【社説①・01.14】:札幌の運動施設 整備のあり方広く議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.14】:札幌の運動施設 整備のあり方広く議論を
札幌市が冬季五輪の競技会場として検討したスポーツ施設整備について、ほぼ計画通りに進める方針を示している。施設は老朽化し更新が必要だという。
市民の健康づくりをはじめ、選手の育成、観光の面からもスポーツ振興は大事だ。
ただ五輪招致は実現せず、国からの補助金は見込めなくなった。資材高騰や人手不足で整備費はかさむ。環境保全の課題も浮上した。
事業を進める前提条件が大きく変わったと言える。ここはいったん立ち止まるべきだ。
スポーツ施設整備のあり方を巡り、市議会はもちろん、広範な市民論議の場が必要だ。
秋元克広市長は昨年11月の記者会見で大倉山ジャンプ競技場(ラージヒル)にノーマルヒルを併設する「デュアル化」を計画通り進める考えを表明した。
デュアル化は世界の趨勢(すうせい)だ。競技団体も望む。ただ整備には約1万平方メートルの人工林伐採が必要で、招致計画では90億円だった整備費の上振れも必至だ。
秋元市長は現在のリフトをゴンドラに替え、観光施設としても活用する考えを示したが、競技者からは手軽に移動できるリフトが便利との声もある。
費用を負担するのは市民であり、丁寧な合意形成が必要だ。整備費の新たな積算や人工林伐採に伴う環境への影響などのデータや情報を分かりやすく提示し、市民や競技団体、観光関係者らから大倉山の将来像について幅広く意見を聞くべきだ。
デュアル化すれば宮の森競技場(ノーマルヒル)は廃止となる。1972年札幌五輪で日本勢が表彰台を独占した記憶を何らかの形で継承したい。
市は72年大会でアイスホッケー会場だった月寒体育館を大和ハウスプレミストドーム(札幌ドーム)の敷地内に移転し、アイスリンクに加え、多目的アリーナを新設する方針だ。
バスケットボールのレバンガ北海道は本拠地の道立総合体育センター「北海きたえーる」の改修費2億円を全額負担し、Bリーグ・プレミアの参入条件を満たした。市は、よりグレードが高いアリーナを将来の本拠地としてもらう計画だ。
ただ市議会には過剰な整備だと見る向きもある。市は民間資金を活用する方針で2社から提案を受けた。採算性など納得のいく説明が求められる。
五輪招致を巡っては、ドームに隣接する国有地を取得した上で、月寒体育館を移転し、将来的に周辺をスポーツパークとする構想があった。構想を生かすのか否かの議論も欠かせない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月14日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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