【筆洗】:動物との交流に生きた「ムツゴロウ」こと作家の畑正憲さんは幼…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:動物との交流に生きた「ムツゴロウ」こと作家の畑正憲さんは幼…
動物との交流に生きた「ムツゴロウ」こと作家の畑正憲さんは幼少時、満州の開拓団の村で暮らした
▼医師の父が赴任したため。電気も水道もガスも店もなく、少年雑誌購読なども縁がなかったが、周囲の自然が友だった
▼鳥や獣が多く、その雛(ひな)や子を捕まえては納屋で飼い、小川で魚を釣って餌にした。「私のまわりにはのべつ動物がいて、あの雄弁な愛くるしい瞳で見上げていた。(中略)私の中にある大切な部分は、この頃形造られたのではないかと思う」と著書『ムツゴロウの青春記』にある
▼訃報に接した。ライオンに指をかまれようとくじけず、動物に愛情を注いだ人。動物たちが暮らす「動物王国」を北海道東部に開く前年の一九七一年、近くの無人島に妻や小学生の娘と移住。電気、ガス、水道のない島で一年暮らした。「生き死にに関わるような自然の変化に耐え、そこを突破することが、人間が生きる上で一番大切ということ。それを娘に教えたかった」と昨年の読売新聞で語っている。満州体験も影響したのだろうか
▼父は満州に渡って医師免許を得た苦労人。無医村で開業し、頼りにされた。畑さんも誇りだったようで当時をこう振り返っている。「私たちは非常に幸福だった。家の中に笑い声が絶えなかったし、皆生き生きと生活していた」
▼家族の情を知るゆえに、自然や動物への愛も育まれた気がする。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2023年04月07日 06:29:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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