国会でわざわざ「集中審議」をしたにもかかわらず、「収束」?
本来ならば政権がひっくり返るような、いや「革命」が起こってもおかしくないような体制側の「不祥事」なはずだが、これで一件落着か?
しかし、「春遠からじ」には違いない。矛盾は拡大した。
1、真部局長の進退問題で言えば、下地氏とのやり取りで、彼は以下のように述べている。
(1)選挙に関して職員に徹底することは服務指導の一環であると受け止め、業務時間内でも可と考えた。
(2)講話は私自身が発意、発案し、関係職員に準備を指示し、実施した。アメリカ軍普天間基地の移設問題の観点から非常に重要な選挙だと考え、なるべく多くの市民の考えが反映されるようになればいいのではないかと考えたのが最初だ。
(3)誤解を招く部分があったのは反省しなければならないと感じているが、どちらかの候補者に肩入れするというような認識は全く持っていなかった。
2.では、その「服務指導」とは何か、赤嶺氏とのやり取りで、彼は以下のように述べている。
「宜野湾市長選挙は私どもの業務の観点から重要な選挙」「職員としてきちんとのぞめるようにしたいと考えた」「普天間飛行場の移設問題は、沖縄防衛局の主要な取り組み課題だ」「経緯等をよく勉強してもらって、棄権をさけて、投票に行くことを想起してもらいたかった」
赤嶺氏が「県内移設という局の立場で選挙にのぞむことを、業務である服務指導の一環として徹底・指導したということか」は「講話は業務の一環だ」と認めました。
3.公務員は「上司の職務上の命令」を重視しているのではなかったのか?大阪と沖縄の違いは?同一点は?
(1)今回の「リスト」づくりと「講話」への参加、投票行動への「お願い」は、「わかってるよな」という「命令」だった。このことをごまかしている。
(2)この問題は法に照らしてみるならば、また「誤解を招く部分があったのは反省しなければならないと感じている」と述べているように、この間の「お騒がせ」をみるならば、「信用失墜行為」として「処分は」当然だろう。
(3)大阪では「命令に従わなければ公務員を辞めろ」と橋下市長。沖縄では「服務指導・業務の一環」として「親戚関係者のリストの提出」「講話参加」「勉強して棄権せず投票するように」との「徹底・指導」だった。「命令ではない」と真部防衛局長。自民も民主も両者に同調。
(服務の根本基準)
第九十六条 すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
○2 前項に規定する根本基準の実施に関し必要な事項は、この法律又は国家公務員倫理法 に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。
(服務の宣誓)
第九十七条 職員は、政令の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(信用失墜行為の禁止)
第八十二条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項 の規定に基づく訓令及び同条第四項 の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
4.だが、この問題は、今回だけではなく、常態化していたこと、このことこそ、問われなければならない。マスコミも含めてだ。
(1)下地議員はかつて自民党にいたとき、今回のようなことがあったことを自ら認めながら、真部局長に向かって「正直に言いなさい」と発言を促している。
(2)マスコミもかつての事例をあげて、今回の介入があったことを問題にしている。だが、本来は、その時に追及をしていたら、今回の問題は起こらなかった。いや政権の枠組みが変わっていただろう。
(3)前回もそうだったが、先に行われた岩国選挙でも選挙前に利益誘導が行われていたことが報道されている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012020202000035.html
5.自民党は変わった!
自民党の谷垣禎一総裁は2日、党本部で記者団に「防衛省の政策に少しでも有利なように選挙結果を導こうとした疑念がある」と批判。毎日新聞 2012年2月3日 10時58分
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120203ddm003010123000c.html
6.今回の問題を相対化して、真部問題を曖昧にすることはできない。
(1)産経
宜野湾市職労側も選挙運動 特定候補への協力呼びかけ2012.2.2 14:27
http://blog.goo.ne.jp/first104ring/e/338dd99401facbd0e21c1de7f27d1696
この記事を基にして中谷質問が行われた。
(2)自民党
①小池元防衛大臣の質問も、真部局長の問題を追及すればするほど沖縄の自民党が公明党と一緒に応援している候補にとって不利になる立場を「微妙な問題」と発言。自民党が、真部局長の行為を追及せず、田中防衛大臣を追及する方向に持っていこうとしている「微妙な立場」を吐露している。それを受けて、防衛大学出身の中谷元防衛大臣の質問が行われた。
②中谷元防衛大臣の質問は、宜野湾市の市職労の大会決議を読み上げ、真部局長と同じとして川端総務大臣を質している。しかし、市職労が法的に問題ありとする根拠は引き出せなかった。そして真部局長の行為の経過を無視して真部局長は「問題なし」との論陣をはって、田中防衛相を追及している。田中防衛大臣も答えられていない。茶番だった。集中審議なのに、そのことの質問時間はたった12分、あとは集中審議以外の問題に終始して、田中防衛相追及に時間を取った。政局質問だった。
http://kuso-oyaji.jugem.jp/
③民主党も、自民党政権時代から行われていたこと、この問題では追及できないだろうということを読んで、むしろ自民党の立場を利用しようとして処分問題曖昧にすることできり抜けようしたが、同じ穴のムジナであることが、浮き彫りになった。
(3)「朝日」(2月4日付)も「『お騒がせしたから処分する。トカゲのしっぽ切りではないか。どこが問題で、どういう価値判断で処分しようとしているのか』と追及。参考人として国会に呼び出された真部局長より田中氏に矛先を向けた」と述べるだけに留まって、事実上擁護した。
(4)ドッチもドッチ論で、事の本質を曖昧にしながら、「欺瞞」に楔を打たず憲法違反を温存する論調。以下のブログを見て、思うこと。
防衛局長講話が重大ニュース?012年02月03日 12:51 http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
確かに、真部氏の行為には重大な問題があるが、こうしたやりとりはどこか白々しい。政治的行為が制限されるはずの公務員による組織ぐるみの選挙活動の“本家本元”は決して防衛省・自衛隊ではない。自治労、日教組など官公労であり、その熱心な支援を受けてきたのが民主党だからだ。
しかも首相は山梨県教職員組合(山教組)元委員長で「日教組のドン」と呼ばれる輿石東幹事長を党のナンバー2に抜擢(ばってき)している。
輿石氏が君臨する山教組は長年にわたり、所属する現職教員らを動員して輿石氏のためにポスター張り、電話作戦、後援会カード集め、選対会議-などを続けてきた。ボーナス時には「選挙闘争資金」として使途も知らせず「校長3万円、教頭2万円、一般教員1万円」の半強制的カンパも募ってきた。これらは当然、公職選挙法のみならず教育公務員特例法などにも抵触する。
選挙支援を受けている官公労の違法・不正常な実態には目をつむり、それ以外で不祥事が表れると深刻な顔を取り繕って役人に責めを負わせる。こんな欺瞞(ぎまん)に国民はもう飽き飽きしている
「確かに、真部氏の行為には重大な問題がある」としながら、「が、・・・公務員による組織ぐるみの選挙活動の“本家本元”は決して防衛省・自衛隊ではない」として真部問題を相対化してしまった。このようにして真鍋問題を薄めてしまうようでは問題の本質を見誤ることになる。強盗殺人者が、泥棒を、指差して、「あいつだって法に違反しているじゃないか」と言っているようなものだ。
7.何が問題か
(1)国家公務員が地位を利用して、国家ぐるみで選挙干渉することが問題だということを曖昧にすることはできない。
(2)公務員の政治活動・選挙活動一般は制限できるという誤解、スリカエ。
①沖縄県宜野湾市の無職男性(76)は「公務員が選挙運動をするのは許されない。事実だとすれば大変なことだ。防衛局は環境影響評価書の提出騒動でただでさえ問題になっているのに、またこういうことをするのか」と憤った。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120131/crm12013114310007-n1.htm
②問題は公務員の「地位利用」と政治活動。選挙活動一般をごちゃごちゃにして、すべての活動を否定する論理。逆に言えば、公務員は一国民として政治活動も、選挙活動もできないのか?そこを批判者は明らかにしなければならない。中谷元防衛大臣の追及は川端総務大臣の発言を論破できなかった。中谷元防衛大臣も、このことは百も承知のうえで、答弁の曖昧さを浮き彫りにするために質問したのだ。政局質問からすれば、当然のことだった。「やらせ」質問だった。そのことはテロップに、実によく出ていた、まさに政治的質問だった。ということは、問題なしということになるのか?
(3)憲法違反の続行が自民党政権を温存してきた。その事例をあげておく。
①組合が特定政党を支持する。組合費を特定政党や政治家に献金する。
②企業が献金をする。労働者の作った利益を政治家や政党に献金する。
③地域の自治会やムラなどが候補者を推薦する。
④政党助成金を受け取って政治活動をしている。
以上の事例は、構成員の思想信条をないがしろにして利益誘導する、反対者を排除するという点で憲法違反だ。こういうことがずっと行われてきたことによって戦後の自民党政権が温存されてきた。自民党出身者が参加する民主党も、その枠内の政党である。その結果、今や第二自民党化した。
(4)何が問われているか! 政党・政治家を支援するのは個人の立場で行えということだ。真部問題も、「公務員として地位を利用した選挙活動をしないように」と訓示しているだけだったら、何も問題はなかっただろう。
(5)次にあげておかなければならないのは、公務員の政治活動と選挙活動と個人の自由・権利のあり方についてだ。具体的事例は示さない。そこで、制限を可能とする「産経」や自民党に、以下の質問をしてみることにする。
①そもそも、国際的には公務員の政治活動や選挙活動はどうだろうか?
②諸外国の公務員労働者のストライキ・デモなどは、日本と比べてどうだろうか?
③「産経」・自民党など公務員の政治活動を制限しようとしている人たちは、日本国憲法がアメリカに押し付けられたというが、政令201号で公務員のストライキ権を否定したアメリカの行為は押し付けられたとは言わないのだろうか?
④公務員の政治活動や選挙活動を否定してしまったら、公務員の国民としての基本的人権はどう説明・保障するのだろうか?
以上の諸点について、国際的な視点から報道がなされないのは、マスコミの問題だろう。このことは「情報の鎖国」化に押し込めておくことで、国民の中には公務員の政治活動や選挙活動の制限が当たり前のものとして写す効果をあげている。まさに「井の中の蛙」国民といえるのではないだろうか?
この点については、佐藤守氏のブログの以下の文章を掲載しておこう。参考になる。
平成5年6月、衆議院が“ウソつき解散”した後の第40回衆議院議員総選挙で、与党の自民党は議席数が過半数を割り、非自民で構成される細川連立政権が誕生、自民党は結党以来初めて野党に転落した時のことである。
日本民間放送連盟の第6回放送番組調査会の会合の場で当時の椿貞良テレビ朝日報道局長は、「小沢一郎氏のけじめをことさらに追及する必要はない。今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」 「共産党に意見表明の機会を与えることは、かえってフェアネスではない」との方針で局内をまとめた、という趣旨の発言を行った。
この時、メンバーの一人は「梶山静六幹事長、佐藤孝行総務会長のツーショットを報道するだけで視聴者に悪代官の印象を与え自民党のイメージダウンになった」「羽田外相=誠実、細川首相=ノーブル、武村官房長官=ムーミンパパのキャラクター」(なので視聴者に良い印象を与えられた)という趣旨を発言するのを聞いた、と発現している。要するに、メディアのさじ加減でこの国の政治はどうにでもなる!という第4?の権力の傲慢さが当時話題になったことを。
地位使い言葉のアヤを読み取らせヤマトの策を命じる上司
誰がみても裸の王の喜劇なりウチナーの悲劇幕は降りずに
刻々と猫の目のやう政事(まつりごと)多忙なれどもぶれぬ軸足
2週間にわたって週末多忙だった。一日一件の記事掲載が途切れてしまった。ま、いっか!