【社説①・12.05】:韓国の非常戒厳 民主主義否定する暴挙だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.05】:韓国の非常戒厳 民主主義否定する暴挙だ
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が、野党が国政をまひさせているとして突然、非常戒厳を宣言した。
戒厳司令部が政治活動の禁止と言論の統制を布告して軍が国会に突入したが、国会は戒厳解除を要求する決議を可決した。尹氏は憲法の規定に従い、宣言から約6時間後に解除を表明して軍を撤収させた。
低支持率と少数与党のために政権運営が行き詰まる中で、尹氏は事態打開を狙って強硬手段に踏み切ったのだろう。
だが非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態で宣言できると憲法で規定されている。今回は恣意(しい)的な発動と言うほかなく民主主義を否定する暴挙だ。
野党は尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。与党からも責任を問う声が強く、大統領府の側近は一斉に辞意を表明した。尹氏の任期は2027年まであるが、辞任圧力が強まっている。
与野党は混乱を最小限に抑え、対話を通じて収束を図ってもらいたい。
韓国の戒厳令は、軍の弾圧で多くの市民が犠牲になった光州事件などが起きた1980年代初頭以来で、87年の民主化後は初めてである。
民主化は長期の軍事独裁政権の後、市民の粘り強い闘いで勝ち取ったものだ。尹氏の強権発動はその歴史と成果を台無しにしたと言わざるを得ない。
2年前に発足した尹政権は独善的とも言われる政治手法が批判され、支持率は低迷した。今年4月の総選挙で与党が惨敗したことで、与野党対立はさらに激しさを増していた。
野党は政権や検察などへの弾劾訴追案を多数発議し、政府予算案の削減も迫って尹氏を追い詰めた。政争を優先せず冷静な対応が求められる。
韓国では長年、保革が激しく対立し、国を二分してきた。理念の違いに加え、経済や地域などの格差が分断に拍車をかけている。与野党ともこうした問題に目を向ける必要があろう。
尹政権は対北朝鮮で強硬姿勢を取り、南北関係は悪化している。北朝鮮が核・ミサイル開発を加速し、ロシアとの軍事協力を進める安全保障環境の中、韓国の安定化は欠かせない。
尹氏は日韓関係の改善に尽力した。来年は国交正常化60年で、石破茂首相とは対話の頻度を高めることで一致していた。首相は来月の訪韓を調整していたが、影響は避けられまい。
トランプ次期米大統領の就任を控え、国際情勢は不透明感が増している。こうした時こそ隣国同士の日韓が連携して対応することが重要である。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月05日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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