またしても悪政推進の「叱咤激励」と恫喝を見て、一言いいたくなった。
政治 考 消費税の攻防 首相と谷垣氏の化学反応は 編集委員 星 浩
野田佳彦政権が命運をかける消費増税法案の決定時期が近づき、政界は徐々に波立ってきた。自民党の三役も経験したベテラン議員は最近、野田氏の側近から、きわどい話を耳打ちされたという。
「首相は消費増税で引くつもりはない。小沢一郎氏を切ってでも、成立させる腹だ。ご協力をお願いしたい」
「きわどい話」の流れは、こうなる。野田首相は予定通り、消費増税の関連法案を3月中に閣議決定して、国会に提出する。小沢氏ら民主党内の増税反対グループは、この段階で法案に反対を表明。衆院で法案が採決される時には
沈対票を投じる考えだ。野田氏は反対派の除名(民主党の現約では除籍)も辞さず、法案の採決を求める。可決されれば、次は参院で可決、成立をめざす。仮に否決されたら内閣総辞職か衆院の解散・総選挙という重大な局面を迎える。野田氏の決断は―
衆院の民主党勢力は291人。過半数は241人だから50人ほどが反対に回るかどうかが焦点となる。民主党内の動きとともに、法案成否の力ギを握るのは自民党の出方、つまり谷垣禎一総裁の判断である。仮に谷垣氏が「消費増税は民主党のマニフェスト違反。解散で民意を聞え」という態度を変えないまま法案に反対すれば、衆院での成否は民主党内の賛否次第となる。
与党が多数を持っていない参院では、否決確実だ。
逆に自民党が法案に賛成、または内容を修正して賛成という態度に転じれば、民主党内で多少の造反があっても法案は可決、成立する。もちろん、その場合は、成立後のいずれかの時点で解散・総選挙に応じるという「話し合い解散」となる。
支持率が下がり続け、逆風を受ける野田氏。財政再建の必要性は十分知りながら、自民党内の強硬論を考えると、妥協しにくい谷垣氏。2人とも胸突き八丁が続く。こんな時、英語では「ケミストリー(化学)」という言葉が使われる。ケミストリーが良ければ「2人はウマが合う」。そんなニュアンスだろう。
短命政権が続き、政策が進まない今の政治状況を、政治学者の五百旗頭真・防衛大学校長は「政変中毒」と看破している(21日付の本紙)。その通りだと思う。日本の将来を左右する消費増税をめぐる民主、自民両党の攻防。再び「政変中毒」が繰り返されるのか。野田、谷垣両氏の間で化学反応が起きて、合意へ向かうのか。両氏にとって2度目となる29日の党首討論で、方向が見えてくる。
>自民党の三役も経験したベテラン議員は最近、野田氏の側近から、きわどい話を耳打ちされたという。「首相は消費増税で引くつもりはない。小沢一郎氏を切ってでも、成立させる腹だ。ご協力をお願いしたい」
永田ムラの情報戦が熾烈になってきた。火のないところに煙は立たないだろうけれども、意図的に根も葉もない情報がまことしやかに流布されるだろうな。選挙になれば議席を失うかもしれないからだ。だが、本質的には、政界は国民の世論を背景にうごめいていく。何故ならば、うごめく議員や政党は国民なくして存在しないからだ。これが国民主権、民主主義だ。
だが、編集委員星浩氏の認識には、国民主権は「想定外」だ。
>民主党内の動きとともに、法案成否の力ギを握るのは自民党の出方、つまり谷垣禎一総裁の判断である。仮に谷垣氏が「消費増税は民主党のマニフェスト違反。解散で民意を聞え」という態度を変えないまま法案に反対すれば、衆院での成否は民主党内の賛否次第となる。・・・逆に自民党が法案に賛成、または内容を修正して賛成という態度に転じれば、民主党内で多少の造反があっても法案は可決、成立する。もちろん、その場合は、成立後のいずれかの時点で解散・総選挙に応じるという「話し合い解散」となる。
この認識は別の言葉で言えば、マスコミの編集委員として「政局認識によって政治を動かしている」立ち居が示されたコラムだ。「永田ムラ」という狭いムラ社会を評論することによってメシを食っていると思わざるを得ないコラムだ。
唯一、国民主権を想起させる言葉は、「支持率が下がり続け、逆風を受ける野田氏」というものだ。「朝日」をはじめとして、これまで見てきたように消費税増税を要求するマスコミが、その必要性を毎日毎日扇動しても消費税増税は多数派にならない。このことの意味を反省すべきなのに、全く見当たらない。「2人(野田・谷垣両氏)とも胸突き八丁が続く」のは両党を支持した国民の声があるからだ。そのことを抜きに消費税増税を求めるのは如何なものか。彼らのしぶとさ以上のしたたかさを発揮していかねばと思う。
>短命政権が続き、政策が進まない今の政治状況を、政治学者の五百旗頭真・防衛大学校長は「政変中毒」と看破している(21日付の本紙)。その通りだと思う。日本の将来を左右する消費増税をめぐる民主、自民両党の攻防。再び「政変中毒」が繰り返されるのか。野田、谷垣両氏の間で化学反応が起きて、合意へ向かうのか。両氏にとって2度目となる29日の党首討論で、方向が見えてくる。
「短命政権が続」いたのは、国民との矛盾が拡大したからだ。このことを忘れてもらっては困る。政権を短期にしたのは、「次の首相は誰が相応しいか」などと「政策」を抜きにもてはやしたからだ。一見国民世論に基づいているかのような手法だが、国民の不満・要求を踏まえれば、政策論争を公平に提示すべきだが、そうした提起はしないのが、マスコミだ。野田首相を支持する人の最大の理由が「他にいないから」だそうだ。ここに象徴的だ。政界を「政変中毒」にしてしまったのは、他でもないマスコミだ。国民主権論を「想定外」におく星浩氏に「反省」は「想定外」だ。
さて最後にもう一つ。政治学者の五百旗頭真・防衛大学校長の発言だ。氏の最大のポイントは日米同盟の枠内政治だ。気になった点について、少し述べておこう。
>太平洋戦争でのこうした(硫黄島)死闘を経て、・・・それほどのコストを払って築いた同盟関係・・・戦後、保守本流の教義になり、首相を狙うような自民党の有力者はこの教義をたしなみとし、それを土台に戦後の復興と繁栄を図ってきました。政権交代という革命的気運の中で日本の基本原則に揺らぎが生じましたが、その後、首相が交代し、3人目の野田さんになって保守本流の人たちと同じ日米基軸に戻ったのではないでしょうか。・・・消費税増税を野田政権にやらせ、次に政権を担当するときにやりやすくする。自民党がそうした達観を持たなければ、2大政党は共倒れでしょう。対外面では、20世紀の日本が滅んだのは、両側の中国、米国と戦争したからです。21世紀は両超大国との関係をこなし、一緒にやっていかねばなりません。
と述べている。だが、
硫黄島などの死闘を経てつくられたのは日米同盟だろうか?違うだろう!日本国憲法ではないのか?憲法尊重擁護を義務付けられた防衛大学校長の発言・認識として最大の問題が、ここにある。
首相を狙った岸信介が巣鴨プリズンで何を考えたか。それは命乞いと反共だった。日米を基軸を選択する時の感情とは、こういうものだったのだ。
政友会と民生党が「足を引っ張り合うだけ」だったのは、2大政党のそのものの中にある本質的側面からだろう。それがこんにちも噴出してきたのだ。2大政党制度は、他の政党は認めない、他の政党を支持する民意も認めない、切り捨てるという制度だ。事実、治安維持法は、二大政党政治のなかでつくられた。
そうした歴史と本質を抜きに消費税増税後の政権たらいまわし論は、やはり国民を無視したもので、マスコミの主張と同じ延長戦にあるということだ。
日米同盟基軸論は小選挙区制を前提にした二大政党論と密接に結びついている。こうした民意切捨てによってはじめて日米同盟の深化が図られるのだ。こうした構造が、いかに国民を無視しているか、良く示された「朝日」の記事だった。
このようなトリックを「無視されている国民」が見抜くことでこそ瑞穂の国の春が到来することになるだろう。
国民の生活と日米同盟の矛盾が拡大し、アウフヘーベンする「時」を如何に創出するか、暮らしを守る政治を津々浦々で如何に巻き起こすか、そのための論理をどのように構築するか、国民的運動の「時」が到来している。
毎日毎日繰り返されるマスコミの詭弁、トリック、ウソ、恫喝をみると、既存の枠組みという風船が爆発する時が日々進行しているようだな。だが、これは黙っていては、また座っているだけでは起こらないだろう。すりかえられるだけだ。
寒き冬葉をいっぱいにひろげおり葉物培ふ畑耕す
一枚のA4判のチラシでも届けるたびにこころも通ふ