《余録・01.27》:歌舞伎には、主家の乗っ取りや天下を狙う大悪人が…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.27》:歌舞伎には、主家の乗っ取りや天下を狙う大悪人が…
歌舞伎には、主家の乗っ取りや天下を狙う大悪人が憎々しげに登場する。「国崩(くにくず)し」と呼ばれる敵役(かたきやく)の一つだ。天下人となる織田信長や豊臣秀吉の活躍を脚色した「祇園祭礼信仰記」の松永大膳はその代表格とされる

▲天下といっても、戦国時代は京都を中心にした山城、大和、河内、和泉、摂津の五畿内を指したという。近年の研究で、信長に先駆けた「戦国最初の天下人」として再評価されているのが三好長慶(ながよし)である
▲政務を執ったのが大阪府高槻市の三好山(約183メートル)にある芥川城だ。将軍を京都から追放し、1553(天文22)年に入城した。三方を芥川が巡る天然の要害に築かれ、本格的な建物跡や大手の石垣、土塁などの防御施設が発掘で見つかった
▲城には「国崩し」松永大膳のモデルとされる重臣・松永久秀も居住し、連歌師や儒学者も訪れる文芸の場ともなった。信長が上洛(じょうらく)前に入城していることからも重要性がうかがえる。2022年には国の史跡に指定された
▲そんな覇権を狙う戦国武将が行き交った高槻が、450年以上の時を経て盤上の戦いの舞台として注目されている。先月、市の誘致で大阪市から移転した関西将棋会館が開館。「将棋のまち」を掲げ、将棋づくしの市営バスも走る
▲先週は会館で西山朋佳女流3冠のプロ編入をかけた大一番があった。藤井聡太王将に永瀬拓矢九段が挑む王将戦第4局は来月、芥川城ふもとの旅館で開催される。文武を好んだという泉下の長慶も血を騒がせているだろうか。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年01月27日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。