【自民党】:統一教会、日本会議とズブズブ 保守派の正体と家族観
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【自民党】:統一教会、日本会議とズブズブ 保守派の正体と家族観
首相秘書官のLGBT差別発言を機に、LGBTや同性婚をとりまく問題が政治の重要テーマになってきた。岸田首相は政権への批判をかわそうと、自民党内で2年前からたなざらしになっている「LGBT理解増進法案」の提出準備を進めるよう茂木幹事長に指示。党総務会は議論を進める方針を確認した。
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保守派におもねる(岸田首相=央、後方は左から高市経済安保相、西田参院議員)/(C)日刊ゲンダイ
だが、早速、異論が噴出するのが自民党である。2年前に法案に反対した保守派の西田昌司参院議員が「LGBTの差別禁止という言い方によって、逆に社会が分断される」と反発すれば、岩盤保守層のアイドルのような高市早苗経済安保相も「文言について十分な調整が必要な段階だ」と慎重論を展開。党内二分で、簡単には結論が出そうにない。
前向きなフリをするのは、岸田政権の毎度のパターンだ。内閣支持率が低迷する中で、4月には統一地方選がやってくる。有権者をごまかすのが目的で、児童手当の拡充を巡る議論でも、国民は同じ光景を見せられている。茂木が所得制限撤廃をブチ上げたが、西村経産相などが「富裕層優遇だ」と批判し、これも党内二分でまとまらない。
児童手当の所得制限を撤廃するか、しないかは、突き詰めれば、子どもを社会全体で育てるか、家庭で育てるか、という問題だ。つまり、LGBTに寛容でないのも、同性婚に反対するのも、子育てを家庭に縛るのも、自民党保守派が信奉する伝統的家族主義が根底にある。自民党はLGBT法案について、文言修正でお茶を濁すつもりじゃないか。
■時代錯誤の家父長制を信奉
自民党保守派の古色蒼然とした家族観や国家観はスジ金入りだ。
2006年の第1次政権で安倍元首相は「美しい国、日本」をスローガンに掲げた。出版した著書で、安倍はこう書いていた。
〈「お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ」という家族観と、「そういう家族が仲よく暮らすのが一番の幸せだ」という価値観は守り続けていくべきだと思う〉
民主党に政権を奪われ、下野していた自民党が12年にまとめた憲法改正草案の前文は、〈天皇を戴く国家〉で始まり、〈日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する〉という復古調。条文では基本的人権よりも公益を優先させ、家族主義からつながる天皇中心の国家観を提唱している。
自民党が政権に復帰し、第2次安倍政権になると、そうしたアナクロニズムがますます強まる。17年3月、「教育勅語を学校教材として使うことを否定しない」と驚愕の閣議決定をしたことを覚えているだろうか。言うまでもなく「教育勅語」は戦前・戦中の軍国主義と結びついた教育理念だ。親孝行などの徳目を説く一方、危急の事態では「公に奉じ」皇室を助けるべきだとした。戦後、1948年に衆参両院で排除や失効が決議されている。
そんなものを礼賛したわけだが、以降、安倍を後ろ盾に、危うい思想が自民党内で跋扈する。昨年3月には、前出の保守派議員・西田が国会の憲法審査会の場で、「日本の文化で一番大事なのは教育勅語に書いてある家族主義、家族と伝統を大事にすることだ」と持論を展開したのだから世も末である。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「自民党の保守派は、大日本帝国時代の家父長制をいまも思い描いているのですよ。天皇を国家の家父長とし、男性を家庭内の家父長として統括。男性が女性を支配する。時代錯誤の体制です。こうした仕組みが、政権運営や政権維持に都合がいいということもあるでしょう。そして、『家制度』を守るという思想は、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)系の政治団体『国際勝共連合』と同じです。教団は女性をターゲットにしている。女性から寄付を巻き上げるには、家父長制が崩れると困る。ジェンダー平等なんて困るのです。そこに、自民党と統一教会が“手を結ぶ”理由もあるわけです」
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自民党内の“旧統一教会汚染”は180人に及ぶ(安倍元首相がNGO「天宙平和連合〈UPF〉」集会に寄せたビデオメッセージ=ユーチューブから)
◆安倍政権に「ぶっ壊された10年」と安倍路線を続ける亡国首相
アナクロ家族主義の背景に見え隠れするのが、宗教団体だ。
統一教会系の「国際勝共連合」の公式HPには〈同性婚合法化、行き過ぎたLGBT人権運動に歯止めをかけ、正しい結婚観・家族観を追求する〉と明記されている。昨夏の参院選で統一教会の支援を受けた井上義行参院議員は、教団の集会で「私は同性婚反対を、信念を持って言い続けます!」と声を張り上げて支持を呼びかけていた。
朝日新聞がスッパ抜いた統一教会系の「世界平和連合」が自民党議員の一部と交わしていた「推薦確認書」もそうだ。いわゆる「政策協定」だが、そこに<LGBT問題、同性婚合法化の慎重な扱い>という記載があった。自民党は、こうした政策協定をどの議員が結んでいたのかの調査をせず、ダンマリを決め込んでいるが、教団関連のイベント出席などを含めた党内の“統一教会汚染”が180人に及んでいることを考えると、自民党内がなぜLGBT法案に慎重なのかがよく分かる。
伝統的家族観を堅持しようとしているのは、右派組織「日本会議」も同様だ。200人近い自民党議員が議員連盟に名を連ねている。あの森友学園の幼稚園児が「教育勅語」を暗唱していたが、籠池泰典理事長は日本会議のメンバーだった。
さらには、自民党の全国会議員の7割弱が議連に参加する「神道政治連盟」の存在。昨夏の参院選直前に「同性愛は精神の障害、または依存症」などと差別的な記載のある冊子を議員に配っていたことが分かっている。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「もともと自民党は、統一教会や日本会議と『反共』『改憲』『マイノリティー蔑視』などの考え方で共通している。自民党の強固な支持基盤であり、それを一層強めようとしたのが第2次安倍政権時代です。中でも統一教会とは、岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三と3代にわたる付き合いがあり、信頼関係の下、結びつきが強まった。そうした中、自民党内で保守派の存在感が、どんどん大きくなっていったのです」
■世界から完全に置いてけぼり
民主党政権下で一時的に業界団体が自民党から離れた際、自民党は選挙で宗教団体を頼みの綱とし、右傾化が加速した側面もある。そして、安倍政権でますます宗教団体との関係が深まり、党内のリベラル派は苦い顔をしつつも、安倍に服従。アナクロ家族観が自民党の“主流”になってしまったのだ。
その間、世界は多様性と人権を重視して、さまざまな法整備が進んだ。いまやG7各国に限らず、33の国・地域で同性婚が認められている。女性を家制度に閉じ込め、ジェンダー平等から目を背ける自民党の価値観の古さは際立っている。
立憲民主党がいま、安倍政権時代の「失われた10年」を検証しているが、少子化を悪化させ、経済成長を阻み、賃金を上昇させられなかったのは、教育勅語を礼賛し、家族主義を標榜するような政治を続けてきた末路なのではないか。この10年で、日本は完全に、世界から置いてけぼりにされてしまった。
「失われた10年ではなく、『ぶっ壊された10年』ですよ。日本はいまはGDPで世界3位ですが、今年中にも人口8000万人のドイツに逆転されそうです。岸田首相もいつまで古い安倍路線を続けるんですか」(五十嵐仁氏=前出)
ちょっとだけ「寄り添うふり」は国民愚弄政党の常套手段だ。リベラルな宏池会の領袖のくせに、自らの保身と政権維持のために党内保守派の顔色ばかりうかがい続ける岸田は、亡国の首相と言わずして、何と言う。
元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース】 2023年02月10日 17:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。