【社説①・01.13】:2025年の政治 熟議深める新たな道筋を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.13】:2025年の政治 熟議深める新たな道筋を
2025年の政治は24日召集予定の通常国会で本格始動する。発足2カ月が過ぎた少数与党の石破茂政権下で、夏の東京都議選、参院選を控えた与野党の激しい攻防が予想される。
しかし各党の真価が問われるのは論戦の中身である。
開かれた議論を通じた幅広い合意に基づく政治をいかに実現するか。昨年の臨時国会でその萌芽(ほうが)は見えたが、新たな形はいまだ定まっていない。
野党の協力なしには予算も法律も成立しない以上、与党にとっては妥協が大前提となる。だが「数合わせ」のために一部の野党の主張を丸のみするだけでは熟議とは言えない。
野党も賛否のカードを単なる駆け引きに使う交渉は慎まねばならない。独自政策はそのリスクや財源についても一定の説明責任を果たすのが当然だ。
政策全体の整合性を欠いたポピュリズム(大衆迎合主義)や党利党略を排し、与野党は立法府主導による国民本位の政治を真摯(しんし)に探り続けねばならない。
■1強体質脱却せねば
通常国会は政府・与党が新年度予算案の衆院通過を目指す2月下旬から3月初めがまずヤマ場となろう。
首相は政策ごとの部分連合で衆院審議を乗り切りたい構えだ。国民民主党と日本維新の会を対象に想定し、与党が所得税非課税枠「年収103万円の壁」の引き上げや教育無償化についてそれぞれ協議を続ける。
しかし、焦点が個別政策に偏り、協議の詳細が国民に見えないのは問題だ。予算審議は国会での多党間による透明性の高い議論を基本とすべきである。
首相は一見、低姿勢で丁寧に答弁しているようで結局は核心部分をはぐらかす場面が多い。自民1強時代は歴代首相によるそうしたかみ合わない答弁が国会の空洞化を招いた。
同じ対応を繰り返すようでは熟議にはほど遠い。
首相は昨年末、予算案が否決された場合に衆院を解散することも「あり得る」と述べた。野党をけん制する前に、国会の議論を実のあるものにするよう答弁姿勢を改めるのが行政府の長としての責務である。
少数与党の国会はこれまでの1強政権が強引に押し通してきた政策を見直す好機にもなる。改めるべき第一は対米追随一辺倒と言われても仕方のない外交・安全保障ではないか。
首相は2月以降に訪米し、今月大統領に就任するトランプ氏と首脳会談を行う見通しだ。
その前に、米国からの巨額の装備品購入を続け膨張する一方の防衛費について、予算委員会での徹底論議が求められよう。
ほかにも福島の教訓を忘れたかのような原発回帰路線や膨らみ続ける財政赤字など、重要な論点は多岐にわたる。
国民生活を左右する予算案の全体像を問うとともに、細部の費目に至るまで点検する―。その上で、政府・与党は野党の意見に耳を傾けて予算案の組み替えに柔軟に応じる必要がある。
■企業献金は禁止が筋だ
深刻な政治不信を招いた政治とカネの問題も、今度こそ抜本改革を成し遂げねばならない。
30年前の改革の積み残し課題である企業・団体献金の禁止は3月までに結論を出す与野党合意がある。営利を目的とした企業が何の見返りも求めずに献金するのは考えにくく、政策がゆがめられかねない。
野党はこうした問題でこそ一致して禁止に持ち込むべきだ。
改革が必要なのは政治とカネに限らない。首相は年頭会見で選挙制度見直しの必要性に言及した。現行の小選挙区比例代表並立制は少数派の意見が反映されにくい。与野党は早急に協議の場を立ち上げるべきだ。
選択的夫婦別姓は与党の公明党を含め自民党を除く大半の政党が賛意を示す。個人を尊重し、多様性に富んだ社会を目指す上で欠かせない制度だ。この国会で実現したい。
■野党は政権像を示せ
仮に新年度予算案が成立しても、会期末には内閣不信任決議案が提出される可能性がある。野党が一致すれば可決する。その場合、衆院解散か内閣総辞職かの緊迫した展開となる。
野党第1党の立憲民主党は、不信任案提出の重みを理解し、慎重に見極める必要がある。提出する場合は、野党連携の枠組みと政権構想を準備して国民に示さなければならない。
7月の参院選の行方も不透明だ。与党が敗れて過半数割れとなるようなことがあれば、一気に政権交代の機運が高まろう。
首相は、参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」の可能性を否定していない。
だが、衆院への民意は昨年示されたばかりだ。同日選が与党に有利とみて、あわよくば衆院の過半数を回復したいとの思惑は筋が通らない。
民主主義は手間暇と時間をかけて磨かれてゆく。有権者も目先の動きに惑わされず、冷静に政治の動向を見極めたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月13日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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