【社説・12.27】:学習指導要領改定 負担減図り多様な学びを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.27】:学習指導要領改定 負担減図り多様な学びを
多様な子どもに対応しつつ、教員の負担解消への目配せが必要だ。阿部俊子文部科学相が小中高校で学ぶ内容や授業数を定める学習指導要領の改定を中教審に諮問した。
1こまの授業時間を5分短縮し、余剰時間を個別学習に充てることなどを想定している。学ぶ意義を見いだせない子どもや不登校の増加などを踏まえ、画一的な教育から脱した「多様性を包摂する教育の実現」を目指す。学校現場の裁量を拡大し、教育課程の柔軟化を図る狙いがある。
教育現場の負担に配慮し、年間の総授業数は「現状以上に増加させない」とした。教員の負担軽減を図りながら新たな学習指導要領を実施することが求められる。
中教審は2026年度中に改定内容を答申する方針で議論を進める。次期指導要領の全面実施は、小学校が30年度、中学校が31年度、高校は32年度以降になる見通しだ。
学ぶ意義を見いだせない児童・生徒への対応が必要なのは間違いない。各学校にはそれぞれの特色があり、カリキュラムの編成で学校の裁量が増えれば、子どもが興味を示す分野から学習範囲を広げることもできる。
「小学校45分」「中学校50分」と規定されている1こまの授業時間を5分短縮し、浮いた時間を個別学習や探究的な学びに振り向ける。具体的な内容は各学校に委ねられるが、子ども自身が学びたいことを深掘りすることで、一つの分野から興味の範囲が広がることも期待できよう。
今回の指導要領改定の背景にあるのは、不登校など学校現場が抱える危機感である。
23年度の県内の小中高校の不登校者数は前年度比1387人増の8240人で、小中は過去最多。小学校の千人当たりの不登校者数は32.7人で、全国平均の21.4人を大きく上回りワーストだった。
不登校の原因はさまざまだが、「勉強についていけない」というのも理由の一つに挙げられる。学校には授業の内容が簡単すぎるという子も、つまづく生徒もいる。習熟度に合わせた丁寧な指導で学ぶ意欲を引き出すことができれば、学校に来る楽しみをつくり出せるかもしれない。
多様な子どもたちへの配慮はもちろん重要だが、教員への負担の解消にも配慮しなければならない。
県高校障害児学校教職員組合(高教組)が実施したアンケートで、「長時間勤務の改善」が進んでいないとした回答が53.8%に上った。教員の負担軽減が課題となる中、諮問では年間の総授業数は「現在以上に増加させない」としたが、新制度導入で教員の負担が大幅に増えるなら働き方改革と逆行する。
学習指導要領は将来ある子どもたちに最適な教育を提供するための羅針盤だ。目指すべき教育の在り方を明確にして議論を進めると同時に、常態化する教員の長時間労働も改善を図るべきだ。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月27日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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