《余録・01.06》:「みちのくの小京都」と呼ばれる地は…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.06》:「みちのくの小京都」と呼ばれる地は…
「みちのくの小京都」と呼ばれる地は何カ所かある。武家屋敷など古い街並みが残る岩手県奥州市の水沢地区はその一つ。今は「米大リーグ、大谷翔平選手の故郷」という方が有名かもしれない
▲水沢は、大谷選手だけでなく多くの偉人を輩出した「偉人のまち」でもある。シーボルトの弟子だった江戸時代の蘭学者、高野長英、東京市長などを歴任した後藤新平、第30代首相を務め、2・26事件で亡くなった斎藤実は「三偉人」と称される。さらに、第1回文化勲章を受けた天文学者、木村栄(ひさし)もゆかりの人物だ
▲石川県出身の木村は1899年、水沢の「緯度観測所」で観測を始めた。地球の自転軸の動きに伴って緯度が変化する現象を、北緯39度8分に位置する世界6カ所で観測するプロジェクトに参加した。だが、水沢のデータは「精度が低い。50点の出来」と酷評された
▲「日本の名誉を回復せねば」と半年間苦悶(くもん)し、誤差の原因となる「Z項」を突き止めた。天文学の謎を解明する発見となり、日本の観測精度の高さも証明した。その論文が発表されたのが1902年のきょうのこと
▲水沢の施設は現在、国立天文台の観測所となり、史上初のブラックホール撮影に貢献するなど、世界の最先端を走り続ける
▲ただ、近年は研究費が減り、若手育成などで苦労する状況が生じているという。研究環境を守る方策も必要だ。新たな偉人を育む土壌がやせ、日本の実力の高さを世界に示した木村以来の流れが止まってしまってはもったいない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます