【社説①】:AIのルール まずは国内で規制に取り組め
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:AIのルール まずは国内で規制に取り組め
生成AI(人工知能)の危険性を国際社会に訴えていく意義は大きい。ただ、国内でAIの開発を優先していては説得力を欠くのではないか。
まずは国内でAIの法規制を強化する必要がある。
パリで開かれた経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会で、AIの規制と活用の両立を図るため、新たな国際枠組みを創設することで合意した。岸田首相が報告したもので、加盟国を中心に約50か国・地域で構成する。
生成AIを巡っては昨年末、既に先進7か国(G7)が国際ルールをまとめている。
このルールでは、AIの開発者に対し、市場でAIの技術を活用する前に、犯罪を助長する恐れがないかなどリスクの点検を求めた。また、AIが作った画像かどうかを判別するため、電子透かしなどの技術の導入も提案した。
今回、OECDが新たな枠組みを作ることで合意したのは、G7がまとめたルールをより多くの国で共有する狙いがある。
欧州では、AIで作った偽情報や動画が、選挙を混乱させかねないといった警戒感が強まっている。日本ではSNS上に、著名人が投資を呼びかける偽の広告が氾濫し、詐欺被害が広がっている。
AIの負の側面を直視し、危険性を取り除くことは国際社会全体の課題と言えるだろう。
政府は、今回の枠組み作りを主導し、参加国の共感を得た。一方、国内ではこれまで著作権法の改正には取り組まず、AIの規制に消極的だ。業界の自主規制にとどめ、活用に積極的になっている。
日本は2018年、著作権法を改正し、著作権者の許可なく文章やイラストなどをAIに学習させることを認めた。
この状態を放置していたら、芸術家やクリエイターらは創作活動への意欲を失うだろう。著作物を含む知的財産の重要性を政府はどう考えているのか。
首相はOECDでの演説で、ネット上にある情報の真偽を区別するための技術開発を支援する考えを表明した。
現在、報道機関などが研究している、第三者機関が情報の信頼性を保証し、画面上に表示する「オリジネーター・プロファイル(OP)」を念頭に置いたものだ。
そうした技術開発を支援することは大切だが、AIのリスクはそれだけで低減されるものではない。法規制を進めている欧州を参考に、著作権法の再改正を含めて検討すべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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