【社説②】:台湾総統の訪米 米中対話で緊張回避を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:台湾総統の訪米 米中対話で緊張回避を
台湾の蔡英文総統の訪米を機に米国と中国との関係がまたも緊張している。米中が繰り返し角突き合わせていると、偶発的武力衝突など危険な事態にもつながりかねない。冷静な対話を通じ、緊張を高めぬよう両国が心すべきだ。
蔡総統は外交関係を保つ中米二カ国訪問の経由地として米国に立ち寄った。訪米は四年ぶりだが総統就任後七回目と珍しくはない。中国が激しく反発するのは復路でロサンゼルスに立ち寄り、マッカーシー米下院議長と会談したからだ。
会談終了後にマッカーシー氏は「米台の友情は経済的自由の維持と、平和と地域の安定に重要だ」と語り、米台蜜月を印象づけた。かねて「米国主導の国際秩序」を批判し、台湾統一のため「武力行使」の選択肢までちらつかせる中国をけん制した形だが、蔡総統には、ロシアのウクライナ侵攻以来高まっている台湾住民の不安を和らげる狙いもあったのだろう。
留意すべきは、下院議長は大統領の職務継承順位が副大統領に次ぐ二位の要職である点。昨年八月にペロシ前下院議長が訪台した際には、猛反発した中国が大規模軍事演習を強行し、極度に緊張が高まったことは記憶に新しい。
総統訪米に当たって、米政府は「『一つの中国』政策に変わりはない」と強調。蔡氏の訪問は「私的で非公式」と表明し、配慮を示したが、下院議長との米国での初会談が中国の神経を逆なですることは目に見えており、「強行」すべきだったかは疑念が残る。
一方、中国にも冷静な反応が求められる。会談を受け、中国報道官は米国に「断固とした反対と強い非難」を表明する談話を発表。会談直前には空母「山東」を中心とする艦隊が初めて西太平洋の台湾沖で訓練を行ったという。武力を背景にこれ以上、反発をエスカレートさせることは慎むべきだ。
台湾の防空識別圏への中国軍機の侵入は二〇二〇年の延べ約三百八十機から、昨年は同千七百機余に急増している。台湾への過剰な圧力はかえって民心を離反させるだけだ。そのことを中国は肝に銘じておくべきだろう。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月07日 07:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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