【社説②】:次世代太陽電池 日本発の技術で脱炭素加速を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:次世代太陽電池 日本発の技術で脱炭素加速を
脱炭素に向け、日本発の技術による次世代太陽電池への関心が高まっている。世界の開発競争が激しさを増す中で、日本は技術の優位性を生かし事業化を急ぐべきだ。
次世代太陽電池は「ペロブスカイト太陽電池」と呼ばれる。ペロブスカイトとは、特殊な結晶構造のことを指し、この構造を持つ化合物を液体に溶かしてフィルムなどに塗ることで製造する。
現在の太陽光発電は、シリコンを使ったものが主流だが、シリコンは割れやすく、強化ガラスで保護する必要がある。
ペロブスカイト型はシート状に加工できるため、軽いほか、折り曲げられるのが特徴だ。
ビルの壁面や窓、電気自動車(EV)の屋根などに貼ることができる。室内の弱い光でも発電が可能で、スマートフォンやIT機器への搭載も想定されている。
桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が世界に先駆けて開発し、2009年に論文を発表した。世界の脱炭素をリードする意味でも、日本が実用化で先頭に立ちたい。
山間部が多い日本では、太陽光発電の適地が少ないが、ペロブスカイト型を使えば、設置場所を大幅に拡大することができる。
主原料となるヨウ素は殺菌剤などに広く使われ、日本が世界2位の生産量を持つ。資源を輸入に頼る日本にとって、エネルギー安全保障の点からも重要性が高い。
発電技術そのものは既に確立しており、大量生産のための製造技術の向上が今後の課題だ。
政府は25年の実用化を目指している。これまでに500億円規模の資金を確保し、企業の量産技術の研究開発を後押ししてきた。
国内では、積水化学工業が自社施設の外壁に設置して、量産化に向けた実証実験を始めたほか、パナソニックホールディングスや東芝、化学メーカーのカネカなどが事業化に取り組んでいる。
日本は、ペロブスカイト型の基礎的な研究では世界をリードしてきた。しかし、事業化のための量産では、猛追する中国や欧州勢に先行されたといい、日本も生産体制の整備が急務だ。
シリコン型の太陽電池でも、日本はかつて世界シェア(占有率)の過半を占めたが、その後、中国企業に価格競争で敗れ、撤退する企業が相次いだ。今では世界の生産能力の8割超を中国が握る。
日本発のペロブスカイト型で、同じ 轍 を踏んではならない。国の重点的な支援に加え、関連企業の連携強化も必要ではないか。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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