【社説①】:文書通信費 参院選までに是正せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:文書通信費 参院選までに是正せよ
国会議員一人当たり毎月百万円が支給される文書通信交通滞在費(文通費)の見直しに向けて、与野党が協議会を立ち上げた。国民の税金を原資とする資金であり、透明性の確保は急務だ。問題をこれ以上先送りせず、今夏の参院選までに是正すべきだ。
文通費は歳費法に基づき、衆参両院議員に給与とは別に支給される。非課税で使途報告や領収書提出の義務はなく、目的外使用にも罰則はない。何にでも使える「第二の給与」とも呼ばれる。
昨年十月三十一日投開票の衆院選で初当選した在職一日の新人議員らにも十月分の満額百万円が支給され、国民の常識と著しく乖離(かいり)した「政治とカネ」の実態に再び注目が集まった。与野党は昨年の臨時国会で見直しの必要性を確認したものの、是正内容を巡り合意に至っていないのが現状だ。
与野党協議の主な論点は、使途基準の明確化▽使途公開▽日割り支給▽未使用分の国庫返納−の四点。与野党は六月十五日までの今国会中の結論を目指すが、各党の主張には依然、隔たりがある。
与党側は日割り支給には前向きだが、何に使えるかという使途基準の明確化や使途公開には態度を明確にしていない。
野党側は、使途公開と日割り支給、未使用分返納を盛り込んだ法案をすでに国会提出し、この三点では一致しているが、使途基準の明確化では足並みの乱れがある。
四点がすべて実現しなければ、一般企業並みの実費精算に近づけることはできない。歳費法は文通費の使途を詳細に定めておらず、拡大解釈の余地が残るからだ。
日本維新の会は、文通費の使途を独自に公開しているが、議員が文通費を自身の政治団体にそっくり寄付し、幅広く政治活動に使えるようにする例が目立つ。
使途基準を明確にしなければ、使途を公開しても、特権的な「つかみ金」を温存することになる。百万円の月額が妥当かどうかも検討すべきだろう。
夏の参院選で選ばれる議員の任期は七月二十六日にも始まる。文通費が是正されなければ、在職六日の新人議員らに七月分が満額支給される事態が再び生じる。
与野党は現在二週間に一回の協議のペースを上げて、結論を急ぐべきだ。合意できないことを理由に何の是正策も講じないという失態を繰り返してはならない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月21日 07:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。