【社説②・01.14】: 教員の職場環境 着実な人手確保が必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.14】:教員の職場環境 着実な人手確保が必要
公立小中学校の教員の給与改善や負担軽減に関する政府の新たな方針が決まった。
残業代の代わりに給与に一律で上乗せされる「教職調整額」を現行の基本給4%から段階的に引き上げ、2030年度に10%とする。中学校の1学級の上限人数は26年度以降、現行の40人から35人に順次引き下げる。
文部科学省は当初、調整額について25年度からの13%増額を求めたが、財務省が残業の削減を条件づける独自案を掲げて対抗する異例の展開となった。
決着はしたが、内容は依然不十分だ。職場環境の悪化は病気による欠員や志望者減少に直結し、さらに教員の負担が増す悪循環が続く。政府には教職員数の着実な確保と働き方改革の不断の取り組みが求められる。
折衝では財務省が中学校35人学級を認めたことから、文科省が調整額で譲歩した。
35人学級は小学校で先行し、25年度に完了する。これに続く形で中学校は26年度から中1で導入し、3年かけて進める。
ただ道内を含む地方では少子化の影響などで既に35人以下の学校が多い。それでもいじめや不登校、デジタル化の対応などで業務は増え、30人学級を求める声も根強い。政府の方針に現場からは「負担軽減の恩恵は薄い」と不満の声が上がる。
文科省は小学5、6年で導入済みの教科担任制を25年度から3年まで広げることも求めたが結局、4年までにとどまった。
政府の25年度予算案では教職員定数が児童生徒の自然減に伴い約9千人減り、今回の増員分を加えても実質減となった。少子化を理由に教員を機械的に減らせば、増えた業務に対応できまい。政府は実態に即した教員の定数を考えねばならない。
文科省の調査では、残業時間が月45時間を超えた教員は減少傾向にあるものの23年度は中学校で4割を占める。精神疾患で休職する教員は3年連続で過去最多を更新し7千人に達した。
こうした事情は教職の不人気も招く。ベテランの大量退職で採用数が増えたことも追い打ちとなり、23年度の公立学校教職採用試験の倍率は小中高校とも過去最低だった。教育の質の低下も懸念される。
働き方改革に向け両省は、保護者からの電話対応や部活動を外部に任せ、教育委員会ごとに業務管理計画を策定するなどして、5年間で平均残業時間を30時間程度にする目標を掲げた。
現場の努力には限界がある。文科省は膨らみ続けた授業時間の精査など抜本的な見直しを責任を持って行う必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月14日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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