの事故で社会問題になった。その後も、〇八年に静岡県の東名高速道路で八人が死傷するなど、後を絶たない。
 
 国土交通省のまとめによると、大型車によるタイヤ脱落事故はこの十年、ほぼ右肩上がりで増え、二〇年度は過去最多の百三十一件に上った。一一年度(十一件)と比べ、十倍以上に激増したことを受け、斉藤鉄夫国交相は昨年十一月、専門的な観点から事故の原因を調査分析すると表明したばかりだ。
 
 これまでの分析からは、群馬と岐阜の事故にも共通する明確な傾向が浮かび上がる。一つは脱落が左後輪に集中していることだ。旋回の半径が小さい左折時によじれるような力がかかることなどにより、左後輪はタイヤを留めるボルト、ナットの劣化や緩みが進みやすいと考えられている。もう一点、事故の大半は冬場に起きていることだ。融雪剤により部品の腐食が進んだり、業界全体の人手不足や冬用タイヤへの交換作業が集中することなどによる人為的なミスも指摘されている。
 
 欠陥製品を出荷した三菱自の例は論外として、多くは適切な整備や点検をしていれば防げた可能性がある。国交省は昨年来、ねじの緩み具合が見た目で分かるよう、ナットへのマーキングや、インジケーターと呼ばれる器具の装着を推奨。新品から四年を経過したナットやボルトは特に重点的に点検することも新たに求めている。
 
 運送事業者や整備担当者は、重さ百キロにもなるタイヤが人の命を奪う「凶器」と化す恐怖を常に念頭に置かねばなるまい。一般のドライバーを含めて、必要な工具は車に搭載し、タイヤ交換後、五十〜百キロ走行後にナットを締め直す「増し締め」や、日々の点検を怠らないようにしたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月27日  07:35:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:春闘スタート 賃金を上昇させてこそ

2022-02-01 07:48:12 | 【雇用・正規、非正規・パート・賃上げ・失業率・求人・労働組合・労働貴族の連合】

【社説②】:春闘スタート 賃金を上昇させてこそ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:春闘スタート 賃金を上昇させてこそ 

 二〇二二年の春闘が始まった。今回の最大のテーマは賃上げであることは指摘するまでもない。コロナ禍が続き、状況は厳しいが、賃金上昇の流れを確実にするための実りある交渉を求めたい。
 
 春闘の事実上の主役である連合の芳野友子会長と経団連の十倉雅和会長は二十六日の会談で賃上げの重要性で一致した。この席で十倉会長は好業績企業のベースアップ(ベア)も視野に入れ「企業の責務として賃金引き上げと総合的な処遇改善に取り組むことが極めて重要だ」と述べた。 
 
 基本給自体を底上げするベアに経営側が前向きな姿勢を示したことで、定期昇給も含めた賃上げの勢いは強さを増し始めたといえる。岸田政権が3%超の賃上げを経済界に求めていることも経営側の姿勢を後押ししたに違いない。
 
 昨年九月に財務省が公表した二〇年度の法人企業統計によると、貸借対照表に利益剰余金として計上される企業の内部留保は、四百八十四兆円超と九年連続で過去最高を更新した。業績面で利益を伸ばす企業も増えており、賃上げの原資は十分にあるはずだ。
 
 心配なのは物価の上昇だ。ガソリンや公共料金だけでなく生活に直結した商品全体が値上がりしている。賃上げ率が物価上昇率を下回れば暮らしは苦しさを増し労働者にとって春闘は敗北となる。
 
 安倍政権以降、国が賃上げを促し、経営側が時に渋々応じるという異例の事態が断続的に起きてきた。今春闘こそ、組合側は例年にない積極姿勢で交渉に臨み大幅な賃上げを勝ち取ってほしい。
 
 会談では中小企業が不利にならないよう取引価格の適正化を図ることでも労使が一致した。この流れを受け、中小企業の社員や非正規労働者全体の待遇改善を一層図る努力も必要だ。
 
 芳野会長は中小企業で組織する組合の出身だ。格差を是正するには立場の弱い働き手への手厚い配慮が欠かせない。連合は傘下団体だけでなく、すべての労働者の利益を意識して交渉すべきだ。
 
 格差の拡大は雇用の調整弁として非正規労働者が使われたことが大きく作用している。目先の利益にとらわれ雇用の質を落としてきた経営者には猛省を促したい。
 
 今年の春闘が、正社員として働き適正な賃金を得る当たり前の社会を復活させる起点となることを期待したい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月27日  07:35:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:値上げ相次ぐ 暮らしの防衛最優先に

2022-02-01 07:47:55 | 【経済対策・物価対策、原油など資源価格の高騰・幅広い品目の値上げ、消費者物価】

【社説①】:値上げ相次ぐ 暮らしの防衛最優先に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:値上げ相次ぐ 暮らしの防衛最優先に 

 政府がガソリン価格の急騰抑制策を初めて発動する。ガソリンに限らず生活関連品を中心に値上げは広範囲に急拡大している。官民一体で暮らしを守る態勢を強化する必要がある。
 
 ガソリン一リットル当たりの全国平均小売価格は十三年四カ月ぶりに百七十円を超え、抑制策の発動基準を突破した。このため元売り業者に一リットル当たり最大五円を補助する対策を二十七日から実施する。
 
 財源は二〇二一年度補正予算に計上した八百億円を活用。灯油、重油、軽油も対象で物価に影響の強い燃油全般をめぐる価格抑制策だ。政府の市場介入への懸念はあるが、暮らしの守りを考慮すればやむを得ない措置だろう。
 
 ただ実際の価格は小売りが決める。対策が反映されているか細かいチェックは欠かせない。
 
 今後、ウクライナ情勢次第で原油市場はさらに高騰する恐れがある。補助が長引けば自由な市場を歪(ゆが)めかねない。価格が三カ月連続で百六十円を上回った際に発動されるトリガー条項の凍結解除も視野に入れるべきだ。
 
 この条項はガソリン税の課税を一時的に引き下げるもので、政府は値下げを見込んだ買い控えが起きかねないとして消極的だ。ただ需要が高まる中でその可能性は低下しているのではないか。発動に向け法改正を準備してほしい。
 
 国内物価は昨年来、値上げが相次いでいる。食料品全般や電気やガスなど多岐にわたる。昨年十二月の全国消費者物価指数も四カ月連続で上昇した=グラフ。
 
 新型コロナ関連倒産は起き続けており賃金上昇の気配もない。生活困窮世帯は増えている。
 
 物価上昇は、欧米や中国での消費増大を背景とした物流の逼迫(ひっぱく)や原油価格高騰、円安傾向などが複合的に作用して起きている。金融政策などマクロ的な対策で早期に抑制するのは難しい。
 
 政府は国民の生活実態を常に把握しながら支援策に知恵を絞るべきだ。同時に企業にも雇用や賃上げにより積極的に生活防衛に努めるよう強く求めたい。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月26日  07:54:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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