【社説②・12.05】:子どもとSNS 安全最優先で対策議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.05】:子どもとSNS 安全最優先で対策議論を
オーストラリア議会で、16歳未満の交流サイト(SNS)使用を禁止する法案が可決された。
暴力を誘発する有害投稿の閲覧やSNSを介したいじめ被害などを防ぐことが狙いだ。同様の問題は日本を含む各国に共通し、規制に乗り出す動きも見られるが国家レベルで子どもの使用を禁じる例は世界初という。
SNSが若者に与える悪影響は深刻化する。ただ大人と同様、有益情報の獲得や意見表明の手段としても定着している。
最優先されるべきは子どもの安全や健やかな成長である。規制の是非やその内容を含め、どんな対策が必要か日本でも議論を深めていかねばならない。
可決された法律はSNS事業者にアカウント作成時の年齢確認を義務づけた。違反すると最高約50億円の制裁金を科す。
アルバニージー首相は「事業者は子どもの安全が最優先であると保証する社会的責任を負うことになった」と述べた。
子どものSNS利用のリスクは有害情報の閲覧などに加え、依存性の問題が見逃せない。
オーストラリアでは肥満を気にしていた子どもがSNSのダイエット関連の動画を閲覧し続け、拒食症になり自殺した。
事業者は検索履歴から関心事を予測する「プロファイリング」の手法を使い、関連情報を配信して収益につなげている。その仕組みが悲劇を招いた。
10代は脳が発達段階で、SNSの過度な利用が感情や行動に関わる部位に影響するとした米国の調査報告もある。子どもはSNSのリスクに脆弱(ぜいじゃく)だということを認識せねばなるまい。
可決された法律は年齢確認をどう行うのかなど課題が多い。規制の抜け道もあるだろう。
いじめや虐待の被害者がSNSで相談機関に訴える例は相次ぐ。子どもを救うケースがあることにも留意が必要だ。
日本政府はネット利用を巡る子どもの保護を話し合う専門家の検討会を設置した。表現の自由を侵害しない前提で、子どもを守る措置としてどんな手法が適切か議論を深めてほしい。
規制によらない、事業者の自発的な取り組みは強く求められる。利益を優先し子どもの安全対策が後手に回ることは許されない。有害情報の削除や閲覧防止措置を講じるだけでなく、子どもの検索履歴の分析を抑制することも必要ではないか。
さらに学校や家庭では、SNSにリスクがあるという前提に立ったリテラシー教育が重要となる。子どもが自ら判断し、必要に応じて距離を置く意識を育てていかねばならない。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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