【政局】:「組むメリットがなくなってきている」連立与党の冷え込む関係 “10増10減”選挙区調整めぐり不満続出
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:「組むメリットがなくなってきている」連立与党の冷え込む関係 “10増10減”選挙区調整めぐり不満続出
20年以上続く連立政権に異変が生じている。 自民党と公明党の関係が年明けから、異常なほどにギクシャクしているのだ。 ある自民党の関係者はこう公明党をこき下ろした。「本当に粘着質な組織だよ」<button class="sc-yyapj QSknM" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button>
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1999年の連立政権発足以来、政策決定・国会運営での協力に加え、各種選挙で同じ候補者を応援する選挙協力を続けてきた両党。その信頼関係を今、大きく揺るがしているのが衆議院の選挙区の“10増10減”に伴う候補者調整だ。 都市部で増える10の選挙区に、自民・公明どちらの候補者を立てるのか。 互いに譲ることのできない“自公抗争”の最前線を取材した。
■「国民民主と組めばいいんだよ」党幹部から連立疑問視の声
今年の2月末、国民民主党が2023年度予算案に反対をして、一時期永田町を賑わした「国民民主党与党入りの憶測」は完全に消えたと思われた。
しかし、自民党の幹部は、与党との距離が広がった国民民主党の「与党入り」をいまだに見据え、連立を組む公明党についてこう漏らしている。
「公明と組むメリットがなくなってきている。国民民主と組めばいいんだよ」(自民党幹部)
この幹部は、公明党から選挙応援を受けても、かつてほどの集票は期待できず、むしろ“逃げる”票があるのだと解説する。他方、連合という魅力的な支援団体を持つ国民民主党が連立政権に入れば、民間の労働組合の票が手に入るという皮算用だ。
公明党に近い自民党幹部も「公明党との絆はなくなる一方だ」と吐露するほどに、今、自公の関係は冷え込んでいる。背景には年明けから激化している抗争がある。
■東京で火花散らすなか、埼玉・愛知に候補者擁立
「“10増10減”による区割りの変更に伴って、新しい地域が割り当てられて、有権者と接することが必要になるところが出てきました。そこだけを、あらかじめ公認決定させていただいた」(公明党・山口那津男代表 1月27日)
公明党は1月、岡本三成元副財務大臣(現東京12区)を東京29区(荒川区・足立区の一部)で公認した。自民党との調整が決着する前に発表することで、公明党が先手を打った形だが、自民党側は不満を爆発させた。
翌日、自民党の高島直樹都連幹事長は「了解していない」と茂木敏充幹事長に抗議を申し入れた。いまだ自民党都連はファイティングポーズを下ろしていない。
「勝手な国替えは許すな。足をひっぱっているくせに」と、都連関係者は吐き捨てる。
3月3日には、公明党が候補者を出すことを検討していた東京18区(武蔵野市など)で、候補者の公募を開始。自民党の都連幹部は「公明党がこれ以上候補者を出さないよう塞いだ」と、公明党を強く意識したものだったことを認めた。
こうしたなか、再び公明党が動いた。 3月9日に埼玉14区(草加市など)で石井啓一幹事長、愛知16区(小牧市など)で伊藤渉政調会長代理と、党の幹部の公認を同時に発表したのだ。
「公明党もやってくれるよね、本当に粘着質な組織だよ」(自民党愛知県連関係者) 「自民党公認の候補でさえ、自民党員の7割が投票してくれればラッキーという状態。公明党の候補なんて応援しないよ」(埼玉県選出の自民党議員)
自民党愛知県連の丹羽秀樹会長は「調整のない中での突然の発表に、正直驚いている」と話し、公明党との調整不足を指摘する。 また、自民党埼玉県連の柴山昌彦会長は「自民党としてどうするかは、白紙の状況だ」と、公明党の候補を応援しない可能性も示唆する。
一方で、公明党の西田実仁選挙対策委員長は「了解を得ている」と、自民党の幹事長・選挙対策委員長は了承済みだと反論した。
■「票が増えない」公明党の本音
自民党内からは「なぜここまで公明党は強気なのか」との声も上がるが、公明党なりの“正論”がある。
「(全国の小選挙区の数)289のうち、私どもが過去出しているのは9ということですから。私どもが今回“10増”のところで要請をしていることは、全体のバランスからいって、なにか無理な要望をしているわけではない」(公明党・石井啓一幹事長 2月24日)
自民党の森山裕選挙対策委員長が「“10減”のところは全部、自民党がかぶっている」と公明党の要求に難色を示したことを受けた発言だった。 一方で、公明党の幹部からこんな本音も聞こえてくる。
「比例票が増えないなかで、都心部の選挙区にできるだけ立てたい」(公明党幹部)
背景には、党勢への危機感がある。公明党は、支持層の高齢化で組織力が衰え、去年の参院選の比例票は、目標とした800万票を大幅に下回る618万票に沈んでいる。
そのため、次期衆院選では、一定の知名度がある幹部を比例から選挙区に移し、なんとしてでも議席を獲得したい意図がある。関係者は「厳しい選挙区で勝ちあがってもらって、今後羽ばたいてもらうため」と、次期“公明党代表”候補の石井幹事長や、党のホープである伊藤政調会長代理に期待をかける。
さらに、公明党が「強気」な理由については、「焦り」の裏返しとの指摘もある。
「やはり大阪の状況だろうね。維新は、大阪市議会で過半数を占めたら、衆議院でも全ての選挙区で候補者を立ててくるかも。公明党はそこを懸念している」(自民党幹部)
日本維新の会は、過去4回の衆院選で、公明党が候補者を立てた大阪の4選挙区に関し、候補者擁立を見送ってきた。前回の衆院選では、これらの4選挙区を除く全ての選挙区で維新が勝利しており、公明党幹部も「大阪は相当厳しい」と焦りを口にする。
■どうなる連立関係
太くなる「新しいパイプ」も 一方で、関係修復に向けた動きもある。 今年の自民党大会。岸田総理は来賓として出席した公明党の山口代表を前に、“自公の絆”を訴えた。
「自民党と公明党が連立政権を発足させてから四半世紀近い時間が経とうとしています。積み重ねてきた両党の絆が揺らぐことは決してありません」(岸田総理 2月26日自民党大会)
岸田総理自身、「原発活用への政策転換」などで公明党に対し恩義を感じている面もあると周りは指摘する。また、複数の自民党関係者が「公明党の票がないと立っていられない選挙区も多い」と口にするなど、引き続き自公の協力を求める声も根強い。
一方の公明党側も、山口代表が「新しいパイプをつくっていかなければならない」と周囲に話すなど、自民党との良好な関係維持を模索している。
「政策的な問題はしっかりと与党として連携を密にしなければいけないということで、萩生田政調会長とは連携を密にしております」(公明党・高木陽介政調会長 3月8日)
公明党の政調会長である高木氏はこのように述べる一方、萩生田光一政調会長も「30年来ずっと一緒に仕事をしてきた。最も息が合うと自負している」と話すなど、両政調会長は新たな“自公のパイプ”といえる。
3月3日には物価高対策をめぐり、岸田総理が萩生田氏とともに、公明党の高木氏を院内大臣室に呼び出した。総理自ら、公明党の政調会長をわざわざ呼んで対面で指示を出すのは、異例のことだった。
萩生田氏と高木氏以外にも「新しいパイプ」をつくるべく、公明党の幹事長と自民党の幹事長らで夜の会食を行う予定も立てているという。
20年以上の時をともに重ねてきた“熟年夫婦”ともいえる自民党と公明党。冷え込んだパートナー関係も、対面のコミニュケーションを重ねることで改善されるのだろうか。
(TBSテレビ報道局政治部 与党担当 中野光樹)
元稿:TBS NEWS DIG Powered by (JNN系列) 主要ニュース 政治 【政局】 2023年03月12日 08:01:00 これは参考資料です。 転載等各自で判断下さい。