【社説①】:ガザの国連職員 信頼失墜させるテロへの加担
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ガザの国連職員 信頼失墜させるテロへの加担
国連職員がテロに加担していたとすれば、組織の信頼性は失墜し、現地での活動が制約を受けるのは避けられない。再発防止には、組織運営の抜本的改革が不可欠だ。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、イスラム主義組織ハマスによる昨年10月のイスラエル奇襲に現地職員12人が関与していたと発表した。12人は、女性の拉致や武器の提供などに関わったとされる。
ガザ地区では長年、UNRWAが住民への医療サービスや子供の教育などを担ってきた。ガザを統治するハマスも、貧困層への支援で支持を広げた経緯がある。
現地職員はパレスチナ人で、反イスラエル感情は一般住民と変わらないだろう。イスラエル 殲滅 を掲げるハマスに共感する職員がいたとしても不思議ではない。
だが、だからといって、公正中立であるべき国連職員がテロの片棒を担ぐ行為は許されない。
ハマスの奇襲に協力した現地職員は、12人のほかにいないのか。UNRWAは、組織全体に疑惑の目が向けられていると認識すべきである。信頼回復に向け、疑惑の全容解明と職員の管理体制の強化を急がねばならない。
問題発覚を受け、米国や日本、欧州など十数か国がUNRWAへの資金拠出を一時停止することを決めた。組織改革の成果が示されるまで、厳しい措置を取るのはやむを得まい。
ただ、ガザでの国連の支援活動は、各国の拠出金に頼っている。拠出停止の長期化によって、ガザの人道状況がさらに悪化するような事態は回避する必要がある。
ガザではイスラエルによる攻撃が4か月近く続いている。ガザ保健当局の発表では、死者は2万7000人を超えたという。
国際司法裁判所(ICJ)は1月、イスラエルにジェノサイド(集団殺害)を防ぐための「あらゆる措置」を求めた。イスラエルはこれを深刻に受け止め、自衛の範囲を超えた過剰な攻撃を自制することが重要だ。
イスラエルとハマスは停戦交渉を続けている。合意が実現した場合は、ガザの統治を誰がどう担うかが焦点となる。統治体制からハマスを排除すべきだというイスラエル側の主張は理解できる。
国連が中立的な立場から主要な役割を果たすことが望まれるが、テロに加担しているとなれば、新たな統治機構づくりの議論は進まないだろう。国連は現地組織を刷新し、汚名を 払拭 すべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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