【東日本大震災】:伝承の未来は 10~20代の語り部が釜石でシンポ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東日本大震災】:伝承の未来は 10~20代の語り部が釜石でシンポ
東日本大震災の記憶と教訓を語り継ぐ個人・団体の連携組織「3・11メモリアルネットワーク」が主催する「震災伝承シンポジウム」が19日、岩手県釜石市で開かれた。語り部活動に取り組む若者たちが、抱えている悩みや課題といった本音を率直に語り合い、被災の記憶を持たない次世代へ継承していく決意を共有した。
シンポジウムは2018年から開催し4回目。今年は「未来へ」がテーマで、パネルディスカッションでは、岩手、宮城、福島の被災3県出身・在住の若者らが、伝承活動の「続け方」「始め方」「これから」の三つの視点で、対話を深めた。
「続け方」の部では、年代ごとに直面する継続性の壁が課題に挙がった。釜石高校(釜石市)の有志でつくる「夢団~未来へつなげるONE TEAM」で活動する同校2年の川原凜乃さん(17)は「進学先で活動を続けられるのかわからない。私は被災当時5歳。経験を覚えている最後の世代として、下の世代にどう伝えていくかが課題」と話した。
宮城県東松島市で小学6年時に被災し、祖父を亡くした志野ほのかさん(23)は、高校2年時から語り部活動を続け、今は社会人1年目。「仕事と語り部の両立は難しい。上司に背中を押してもらったが、社会的にも、命を守るために大切な社会貢献の活動と認める雰囲気があれば」と願った。
「始め方」がテーマの討論では、最近語り部活動を始めた若者も登壇した。小学2年時に宮城県石巻市の自宅が被災した名古屋大1年の岩倉侑(あつむ)さん(19)は、地元では経験を語らずにきたが、「南海トラフ巨大地震への備えに生かしてほしい」と思い、昨秋から講演を引き受けるようになった。「身近な人を亡くしていない私が話していいのか葛藤はあるが、名古屋では(話が聞ける)被災者が近くにおらず、積極的な発信を心がけている」と語った。
小学2年時の震災で妹を亡くし、言葉にできなかった思いを最近語れるようになった石巻市の西城楓音さん(19)は、同世代へ向けて「話したい気持ちがあれば、それを大事にしてほしい。今すぐ始めなくても、ずっと続けなくてもいいと思うので気負わずに」とメッセージを送った。
「これから」のテーマでは、オンラインで参加した福島県富岡町の秋元菜々美さん(24)が、福島では被害を後世に伝える震災遺構が少ないとして「地域が保存する風潮になっておらず、若者が発言しても受け止められづらいと無力感を感じる」と吐露。その言葉を受け、石巻市での被災経験を語り継ぐ永沼悠斗さん(27)が「そうした気持ちを若い世代で共有し、一緒に考えたい。多様な考えを持つ若者同士なら解決策が見つかるんじゃないか」と力づけた。
釜石市の「いのちをつなぐ未来館」に勤務し、語り部として自らの被災体験も伝える川崎杏樹さん(25)は「各地の語り部同士でネットワークをつなぎ、みんなで肩を組んで頑張っていきたい」と語った。【百武信幸】
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社会 【話題・東日本大震災】 2022年03月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。