【社説】:広島県、まん延防止再延長 実情踏まえ対策柔軟に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:広島県、まん延防止再延長 実情踏まえ対策柔軟に
新型コロナウイルス対応の、まん延防止等重点措置の期限をあす迎える21道府県のうち、広島、岡山など16道府県については3月6日まで延長することが決まった。
新規感染者数は峠を越えたと言われるが、1日の死者数はこのところ連日200人を超え、過去最多を記録していた。
特に高齢者を中心に重症者数も増加している。また、オミクロン株の派生株で感染力が一層強いとされるウイルスが広がりつつあるという。医療提供体制への負荷は今後も続きそうだ。
このような状況で今、対策を緩めるわけにはいくまい。再延長はやむを得ないだろう。
とはいえ、まん延防止等重点措置の効果には、疑問の声もある。措置が解除される山口、沖縄などの5県において、感染者数や病床使用率が必ずしも改善されていると言えないためだ。
それでも山口県は、感染の勢いが落ち着き、医療にも支障が生じていない―として解除へ。村岡嗣政知事は「経済を動かしたい」と力を込める。
措置が適用された各自治体では、飲食店などへの営業時間短縮や、住民には外出自粛などが要請されてきた。地域の経済は疲弊している。行動制限を中心にした措置は、今回の第6波で効果があったのか。検証して見極める必要があるだろう。
オミクロン株の特徴も分かってきており、それを踏まえた対策へとシフトすべきだ。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)することのないよう感染状況を注視しつつ、地域経済の実情も考慮する。きめ細かく柔軟な対応が、道府県には求められる。
第6波で特徴的なのは、高齢者施設、学校や児童福祉施設などでクラスター(感染者集団)が相次いでいることだ。
オミクロン株への感染で基礎疾患や持病を悪化させ、重症化する高齢者が目立つ。高齢者へのワクチン接種を急ぐとともに、入所施設や学校などでの感染対策の強化が欠かせない。
一方で、治療薬がそろい始めるなどコロナを取り巻く状況は変わってきた。高齢者をはじめリスクの高い人の感染時に即応できる体制を整えられれば、一律の行動制限を緩和することは可能ではないか―。そんな指摘が専門家からも聞こえる。
広島県は、感染者数が依然下がり切らないため、まん延防止等重点措置の再延長を求めた。措置は1月9日以来、全国最長の約2カ月に及ぶ見通しだ。
県内では入院病床の使用率も6割近くと高水準で、医療への負荷低減を急がねばならない。湯崎英彦知事は「一般の医療と両立できるレベルを目指す」と述べた。行動制限を伴う対策継続への理解を訴えながらも、全飲食店に要請してきた酒の提供の停止を段階的に緩めることを打ち出した。
苦境にあった飲食店にとっては朗報に違いない。とはいえ、クラスター発生の恐れはある。店はもちろん利用する客も、予防に万全の注意を払い、節度を持った行動が求められる。
飲食店への要請以外にも社会的な制限が、県民生活に支障を来している。休館したりサービスを一時制限したりする文化施設、公共施設もある。
勘所を押さえ、柔軟で機動的な対策を取らなければ、コロナ禍は乗り越えられまい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月19日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。