【卓上四季】:火星の人
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:火星の人
アンディ・ウィアー作のSF小説「火星の人」は、火星に取り残された植物学者のサバイバル術が面白い。映画化もされ、宇宙研究の現在地がわかる
▼火星の大気中の二酸化炭素から酸素を、機械燃料から水素を抽出し、水をつくる。火星と地球の土を混ぜ、バクテリアを繁殖させて農地にし、ジャガイモを育てて食料に。太陽光発電で地球と交信し、約2年後に救助されて地球に戻る
▼作り話と言い切れないのは、具体的な課題が見えてきたためだ。東京理科大のスペース・コロニー研究センターによれば、健康維持、食物とエネルギーの生産、水・空気の浄化の技術が宇宙居住の実現に重要である
▼鍵を握るのは、人体の骨形成に影響する無重力と、DNAを傷つけがんの原因になる放射線をどう克服するかだ。目標が明確になってくると、将来100万人が住めるようにするという米富豪の「火星移住計画」も笑い飛ばせなくなる
▼激しさを増す国際競争に後れを取るまいと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が久々に宇宙飛行士募集を再開した。理系出身に限っていた条件を改め、多様な人材育成を狙っている
▼宇宙飛行士の山崎直子さんは、名誉館長を務める札幌市青少年科学館での講演で、「挑戦することが大切。自信は後からついてきます」と子どもたちを励ました。星空の美しい北の地から最初の「火星の人」が誕生しないものか。2022・1・21
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2022年01月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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