【社説①】:ロシア言論統制 真実隠す弾圧をやめよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ロシア言論統制 真実隠す弾圧をやめよ
ロシアで言論統制を強める法律が成立した。ロシア軍に関する報道や情報発信について、当局が「偽情報」と見なした場合、最長15年の禁錮刑を科す。ロシア在住の外国人記者も対象となる。
ウクライナ情勢を巡り、プーチン政権に都合が悪い報道を封じる意図は明らかだ。
ロシアはウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と称しており「戦争」「侵攻」を偽情報だとする。
しかし、言葉を繕っても事実を覆い隠すことはできない。現地からの報道を見れば、ロシア側の主張は偽りであることは明らかだ。
自由で独立した報道は民主主義の根幹を成す。とりわけ戦時下では重要だ。国民の目と耳と口をふさげば、軍事行動は為政者のなすがままとなる。報道弾圧は自国の専制主義を認めるようなものだ。
ロシアは言論統制を直ちにやめるべきだ。国籍を問わず、メディア関係者の安全と自由を保障するよう強く求めたい。
ウクライナ侵攻後、プーチン政権は独立系メディアに対する締め付けを一層強めてきた。
新法成立後、昨年ノーベル平和賞を受賞したドミトリー・ムラトフ氏が編集長の独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」はロシア軍の関連記事をサイトから削除した。記者の安全を優先したためだ。
英BBC、米CNNなど外国メディアもロシア国内での活動を停止した。
ロシア当局はフェイスブックやツイッターをはじめ、欧米メディアへのアクセスも遮断した。
ロシアの大手メディアは政権の影響下にあり、国民が得られる情報は政権の宣伝一色となろう。
ロシア側は情報戦も展開する。「軍事施設しか攻撃しない」と言い募ったり、ウクライナ東部でジェノサイド(民族大量虐殺)が起こっていると指摘したりした。
いずれも事実と異なる。しかし今後はこうした主張を否定する報道が「偽情報」とされ、訴追される可能性が高い。
プーチン大統領は1991年のソ連崩壊を悲劇だとする。崩壊の端緒となったグラスノスチ(情報公開)では一党独裁の不都合な真実が次々と暴かれた。その再来を恐れているのではないか。
ロシアでは反戦デモが続いており、これまで1万3千人以上が拘束された。
言論の自由を侵害し、反体制派を弾圧する動きは香港やミャンマーなどでもある。民主主義の危機の連鎖を止めなければならない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年03月09日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。