【筆洗】:繰り返し戦火を交えた中東のエジプトとイスラエルは一九七九年…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:繰り返し戦火を交えた中東のエジプトとイスラエルは一九七九年…
繰り返し戦火を交えた中東のエジプトとイスラエルは一九七九年、平和条約を結んだ。仲介役は、米国のカーター政権である
▼前年、両国首脳を米大統領の別荘キャンプ・デービッドに招き、何日もこもり交渉した。カーター氏の回顧録の和訳(日高義樹監修)に交渉前の心境がある。「背後の橋を焼き落として背水の陣でキャンプ・デービッドにおもむこうとしているのだと感じていた。この会談は政治生命のすべてを賭けた勝負だった」。別荘は木々に囲まれている。カーター氏は交渉の合間、一人で寂しい場所に出かけて考えごとをし、祈った
▼中東のサウジアラビアとイランが関係正常化で合意し先日、外相会談があった。場所は仲介した中国の首都北京。中国の国務委員兼外相を中央に三者が握手する写真を新聞で見た
▼資源が豊富で戦火が珍しくない中東。米国の存在感低下が言われるなか、アジアの巨龍にはそれに代わるぐらいの野心があるのだろうか
▼カーター氏は八〇年大統領選で敗れた。前年、親米政権が倒れたイランで米大使館員が人質にとられる事件が起き、対応に手間取って人気が落ちていた。退任前、かの別荘を家族とともに訪れる場面が回顧録にあるが、エジプト、イスラエルと交渉を重ねた書斎など思い出の場所をカメラに収める姿が寂しい
▼やはり中東に関わらんとする国には、相応の覚悟がいる。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2023年04月08日 07:08:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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