【社説②】:エネルギー協調 インドの参加を市場安定化に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:エネルギー協調 インドの参加を市場安定化に
日米欧を中心にエネルギー消費国で構成する国際エネルギー機関(IEA)が、インドの新規加盟に向けて交渉を始めることになった。
エネルギー市場の安定化や脱炭素に向け、先進国と新興国の協調を加速させたい。
交渉開始は、2月に開かれたIEAの閣僚理事会で決まった。
インドは石油消費量で世界3位だ。世界のエネルギー需要の中心は近年、先進国から新興国に移り、主に先進国でつくるIEAの影響力は低下している。インドがメンバーに入る意義は大きい。
「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国の盟主を自任するインドは、国際機関での発言力を高める狙いがあるのだろう。
IEAは第1次石油危機後の1974年に、石油消費国が協力して価格の安定を図るため、米国の提唱をきっかけに設けられた。
経済協力開発機構(OECD)の下部組織で、昨年末時点で31か国が加入している。インドが参加すれば、アジアでは日本、韓国に次ぐ3か国目となる。
IEAの加盟国は、石油輸入量の90日分を備蓄する義務がある。緊急時には、加盟国が協調して備蓄を放出する。ロシアのウクライナ侵略で原油価格が暴騰した2022年には、連携して放出を行い、価格の抑制に取り組んだ。
インドが加われば協調放出の有効性が増し、加盟国のエネルギー安全保障の強化につながろう。
新興国を巻き込み、世界の脱炭素を進める効果も期待できる。
IEAは昨年、30年までに太陽光発電などの再生可能エネルギーを、世界全体で現在の3倍に増やすとの目標を打ち出したが、温暖化対策に実効性を持たせるには、新興国との連携が不可欠だ。
インドは石炭火力発電に依存している。IEAに入れば、先進国から再生可能エネルギーの技術協力も得やすくなるはずだ。
インドの加入を機に、他の新興国も国際ルール作りに参画し、責任を持って脱炭素に取り組む機運を高めることが望まれる。
日米仏などは既にインドの参加を支持すると表明しているが、実際の交渉には課題も残る。
インドの石油備蓄量は現在、10日分に満たず、加盟に際し90日分に積み増すことが求められる。また、IEA参加はOECDへの加入が条件となっているが、インドは加入を希望していないとされ、要件の見直しも必要となる。
関係国で協議を重ね、早期に一致点を見いだしてもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月02日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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