【社説①】:対話型人工知能 共存を慎重に探りたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:対話型人工知能 共存を慎重に探りたい
利用者の求めに応じて、まるで人が答えているような文章を生成できる対話型人工知能(AI)が急速に広がり、期待と不安が交錯している。利便性や生産性が向上する一方、思考力が低下し、偽情報や差別がまん延する恐れがあるからだ。どうすれば共存できるのか、慎重に探りたい。
対話型AIは、質問を入力するとウェブ上に存在する膨大なデータを学習し、その内容を踏まえて考えて回答する。代表的なものが米新興企業オープンAIが昨年十一月に一般公開したチャットGPTで、利用者は一億人以上に上る。
同社は、最近発表されたより高度な「GPT−4」が、米司法試験の模擬試験で上位10%のスコアで合格したと明らかにした。
日本の国会質問でも取り上げられた。自民党は政府や自治体に対し、国会答弁の下書きや議事録の作成、市民からの問い合わせなどで活用するよう提言している。
一方、教育現場では懸念が広がる。試験解答や作文を瞬時に作成できることから、文部科学省は取り扱いを巡る指針を作成する。
機密情報や顧客情報を与えると広く漏えいする恐れもある。イタリア当局は、膨大な個人情報を違法に収集した疑いがあるとしてチャットGPTの使用を一時的に禁止すると発表。他の欧州諸国でも規制強化を求める声が広がる。
偽情報や憎悪発言の「学習」を続ければ民主主義への脅威となり得る。バイデン米大統領が「国家安全保障への潜在リスク」に言及し、IT企業に安全性の確認を求めたのはそうした認識からだ。
米国では適切なリスク管理ができるまで、より強力なAI開発は中止すべきだとの声も挙がる。
チャットGPTに「自らの欠点は何か」と尋ねたら「情報の正確性に限界がある」「創造性に限界がある」「誤解や偏見を持つことがある」「意思決定を行うことができない」などと答えた。
もはや後戻りできないところまで進化を続けてきたAIとどう共存し、人間社会に生かすのか。それは結局、人間自身が考え続けなければならない問題でもある。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月08日 07:09:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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