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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【卓上四季】:埋もれた絆

2022-03-15 05:05:30 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【卓上四季】:埋もれた絆

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:埋もれた絆

 1972年に日本とウクライナの関係の書籍を出版したイヴァン・スヴィットは後にこう明かしていた。「(日本人とは)親密な関係を持ったため、中立であることは難しい」

 ▼ロシア帝国領だったハリコフ生まれのジャーナリストでウクライナ民族独立運動家でもあったスヴィット。日本人との交流はロシア語紙記者として滞在した旧満州(現中国東北地方)でのことだ

日本・ウクライナ交流史 1915‐1937年

 ▼とりわけ親交を深めたのが南満州鉄道の職員だった。ハルビンにあった独立運動の拠点の返還などでも協力したという。情報収集や連携の模索が目的だったのだろうが、職員を長年の友人と呼び、「その対話はほとんどが感慨深い」という述懐には強い親愛の情もうかがえる(「日本・ウクライナ交流史」神戸学院大学出版会)

 ▼驚くのは旧満州の外交部が詳細かつ正確にウクライナ情勢を分析、把握していたことだ。その対象は歴史、政治、文化と幅広い。対ソ関係をにらんだこととはいえ、その調査能力は評価に値する

 ▼当時の極東には30万人超のウクライナ人がいた。防衛のためソ連が移住を奨励していたそうだ。親しくした満鉄の職員が帰国後、連帯を唱える団体に関わったのも、スヴィットの思いに共鳴したからだろう

 ▼日中戦争で日本当局とウクライナの距離は疎遠となり、その絆は歴史に埋もれた。民族の尊厳が国際政治の都合に翻弄(ほんろう)されるのは今も変わらない。2022・3・15

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2022年03月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【風・論説委員室から】:入管問題の根断つ時だ 相内亮

2022-03-15 05:05:20 | 【移民・難民・亡命・密入国・入管・在留資格・日本語学校・偽装結婚・技能実習生他】

【風・論説委員室から】:入管問題の根断つ時だ 相内亮

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【風・論説委員室から】:入管問題の根断つ時だ 相内亮 

 出入国在留管理庁の名古屋の施設で、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが適切な医療を受けられずに亡くなって1年が過ぎた。

 入管施設での外国人の病死や自殺は多発している。

 その元凶と目されているのが入管の強大な裁量権だ。

 入管は入管法上、在留期間を超えるなどした外国人を全員、司法の審査なく、無期限に施設収容することができる。

 閉ざされた空間に長く拘束され、精神的にも肉体的にも追い詰められる外国人は多い。

 送還を拒む外国人に圧力をかける装置として施設が使われていると言っていい。

 この運用は、国際人権ルールに反しているとして国連の機関が是正を求めている。

 だが日本政府は応じていない。ウィシュマさんに関して入管庁が昨年公表した最終報告書は、職員の意識や医療体制などを改善点に挙げるにとどまり、事を矮小(わいしょう)化した。

 政府は問題の核心に向き合っていないと言わざるを得ない。

 外国人を人と思わないかのような入管行政の根っこに何があるのかを知ろうと、昨年末から専門家に話を聞いてきた。

 OBの立場から入管改革を訴える元東京入管局長の水上洋一郎さん(80)は「戦後の入管の当初の実体は、朝鮮半島からの密航を取り締まり、在日朝鮮人を管理する機関だった」と解説した上で、「2018年の入管法改正に伴いやっと共生社会に向けた総合調整の役割も担うようにはなったが、入管法の基本は『外国人の出入国管理』のまま変わっていない」と話した。

 入管が、朝鮮半島をはじめとする外国の人々に対する差別性を内に宿したまま今に至ったことがうかがえる。

 その歩みの中で、外国人を管理の対象としてのみ見る習性が染みついたのではないかと疑わざるを得ない。

 日本とアジアの関係史が専門の田中宏・一橋大名誉教授は、「東西冷戦構造の西側に組み込まれ経済発展した日本は、戦争が遠景となる中、かつて支配したアジア諸地域との関係構築やその出身者の処遇に十分向き合わなかった。入管問題はそういう流れの中で考えるべきではないか」との見方を示した。

 戦後日本は米国追従を強め、アジアと距離を置いた。入管が変わらずにきた背景にアジア軽視があるとも言えそうだ。

 日本には300万人近い外国人が暮らす。すでに移民大国だと見る専門家もいる。

 ウィシュマさんらの悲劇は外国人との共生が求められる時代に入管行政が対応できていないことの表れと見るべきだろう。

 入管問題は戦後日本の歩みに深く根ざしている。その根を断つ抜本改革が急務だ。

 現在の入管法と入管庁に代わって、外国人を日本社会の一員に位置づけ対等な共生社会の実現を図る新法と、それに関する政策を主導する新組織の設置を国会と政府に強く求めたい。

 戦後日本のアジアでの立ち位置に関しては、国際政治に詳しい我部政明・琉球大名誉教授にも話を聞いた。

 我部氏は「アジアに友好国がない日本には、米軍がいなければ安心できないという『おびえ』がある。それが日米同盟を支える原動力だ。政権には『対米関係さえ良ければ』という考えが強い」とした上で、「そのツケでアジア近隣国と良好な関係を築けていないのが日本外交の弱み。アジアの一員となる姿勢が求められる」と指摘した。

 入管の抜本改革を、日本のおびえを過去のものとするための一歩にすべきだとも考える。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【風・論説委員室から】  2022年03月13日  10:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳】:映画「牛久」に見る入管の実態/02.01

2022-03-15 05:05:10 | 【移民・難民・亡命・密入国・入管・在留資格・日本語学校・偽装結婚・技能実習生他】

【政界地獄耳】:映画「牛久」に見る入管の実態/02.01

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳】:映画「牛久」に見る入管の実態/02.01 

 ★「牛久」をご存じだろうか。もちろん茨城県牛久市であるのだが、今回はその牛久にある、全国に17カ所ある東日本入国管理センターを描いたドキュメンタリー映画のタイトルだ。そこに収容された人々の証言から日本の入管収容所の実態が描かれる。東京では今月26日から公開される。監督はアメリカ出身のトーマス・アッシュ。日本の法律は在留資格がない人や難民、更新が認められず国外退去を命じられた外国人を「不法滞在者」として強制的に収容している。人権無視などの実態が初めてさらされたということになる。昨年も「東京クルド」というクルド人難民を描くドキュメンタリーがあったが、この映画は入管の収容実態が明らかになる。

入管告発ドキュメンタリー映画「牛久」、来年2月公開決定

 映画「牛久」。2022年2月26日(土)から全国順次ロードショー。

 ★映画は施設の厳しい規制の中、収容されている内部の状況を当事者たちの了解を得て、面会室での隠し撮りも含めてこれが入管の実態かと思わせる目を覆うシーンもある。医療を受けることもままならず、日本語ができても難民申請しても日本人と結婚していても、犯罪者でないのに彼らは非人間的に扱われる。日本に期待し信頼し、日本が好きで、だが彼らから語られる胸を突く言葉にこれが日本の国際化、ダイバーシティ、共生社会の実態なのかと思わざるを得ない。

 ★収容者は入管にとって模範的な態度をとり条件を満たすと仮放免を受け施設の外に数週間でることができるが、指定の県外に移動してはいけない、住民票がないから生活保護、健康保険が受けられず医者にかかれば10割負担になる。だが働いてはいけないから収入はない。その繰り返しだ。映画後半、国会でこの問題が予算委員会の議題になるシーンがあるが、政府はまじめに対応しない。昨年12月1日現在、牛久には18人が収容されているが、20年以降仮放免が急増したのは皮肉にも新型コロナのクラスター防止のためだ。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2022年02月01日  10:17:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【働き方】:低い賃金に声上げぬ日本の労働者 終身雇用が生む従順さ

2022-03-15 05:00:30 | 【雇用・正規、非正規・パート・賃上げ・失業率・求人・労働組合・労働貴族の連合】

【働き方】:低い賃金に声上げぬ日本の労働者 終身雇用が生む従順さ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【働き方】:低い賃金に声上げぬ日本の労働者 終身雇用が生む従順さ 

 バブル崩壊後、約30年にわたりほとんど賃金が増えていない日本。その要因の一つとして、日本の雇用制度や賃金体系の問題を挙げる声は多い。労働市場や労使関係などに詳しい中村天江・連合総研主幹研究員に聞いた。

 
<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/03/12/20220312k0000m020012000p/9.webp?1" type="image/webp" />中村天江・連合総研主幹研究員=本人提供</picture>
中村天江・連合総研主幹研究員=本人提供

 ◆人手不足でも上がらぬ賃金

 ――日本の賃金はこの30年増えていません。

 ◆経済協力開発機構(OECD)のデータによると、アメリカや英国、カナダなど主要国はこの間、軒並み賃金が増加していますが、日本はほとんど増えず横ばいです。1990年代後半から2000年代前半にかけて多くの企業が存続の危機に直面し、人件費の見直しやリストラを進め賃金を抑制したのが要因です。低賃金で働く非正規雇用も増えました。人件費の抑制やリストラは、企業にとってはやむを得ない面もあったかもしれません。しかし、何らかのタイミングで見直すべきだったと考えています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前の19年時点で、ハローワークの新規求人の充足率(求人に対する就職件数の割合)は過去最低となるなど人手不足は明らかでした。求人充足率が過去最低なら、賃金水準は上がってもおかしくないのですが、そうはなりませんでした。価格は需要に応じて決まると言われていますが、労働市場では需要があっても賃金が上がらないという状況になっていました。

 ◆賃上げ要求は「がめつい」?

 ――なぜ賃上げが進まないのでしょうか。

 ◆企業が賃上げに後ろ向きだったということは、もちろんあります。ただ、労働者の側も賃上げを強く求めてきませんでした。日本、アメリカ、フランス、中国の賃金の状況を調査分析したことがありますが、他の国は約7割の人が会社に対し賃上げを求めるのに対して、日本では入社時も入社後も賃上げを求めたことがない、という人が7割に上りました。海外では、職務内容を明確に規定しその内容で賃金が決まるジョブ型雇用が主流です。ジョブ型は仕事内容がはっきりしているため転職がしやすく、転職の際に雇い主と従業員が賃金交渉をするのが一般的です。転職しない場合でも、従業員は自分が成果を出したと思えば上司や企業に賃上げを求めることが多いです。

 一方、日本ではいまだに終身雇用を前提とした年功序列の給与体系が中心です。その枠組みのなかでは、個人として賃上げを求めるのは難しいです。転職が一般的ではないので賃金に関する情報が出回っておらず、そもそも自分の給料が高いのか安いのか判断もできません。「企業が成長しなければ賃金は増やせない」という経営側の論理を受け入れ、「会社が成長していないのに賃上げを求めるのはおかしいのではないか」と考える従順な従業員も多いです。高い給料を求めることを「がめつい」とみなす日本人特有の考え方も根強いです。今の日本では…、

 ※この記事は有料記事です。「創刊150年ありがとうキャンペーン 今なら2カ月間 無料トライアル」 いますぐ登録して、続きをお読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 経済 【雇用・賃金】  2022年03月15日  05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【立憲民主党】:AV出演強要対策、18歳成人に「未成年者取り消し権」議員立法で

2022-03-15 04:30:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【立憲民主党】:AV出演強要対策、18歳成人に「未成年者取り消し権」議員立法で

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【立憲民主党】:AV出演強要対策、18歳成人に「未成年者取り消し権」議員立法で

 4月から成人年齢が18歳に引き下げられることに伴い、立憲民主党はアダルトビデオ(AV)への出演契約を結んだ18歳、19歳が民法に規定された「未成年者取り消し権」を特例的に行使し、契約を取り消すことを認める議員立法をまとめる。今国会で超党派による法制化を目指す。

立憲民主党のロゴ

 児童買春・ポルノ禁止法で18歳未満のAV出演は認められておらず、同法の対象ではない18歳と19歳も、従来は親権者の同意のない契約を取り消すことができる「未成年者取り消し権」を行使して、出演契約を取り消すことができた。しかし、政府は1日、立憲の塩村文夏参院議員の質問主意書への答弁書で、4月以降は「成年となった18歳、19歳に(未成年者)取り消し権を拡張することは困難」と回答した。

 14日の立憲会合には、NPO法人「ぱっぷす」などAV出演を強要された被害者らを支援する団体や弁護士が出席。出席者からは4月以降、「18歳で出演させる『高校生AV』が主流になりかねない」などと、強要被害がより低年齢層に広がるのではないかと懸念する声が相次いだ。【田所柳子】

 ※この記事は有料記事です。「創刊150年ありがとうキャンペーン 今なら2カ月間 無料トライアル」 いますぐ登録して、続きをお読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社会 【話題・立憲民主党・4月から成人年齢が18歳に引き下げられる・18歳、19歳が民法に規定された「未成年者取り消し権」を特例的に行使し、契約を取り消すことを認める議員立法をまとめる】  2022年03月15日  04:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:番外編 「やさしさを大切にして生きていこう」…避難少女の書いた「自分史」

2022-03-15 03:01:50 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:番外編 「やさしさを大切にして生きていこう」…避難少女の書いた「自分史」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:番外編 「やさしさを大切にして生きていこう」…避難少女の書いた「自分史」

 東京電力福島第一原発事故後、福島県郡山市から新潟県へ家族とともに避難した少女は、2021年8月に高校の課題で8000字を超える「自分史」を書きました。一部を本人の許可を得て抜粋します(学校名は伏せ「この学校」とした以外は、原文のまま)。

少女は高校3年の夏に「自分史」の作文の中で小学2年から続いたいじめについて書き、10月にクラスで発表した

 少女は高校3年の夏に「自分史」の作文の中で小学2年から続いたいじめについて書き、10月にクラスで発表した

 
少女が書いた「自分史」の作文は23ページに及んだ

少女が書いた「自分史」の作文は23ページに及んだ

   ◇    ◇
 
 ここまでの17年間、沢山たくさんうれしいことを知りました。沢山楽しいことを知りました。沢山悲しいことを知りました。沢山つらいことを知りました。沢山のことを知りました。それは1人だったら、決して知ることの出来なかったことばかりです。お母さんがいて、お父さんがいて、おじいちゃんが、おばあちゃんがいて、妹がいて、叔母さんがいて、いとこがいて、はとこがいて、友達がいて、先生がいて、その他にも沢山の人がいて。私の周りにこんなにたくさんの人がいたから、嬉しいこともつらいことも、沢山知ることができました。震災の傷は癒えません。いじめの傷も癒えません。トラウマに苦しむ日々が続いています。
 
少女がいじめについて書いた「自分史」の作文

 少女がいじめについて書いた「自分史」の作文

 それでも、震災があったから新潟に来れた。いじめがあったから、前よりも人に優しくなれた。傷は沢山あるし、治るのにはかなりの時間がかかります。たくさんのものを失いました。故郷も、おいしい食べ物たちも、むこうでの友情も、コミュニティーも、たくさん失いました。つらいときは幾度となく福島に帰りたいと願いました。その言葉で何度も、「なんで新潟にいるのかわかるでしょう。あなたを守るためなんだから。」と言わせて、両親を泣かせました。でも、つらくても得たものも沢山あります。新潟に来なかったら、この学校にはきっと来なかった。いじめられなかったら、こんなに優しくなれなかった。避難したから、福島がどれほど大切か再確認できた。たくさんのことを教えてもらいました。たくさん傷つけられました。たくさん助けてもらいました。
 
 今でも死にたくなる時はあります。行動に移したくなる時もあります。このさきの人生もトラウマと付き合っていかなきゃいけないと考えると、もう命を絶ちたくなります。
 
少女と両親、妹の4人で重ねた手

少女と両親、妹の4人で重ねた手

 でも、助けてもらった記憶があるから、嬉しさや楽しさを知ってしまったから、もう少し生きてみようかな、とこの学校にきて、やっと考えられるようになりました。
 
 最近、両親が「一番大切な時期に避難させて、いじめも受けて、親を恨んでいるんじゃないか。」と友人に話したそうです。もちろんムカつくことも、郡山に帰りたいと思うことも何度もありましたが、避難するという選択をしてくれた両親には感謝しかありません。
 
 この先、つらいことは当然あると思います。しかし、ここまでのことを経験してきたからこそ、きっとこの先も乗り越えられると思います。これからも人との出会いを忘れず、やさしさを大切にして生きていこうと思います。
 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【連載・「トンネルの先へ 少女と家族の軌跡」・東日本大震災・東京電力福島第一原発事故】  2022年03月15日  03:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:④福島に帰りたいけど、やっと見つけた新しい故郷も好き 新潟に避難の少女、家族に言いたい「ありがとう」

2022-03-15 03:01:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:④福島に帰りたいけど、やっと見つけた新しい故郷も好き 新潟に避難の少女、家族に言いたい「ありがとう」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:④福島に帰りたいけど、やっと見つけた新しい故郷も好き 新潟に避難の少女、家族に言いたい「ありがとう」 

 どう受け止められるんだろうー。2021年10月、少女は転校した新潟県内の高校の授業で、3年の同級生の前に立った。課題の「自分史」を発表すると決意してきたはずなのに、反応が怖かった。緊張して作文を持つ手が震えた。

 前回までのあらすじ 原発事故で福島・郡山から新潟へ避難した少女は、中高一貫校に進学後もいじめを受けた。避難は正しかったのか、と苦しむ両親。少女の自殺未遂を機に学校への不信が高まり、父親は転校させることを決めた。

 福島県郡山市で伸び伸びと育ったこと。原発事故後の避難。転校後始まったいじめ、保健室登校、自殺未遂…。当時の気持ちを率直に書いた。課題は4000字だったが書き切れず、つづった文字は8000字に上った。
 
 夢中で読み終え、顔をあげると、泣いている同級生たちがいた。「受け入れてくれたんだ」と救われる思いがした。「話してくれてありがとう」「生きていてくれてよかった」。同級生の感想を読みながら、涙が止まらなくなった。
 
 
 前の高校で自殺未遂をした後、避難者の友達が「私の学校に来ない?」と誘ってくれた。彼女もいじめを受け悩んでいたが、この高校で見違えるほど明るくなった。学校見学に行くと、校長先生が「悪いところもあるから」と正直に言うのを聞き、親子でほっとした。
 
 高校2年から転入。当初は気を張って全ての授業に出たが、7月には疲れて休みがちになった。
 
 「ちょっと頑張り過ぎたから休もうか。ご両親には俺から言っとく」。これまでのことを担任の男性教諭に打ち明けると、そう言われ驚いた。倒れた時に「迷惑かけてごめん」と謝ると、同級生たちが「何言っているの。迷惑かけてなんぼでしょう」と返してくれた。

 ◆背中を押すのは、助けてもらった記憶

 凍った心はゆっくり解けていったが、人混みや大声に恐怖を覚えた。避難訓練に参加したり、緊急地震速報を聞いたりするとパニックになった。いじめの記憶がよみがえり、震えが止まらなくなった。それでも学校にいられる時間が少しずつ長くなり、心から笑えるようになっていった。
 
 将来も考えられるようになった。いじめが激しくなった小5で、アーティスト「まふまふ」の曲に出合った。「ただ一つ一言だけください 生きていいよってさ」。そんな歌詞に何度も救われた。初めてライブで「こんなにも生きる力をくれるんだ」と圧倒された。人に生きる元気を与える仕事がしたい。そんな仕事をする人を手伝いたいと、ヘアメークに興味を持った。春からは専門学校に通う。
 
 今でも死にたくなる時がある。けれど両親や先生、友達に助けてもらった記憶が背中を押してくれる。福島に帰りたい。でもこの高校が故郷になり、新潟を好きにしてくれた。
 
 今だから分かる。両親がどんな思いで自分を守ろうとしてくれたのか。自分が親でも同じ選択をしたと思う。二度と私たち家族のような思いを誰もしないように、これからは私も体験を伝えていきたい。面と向かっては言えないけれど、両親の子に生まれてよかった。そしていつか言いたい。お父さん、お母さん、私を守ってくれてありがとう。
 
 記者と初めて会った昨年2月末、自分のことをいつか記事にしてほしいと告げた少女は、とびきりの笑顔で言った。「記事は私を守るために必死に闘ってくれた大好きな両親へのラブレターです」 (片山夏子)=おわり
 
4月から夢に向かって専門学校に進む少女。「大好きな高校の一番近くにある自然だから」と海を前にジャンプしてくれた=新潟県内で(由木直子撮影)

 4月から夢に向かって専門学校に進む少女。「大好きな高校の一番近くにある自然だから」と海を前にジャンプしてくれた=新潟県内で(由木直子撮影)

 元稿:東京新聞社 主要ニュース 社会 【連載・「トンネルの先へ 少女と家族の軌跡」・東日本大震災・東京電力福島第一原発事故】  2022年03月15日  03:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:③避難先で進学してもいじめは続いた…心は限界を超え自殺未遂 原発さえなければ福島にいられた

2022-03-15 03:01:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:③避難先で進学してもいじめは続いた…心は限界を超え自殺未遂 原発さえなければ福島にいられた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:③避難先で進学してもいじめは続いた…心は限界を超え自殺未遂 原発さえなければ福島にいられた 

 前回までのあらすじ 原発事故後に福島・郡山から新潟へ避難した少女は、小学校で「放射能がうつる」などといじめられたが、両親には言えなかった。「中学を受験していじめから離れる」。その思いがつらい日々を支えていた。

 福島からの避難者が集まった時、少女ら子どもたちは親たちに聞こえない場所で、いじめの話をした。
 
 「つらい。もう学校行きたくない」「死にたい」
 小学校低学年の子まで死を口にした。避難して悩んでない子はいないのではないかと感じた。「私も同じ」と伝えたものの、内容は話せなかった。自分の事だけで精いっぱいだったが、受け止められるのは年長の自分だけだと感じ、同世代や年下の子にかける言葉を必死で探した。心は限界を超え、破裂しそうだった。
 
 心が殺されても殺人にならないのか。原発事故さえなければ福島にいられたのに。全世界から原発が消えればいいと思った。
雪の残る海辺を歩く少女と家族。福島ではいつもそばに見えていた山々が近くになく、少女は自然に触れたくてよく海を見に来た=いずれも新潟県内で

 雪の残る海辺を歩く少女と家族。福島ではいつもそばに見えていた山々が近くになく、少女は自然に触れたくてよく海を見に来た=いずれも新潟県内で

 中高一貫の進学校に無事合格。誰にもおびえず過ごせる毎日は楽しかったが、それは短かった。仲間外れにされた同級生をかばった後、いじめの標的に。徹底的に無視され、いないかのように扱われた。逆にいじめの加害者だとうわさされ、人が信じられなくなった。教室での笑い声や話し声は、自分への嘲笑や悪口に聞こえた。
 
 1度だけ郡山の同級生に連絡した。いじめの相談をしたかったが「避難できてよかったじゃん」と言われ、言葉が続かなかった。
 
 「いつ、どうやって死のう」と考えるようになった。教室に行くと過呼吸になり、学校集会ではパニックになった。大半を保健室で過ごした。過呼吸で救急車で運ばれたのは7回。高校1年生の時、友だち2人と学校でありったけの薬を飲み、病院に搬送された。

◆母も職場で差別され、父も円形脱毛症に

家族の朝食は平日はばらばらだが、週末はこたつで少女と両親、妹が4人そろって食べる

 家族の朝食は平日はばらばらだが、週末はこたつで少女と両親、妹が4人そろって食べる

 両親も苦しんでいた。救急車の中、母親は泣きながら、意識がもうろうとする少女の手を強く握った。「お願い。手を握り返して」。声は届いているようだが、手は動かなかった。最悪の事態がよぎってゾッとした。何があっても守ろうと避難してきたのに。自分の無力さに打ちのめされた。
 
 少女が中2の時、働き始めた職場で「この人、福島から来て危ないから近づかないで」と上司が客に言ったことがある。針のむしろだった。娘が受けてきた仕打ちはこれか。どんなに過酷だったかと思い知った。「ごめん」。心の中で娘の名を呼び、何度も謝った。
 
 「福島に帰りたい」と少女が泣くたびに、「できることなら帰してあげたい」と思った。娘の健康のためだとしても、死ぬまで罪悪感を持つだろうと感じた。目を覚ましたら、この子が笑って生きていけるようにもっと闘おうと決めた。
 
少女は学校に行けない時は布団に入り、つらい時に何度も救ってくれたアーティストの音楽を聴いて過ごしていた

 少女は学校に行けない時は布団に入り、つらい時に何度も救ってくれたアーティストの音楽を聴いて過ごしていた

 父親も「親の選択を娘が恨んでいたら…」と悩んでいた。円形脱毛症になり、じんましんが出た。娘が死のうと思ったことが、やりきれなかった。もし死んでしまったら、立ち直れない。娘の意識が戻った時、目を真っ赤にして言った。「ばかやろう。おまえは生きているだけでいいんだ」
 
 その後も少女は過呼吸をくり返し、学校で騒ぎを起こしたとして謹慎処分を受けた。高1の12月、進級が危ないと両親が呼び出された。学校の対応に「娘を守る姿勢がない」と感じた父親は、転校させることを決意した。(片山夏子)
 
 ◇  ◇
 
 
 記者は20年11月から少女とメールでやりとりを始め、その3カ月後から実際に会って話を聞いた。1年を超える取材を基に、少女と家族の11年の軌跡を4回にわたって伝える。(次回は東京新聞朝刊への掲載に合わせて公開します)

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【連載・「トンネルの先へ 少女と家族の軌跡」・東日本大震災・東京電力福島第一原発事故】  2022年03月13日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:②「放射能じゃん」「ごめん。怖い」…大好きな福島への侮辱、怒り涙こらえた小学校の記憶

2022-03-15 03:01:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:②「放射能じゃん」「ごめん。怖い」…大好きな福島への侮辱、怒り涙こらえた小学校の記憶

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:②「放射能じゃん」「ごめん。怖い」…大好きな福島への侮辱、怒り涙こらえた小学校の記憶 

 いじめが始まったのは、少女が福島から新潟に避難した半年後。「おまえテレビに出てたな」。小学校2年の正月明け、男子児童に言われた。冬休み中に、父親らが避難者として出た番組に家族も映っていた。
 
「大好きな高校の一番近くにある自然だから」と海辺を歩く少女。小学校時代に始まったいじめは、中学校でも続くことになる=新潟県内で

「大好きな高校の一番近くにある自然だから」と海辺を歩く少女。小学校時代に始まったいじめは、中学校でも続くことになる=新潟県内で

 「放射能じゃん。お前汚れてるんだろ」「放射能ってうつるんでしょ。お母さんが言ってた」。言い返しても、止まらなかった。
 
 2011年夏に新潟に移り住んだ時は、すぐ友達ができ、外で思いっきり遊べるとうれしかった。だが、学校はこの日から恐怖の場所へと変わった。
 
 「菌」「気持ち悪い、こっちに来るな」「放射能」「消えろ」…。仲のよかった子も「ごめん。私も怖い」と離れていった。教師に訴えても、状況は変わらなかった。物がしょっちゅう無くなり、くすくす笑う声が聞こえた。休み時間も教室にいられず、トイレや階段の踊り場で泣いた。
 
 母親に「保健室でやすんだんだ」「福島って言われた」と漏らしたことがある。でも「どうしたの」と聞かれると口をつぐんだ。慣れない地で自分と妹を抱える母親に心配を掛けると思うと、言い出せなかった。
 
 小3の時、母親がいじめに気づいた。口元を切って帰宅したのを見て誰かに殴られたと感じ、母親が担任に対応を迫ると「やられる方にも責任がある」と言い返されてあぜんとしたという。「1度休んだら学校に行けなくなる」と、行きたくないと泣き叫ぶ自分を引っ張り、母親は幼い妹を背負って片道20分の道を毎日送り迎えしてくれた。

 ◆「何も知らないのに言うな!」と叫びたかった

爪にマニキュアを塗る少女。小学2年から始まった同級生からのいじめが続く中、親指の爪を血が出るほどかむようになり、母親に爪を保護するマニキュアを塗ってもらっていたという。4月からは専門学校でヘアメークを学ぶ=新潟県内で

 爪にマニキュアを塗る少女。小学2年から始まった同級生からのいじめが続く中、親指の爪を血が出るほどかむようになり、母親に爪を保護するマニキュアを塗ってもらっていたという。4月からは専門学校でヘアメークを学ぶ=新潟県内で

 いじめは暴力にエスカレート。後ろから跳び蹴りされたり、背中や腰など外から見えない部分を殴られたりした。だが何よりもつらかったのは、大好きな福島を侮辱されることだった。
 
 「福島って汚いんでしょ」「きのうスーパーに行ったら福島の物があってさ。汚くて食えねぇ」。怒りで震え涙を必死でこらえた。思い出したのは福島の祖父母の作ったもぎたてのトマトやキュウリのみずみずしさ。「何も知らないのに言うな!」と叫びたかった。祖父母や友達のいる福島に帰りたかった。悔しさと悲しさで破裂しそうだった。
 
 避難から2年半、父親は新潟に転職するまで、福島との二重生活を送った。平日は残業、週末は片道160キロを車で往復し、疲れ切っていた。父親と離れるのが不安で、別れるたびに火がついたように泣いた。
 
 なぜ家族がばらばらなのか。やり場のない思いをぶつけようと、政府と東電に対しメモ帳につづったこともある。「今、お父さんと一緒に暮らせていません。福島を返してください」
 
 住む場所も仕事も変え必死に守ってくれる両親を困らせたくない。明るく振る舞おうとしたが、心から笑えなくなっていった。「中学を受験していじめから離れる」。その思いがかろうじて自分を支えていた。(片山夏子)
 
 ◇  ◇
 
 記者は20年11月から少女とメールでやりとりを始め、その3カ月後から実際に会って話を聞いた。1年を超える取材を基に、少女と家族の11年の軌跡を4回にわたって伝える。

 前回までのあらすじ 福島第一原発事故後の2011年夏、少女は家族と福島県郡山市から新潟へ避難し、今もそこで暮らす。福島で撮った同級生とのクラス写真は、予想もしなかったつらい日々で何度も手にすることになった。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【連載・「トンネルの先へ 少女と家族の軌跡」・東日本大震災・東京電力福島第一原発事故】  2022年03月12日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:①いじめ、自殺未遂…福島の少女の11年 避難前は明るかった「いいよ。友だちが増えるだけじゃん」

2022-03-15 03:01:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:①いじめ、自殺未遂…福島の少女の11年 避難前は明るかった「いいよ。友だちが増えるだけじゃん

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【トンネルの先へ 少女と家族の軌跡】:①いじめ、自殺未遂…福島の少女の11年 避難前は明るかった「いいよ。友だちが増えるだけじゃん 

 高校最後の日、卒業証書授与で担任の男性教諭に名前を呼ばれた瞬間、少女(18)は涙がこぼれ落ちそうになった。この学校の先生や友だちが、心から笑えるようにしてくれた。卒業するのは寂しかった。小中学校の時は思わなかったのに。
 
避難前に福島で撮った集合写真や高校の卒業証書を手にする女性。つらいときに海で写真を見ることもあった=新潟県内で

 避難前に福島で撮った集合写真や高校の卒業証書を手にする女性。つらいときに海で写真を見ることもあった=新潟県内で

 東京電力福島第一原発で事故が起きた2011年3月11日、少女は7歳、小学校2年に上がる直前だった。進級して夏休み中に、福島県郡山市から新潟に避難した。安住を求めた地で「福島は汚れている」「放射能」といじめられ、何度も福島に帰りたいと泣き叫んだ。高校生になって、自殺未遂もした。
 
 長く暗いトンネルで出口が見つからない日々が続いた。晴れ渡る空の下、今ようやくその出口を抜け出せたように感じる。「寂しくなったらいつでも帰っておいで」。先生たちの言葉に、次は笑顔を見せにこようと心に誓った。4月から、夢をかなえるため新潟県内の専門学校に通う。

 ◆次々転校するクラスメイト…「私の番が来た」

 11年3月11日午後2時46分。郡山市の自宅で祖父とテレビを見ている時だった。激しい揺れで家具が倒れ、食器が割れる音が響いた。ひっきりなしに鳴る携帯電話の緊急地震速報。もぐった掘りごたつの脚と机に頭や体を強打し、恐怖で泣きじゃくった。「私、死ぬんだな」。家から飛び出すと吹雪だった。
 
 福島第一原発では12日に1号機で、14日には3号機で水素爆発が起きた。自衛隊の家族がいる親戚から父親に「原発危ないらしいよ。うちは逃げる」と電話があり、両親も一時避難することを決断した。
 
 16日早朝、1歳の妹を含む家族4人が乗った車は新潟へ向かった。身を寄せた避難所は温かいご飯があり、温泉に入れた。幼い子がいるからと個室が用意され、「避難指示区域からじゃないのに」と母親は小さくなっていた。避難してきた他の子どもたちと遊べて毎日、楽しかった。
 
 4月の新学期に合わせて戻った郡山では、息苦しい毎日が待っていた。放射線被ばくをしないよう長袖、長ズボンに帽子やマスクをつけ、教室の窓は閉め切られた。校舎はブルーシートが掛かり、校庭は除染のため表土が剝ぎ取られ山積みに。担任から「土には触れないように」と言われた。
 
 1学期の途中、級友が1人、また1人と転校していった。「ここは危ないと思うから、新潟に行こうと思うんだけど」。両親に問われた時、「私の番が来たんだ」と思った。
 
 仕事のために福島に残る大好きな父親や祖父母と離れるのは寂しかったが、両親が自分や妹を守ろうとしていることは分かった。だから前向きに考え、明るく答えた。
 
「いいよ。友だちが増えるだけじゃん」
 
 1学期の終業式、「どこ行っても大丈夫だよ」「また福島に戻ってくるの待ってるね」と友だちに言われ、寂しさがこみ上げた。その日、クラスで集合写真を撮った。新潟でつらい時に何度も手にした1枚は、今も時々取り出して見る宝物だ。(片山夏子)
 
 ◇  ◇
 
 記者は20年11月から少女とメールでやりとりを始め、その3カ月後から実際に会って話を聞いた。1年を超える取材を基に、少女と家族の11年の軌跡を4回にわたって伝える。
 
 
 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【連載・「トンネルの先へ 少女と家族の軌跡」・東日本大震災・東京電力福島第一原発事故】  2022年03月11日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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《社説①》:強制不妊で再び国敗訴 上告せず救済策の拡充を

2022-03-15 02:05:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《社説①》:強制不妊で再び国敗訴 上告せず救済策の拡充を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:強制不妊で再び国敗訴 上告せず救済策の拡充を

 旧優生保護法によって不妊手術を強制された男性の裁判で、東京高裁が国に賠償を命じた。先月の大阪高裁に続く国の敗訴だ。

 甚だしい人権侵害の政策を積極的に進めた国に、司法が再び厳しい姿勢を示した。国は大阪のケースで上告しているが、今回も含め司法の判断を受け入れるべきだ。

 東京高裁は、優生保護法について「差別的思想に基づくもので、極めて非人道的」と批判し、憲法に違反するのは明らかと断じた。

 一連の裁判では、不法行為から20年経過すると賠償請求ができなくなるという民法の「除斥期間」の扱いが焦点になっている。長い年月を経た後に、法的な争いが起きるのは好ましくないとの考えから設けられたものだ。 

 判決は「時間の経過だけを理由に国が賠償責任を免れるのは、著しく正義に反する」と指摘した。

 「偏見・差別を広めた」「身体を拘束したり、だましたりしての手術も許容した」「強制不妊手術の規定が削除された後も、長らく救済措置を取らなかった」

 ゆがんだ優生思想に基づく差別政策の非道さを列挙した。

 最高法規の憲法に違反する政策で生じた被害について、民法を根拠に救済を拒むことへの疑問も示した。国の不法行為に対する賠償請求は、憲法で保障された権利だと強調した。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年03月15日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:岸田首相の自民党改革 総裁選の道具だったのか

2022-03-15 02:05:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

《社説②》:岸田首相の自民党改革 総裁選の道具だったのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:岸田首相の自民党改革 総裁選の道具だったのか 

 これで改革政党と胸を張れるのだろうか。

 自民党が岸田文雄政権の発足後に初めて開いた党大会で、役員の任期を制限する党則改正などを決めた。権力の集中を防ぐため、幹事長らは「1期1年、連続3期まで」とする。

 昨年の総裁選で党改革を公約に掲げた首相は、夏の参院選に向けて「改革政党であることを示す」と訴えた。

 だが、任期制限はそもそも、5年超も幹事長を務めた二階俊博氏を交代させる狙いから、総裁選で打ち出したものだ。

 就任から半年たつが、首相には本気で党を変えようとの熱意がうかがえない。これでは権力闘争の「道具」だったと疑われても仕方あるまい。 

 党運営の指針となるガバナンスコードを新たに作ることも定めた。「なすべきこと」を明記するというが、すぐにできることにも手を付けないままだ。

 国会議員に月100万円が支給される文書通信交通滞在費の抜本的な見直しに、首相は指導力を発揮していない。 

 女性の政治参画では参院選の擁立目標すら示していない。候補者数の男女均等を目指す法律がある中、与党として不十分な対応だ。

 派閥政治の復活も気掛かりである。首相は自らが率いる派閥・宏池会の会合に出席を重ね、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長も派閥トップを続けている。 

 1988年のリクルート事件を受け、総裁、党幹部、閣僚らは「在任中、派閥を離脱する」との党内ルールが設けられたが、自ら形骸化させている。

 来年度予算案の年度内成立が早々に確定し、本来なら改革に着手する好機のはずだ。

 にもかかわらず、小手先の改革で済ませようとしている。野党の国民民主党などが政権に接近する状況下、政治から緊張感が失われているのではないか。

 地方選挙で保守分裂が相次ぎ、自民保守派が政権を突き上げる。こうした動きからも、党が内向きな姿勢を強めていることが見て取れる。

 内外に課題が山積する。解決に向けて党をどう改革するか。ビジョンを示すのが首相の責任だ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年03月15日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:「戦争と身代金」とは何やら判じ物のようだが…

2022-03-15 02:05:30 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【余禄】:「戦争と身代金」とは何やら判じ物のようだが…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:「戦争と身代金」とは何やら判じ物のようだが…

 「戦争と身代金」とは何やら判じ物のようだが、欧州中世の戦争では身分の高い敵国人を捕らえ身代金を取るのが普通だった。たとえば14世紀には百年戦争で何とフランス王ジャン2世が英国側の捕虜となった

 ▲身代金は、条約により300万金(きん)エキュの分割払いとなる。完済まで王族が身代わりの人質となったが、彼は脱出してしまう。王は騎士道精神に従ってか、再び捕らわれていた英国に戻り、同地で客死した(佐藤猛(さとう・たけし)著「百年戦争」)

 ▲データを勝手に暗号化して人質にする、ランサム(身代金)ウエアと呼ばれる不正ソフトがサイバー攻撃に用いられる現代である。ランサムウエアを用いて企業恐喝を行う集団がロシアや東欧などに多いのはかねて問題視されてきた

 ▲ウクライナ侵攻ではそんな犯罪集団の一つがロシア支持を一時表明して人々を驚かせた。するとすぐに集団の内部情報がネットに暴露され、別の集団は自分らの目的は金だけだと主張するなど、ハッカー集団も戦争で大揺れのようだ

 ▲気になるのは、日本の自動車部品メーカーが日独の拠点で続けざまにランサムウエアとみられる攻撃を受けたことだ。ともにロシアで操業を停止したトヨタに部品供給をする企業だが、むろん戦争と関係あるかどうかは分からない

 ▲各国の情報機関ばかりかハッカー集団の“義勇軍”も加わり、世界規模の「戦場」となったサイバー空間だ。そんな戦場を、人質となってさまようことのないように願いたい各企業の大切なデータである。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2022年03月15日  02:20:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【そこが聞きたい】:参院選、どう対応 連合会長・芳野友子氏

2022-03-15 02:05:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【そこが聞きたい】:参院選、どう対応 連合会長・芳野友子氏

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【そこが聞きたい】:参院選、どう対応 連合会長・芳野友子氏 

 昨秋の衆院選では、立憲民主党と共産党との関係に注目が集まった。今夏の参院選でも両党の連携が議論を呼びそうだ。共産との関係について「選挙戦を混乱させる」と厳しい発言を続ける日本労働組合総連合会(連合)の芳野友子会長に、参院選にどう対応するかを聞いた。【聞き手・須藤孝、写真・宮本明登】

 

 ◆共産と共闘はできない

――連合会長に就任されてから共産党との関係についての発言が注目されることが多くなっています。

 前会長の神津里季生氏と同じことしか言っておらず、困惑している部分もある。そもそも連合の労働運動は、自由で民主的な労働運動を強化、拡大していくということから始まっている。その点で共産とは考え方が違い、相いれない。現実的にも連合の組合と共産党系の組合は職場、労働運動の現場で日々競合し、しのぎを削っている。

 ※この記事は有料記事です。「創刊150年ありがとうキャンペーン 今なら2カ月間 無料トライアル」 いますぐ登録して、続きをお読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【そこが聞きたい】  2022年03月15日  02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【火論】:チェルノブイリに思う=大治朋子

2022-03-15 02:05:10 | 【ロシア・北方領土・シベリア開発・サハリン石油天然ガス・ウクライナ侵攻犯罪】

【火論】:チェルノブイリに思う=大治朋子

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【火論】:チェルノブイリに思う=大治朋子

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 ウクライナのチェルノブイリ原発跡地を訪ねたことがある。東日本大震災から7カ月後の2011年10月だった。

 首都キエフから車で2時間。すでに原発事故が起きた1986年から四半世紀たっていたが、半径30キロ圏内の居住は禁じられ、立ち入りも規制されていた。事故のあった4号機を訪ねると、放射線量測定器の値は「毎時4・2マイクロシーベルト」。当時の福島市内の測定値の3倍余りで、その「傷」の深さを目の当たりにした。

 

「キッズゲルニカ」に手を合わせ、平和を祈る女性=福島市役所で2022年3月10日午前8時45分、玉城達郎撮影

「キッズゲルニカ」に手を合わせ、平和を祈る女性=福島市役所で2022年3月10日午前8時45分、玉城達郎撮影

 あれから11年。チェルノブイリ原発はロシア軍に占拠されている。ニュースを聞いて脳裏に浮かんだのは、チェルノブイリで見かけた人々の姿だ。夫婦で散歩する人、庭いじりをする人。日本の被災者がそうであるように、その土地を愛し、暮らし続けていた。当時、地元に残っていた市民は約170人。大半は農家出身の高齢者で、野菜などを自家栽培していた。土壌汚染があるため政府は禁じていたが、事実上、黙認されていた。

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